若い教師が授業力をあげるにはどうすればよいか
初任の教師は経験さえ積み重ねれば、授業は自然にうまくなっていくと思っている。このことが幻想であることはすぐに分かってくる。いっぱい授業を積み重ねている中堅やベテラン教師たちのほとんどが、たいして上手な授業をしていない現実に気づいていくはずである。
授業中に子どもたちがざわざわして落ち着かない、つまらなさそうにしている子どもも目立つとき、どうしたら子どもたちをひきつけ、集中した授業になるのだろうか。はっきりしているのは、すぐには授業の技量を上げることはできないということである。
教育技術を身につけることは、簡単なことではない。計画的に、意識して授業を積み重ねなければ授業の技量は向上しない。繰り返し繰り返し行い、意識しなくていい程度の状態になって初めて授業の技量が身につく。
研究授業をかさねることが授業の技量を上げていくことは明らかである。教材研究に時間をかけ、詳細な準備をする。さまざまな意見を言ってもらえる。自分の授業を客観視することができる。でも、年に1~2回でそんなに数多く研究授業ができない。
授業を録画するという方法もあるが、さまざまなものが映ってしまい、目を奪われてしまう。肝心なのは、自分の授業の「発問、指示、説明」である。そのことに集中した方がよい。
ではどうすればよいか。確実に授業技量を上げていくには「一人研究授業」を提案したい。自分の授業を客観視することができるからである。何をするのか。簡単に言えば、自分の授業を録音して、「発問、指示、説明」がどのようになされているかを聞くのである。
教材研究の結果は「発問、指示、説明」に集約される。「発問、指示、説明」を向上させることが、授業技量を上げていく大きなポイントになる。
具体的には、「一人研究授業」をつぎのように行う。
1 自分の授業を録音する
自分の普通の授業を録音する。子どもたちには「先生が勉強するために録音するだけだから」と断ればよい。無理をせず月に一回行う。もし時間に余裕があれば、もう少し回数を増やすともっとよい。
2 録音した自分の授業を聞く
録音した自分の授業を聞くと、自分の声やあいまいな「発問、指示、説明」に嫌気がさすが、その授業を子どもたちは毎日聞いているのである。そう考えて、がまんして聞く。
「発問、指示、説明」の問題点や口癖、無駄な言葉などをチェックし、きちんとメモをする。
3 視点を設けて、視点を意識しながら授業に取り組む
反省メモの中身が「話が一本調子で、暗い感じで話している。だらだら話していて「発問、指示、説明」がよくない。フォローがほとんどない」であれば、視点は
(1)話し方を明るくし、抑揚をつける。
(2)「発問、指示、説明」をきちんと区別できるようにする。
(3)フォロー(いいね、すばらしい、その調子、ステキ)を入れるようにしてみる。
このような視点を意識しながら授業に取り組むのである。
その他に授業をきちんと成立させていくために必要な取り組みは、
(1)さまざまな指示をまとめて出さない。一時に一事の技法で、一つ一つ子ども全体に徹底しているか確認してから次の指示を出すようにする。
(2)本時の目標(ねらい)を徹底的に意識して、すっきり、分かりやすい授業にする。
(3)テンポがあり、リズムのある授業にする。
(4)教師のおしゃべりを50%程度にし、残り50%を子どもの活動(書く、話す、話し合い、作業)にする。
私が初任者の授業を見ていると、共通している特徴がある。授業の8~9割が教師のおしゃべりである。そして、発言する子どもは3~4人で、ほとんどの子どもたちは傍観者になっている。
「一人研究授業」は、自分一人でできる方法である。自分一人でできるということは、よほどの覚悟が必要である。やってもやらなくても、誰にも批判されることもないからである。
「一人研究授業」は、自分の授業を客観視することができる。最初に録音したものを聞くと、自分の声や話し方に嫌気がさす。あまりにも自分でイメージしているものと違っているからである。この感想からどのように立ち上がれるかが、これからの教師生活をきめてしまう。それくらい大きなことである。
(野中信行:1947年生まれ、37年間横浜市立公立小学校教師。その後3年間初任者指導の仕事をする。学級組織論を研究、実践を私家版で発行した。全国各地で教師向けの講座やセミナーを行っている)
| 固定リンク
「授業の技術」カテゴリの記事
- 教師の熱意や想いを子どもに伝え、子どものやる気を引き出すには、どのようにすればよいか 大矢 純(2021.06.28)
- 授業で大切な表現力を教師はどのようにして身につければよいか 大矢 純(2021.06.26)
- 子どもたちに「授業のふりかえり」を書かせるには、どうすればよいか 俵原正仁(2021.05.24)
- ノート指導で教師と子どもが仲よくなるには、どうすればよいか 俵原正仁(2021.05.22)
- 発見や思考を促すための発問づくりの技術とは 鶴田清司(2021.05.09)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント