保護者とのトラブルを最小限に抑えるには、ふだんからどう心がければよいか
保護者とのトラブルが原因で休職した教師もたくさんいます。失敗したときのダメージはベテランの方が大きいということもあります。保護者とのトラブルを最小限に抑えるにはどうすればよいのでしょうか。
保護者の話を丸ごと全部飲み込むように聞くようにします。保護者の思いを全部聞き切ってしまうのです。私は黙って保護者の思いを受けとめようという気持ちでお話しを聞いていました。保護者は自分の思いを分かってもらえた、聞いてもらえたというだけで、保護者と教師の心が通じ合います。子どもを共にどう支えていくかという話し合いが自然とできるようになるのです。
保護者たちに教師への意見を聞いていると、多くの方が視線の合わない教師を嫌がっています。保護者は視線の合わない教師は信用できないと嫌がります。相手の目を見て話すのは人としての基本です。気をつけましょう。
トラブルは後手に回れば回るほど、話がややこしくなり、もつれます。私も痛い目にあったことがあります。男の子同士のケンカだからと本人たちが納得したので保護者には連絡しなかったところ、親から強烈に非難されました。平謝りでしたね。
トラブルが起きたときは先手必勝です。担任から学校の出来事について「こんなことがありました」と、まずは保護者に一報を入れることが、トラブルを最小限にとどめるのです。
教師は子どもが学校にいる間は特に忙しい。だから、ちょっと気になったことを、そのままやり過ごしてしまうことが多いのです。だが、子ども状態をよく観察して、ほんのちっょとでも気になったら「どうした?」と声をかけることをお薦めします。これも、先手必勝です。
保護者との会話で「いい子ですよ」「優しい子ですね」「まじめできちんとした子ですね」と言っていませんか。言葉に具体的な事実がないから、どの子にも使えるいい加減な言葉でもあります。このような言葉でやりとりしているようでは、保護者の信頼など生まれるはずがないのです。
優れた教師は、子どものすてきな事実をたくさんつかんでいます。それを保護者に対して「私はあなたのお子さんのよいところをこんなに知っているんですよ」と具体的な事実でほめることで、新しい関係が生まれます。事実で語ると説得力も生みます。わが子をこれだけきちんと見てもらっているという安心感が保護者に生まれます。
保護者会は大切なライブなのだと私は考えています。人は見た目が九割と言います。言葉遣いも大切ですが、きちんとした服装で背筋を伸ばした姿勢で語りかけるようにしたいものです。保護者会で言葉につまりながら話したりしたら「あの先生は頼りないから、心配よね」ということになり、不信感を持たれます。ベテラン教師は上手に自己アピールするのがうまし、笑いをとる余裕もあります。
「最初の授業参観日から学級崩壊が始まる」と、私は若い教師たちに言い続けてきました。子どもたちに学びがあったと見せられるような授業をしましょう。保護者は授業を見て「あの先生は、だめね」と、家で子どもに直接言います。それを聞いた子どもたちは、教師の話を聞かなくなっていきます。
学級通信を書く教師はたくさんいますが、それを保護者全員に読んでもらっていると勘違いしている教師が多いように思います。保護者は必ず目を通してくれるわけではないのです。ところが、優れた実践家の学級通信は多くの保護者が読んでくださいます。それは、パッと見たときに「読んでみよう」と思うようなタイトルが付いているのです。
言葉の端々に深みがあり、保護者の心に響いてくる教師がいます。優れた教師は、にこにこ笑っていても、決して軽んじられません。可愛げがあります。怖い顔をしなくても、保護者が口を閉じてしまいます。
このような威厳のある教師は、たぶん、子どもと共に歩んできて、子どもたちに近い心で過ごしてこられたのではないでしょうか。威厳はというものは一朝一夕には身に付かないけれど、保護者が一番安心するものだと思います。
(加賀一郎:神戸大学附属小学校、私立小学校教師を経て追手門学院講師。親塾を開講して保護者教育に力を注いでいる。教師塾やセミナーで教師の手助けをしている)
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