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すばらしい教師人生を送るためのたった一つだけの条件は授業力をつけることだ

 教師はすばらしい仕事だ。「人様の子どもを教える」という、神様にしか許されない行為を仕事とするのが教師である。教師であることの責任は重い。しかしそれだけのやりがいがある。私は心底そう思う。
 新任教師が赴任するとき、誰でも夢を描き、いい教師になろうと思う。そしてわずか一か月でその夢は崩れていく。子どもが天使の如くかわいらしいのは、最初の一週間だけ。その後、毎日乱雑になっていく。おしゃべりが始まり、不規則発言、ヤジが授業を支配する。
 そして気づく、自分は授業のやり方を習っていなかったし、訓練も受けていなかった。何となく、大丈夫と思っていただけだと。授業中、子どもが騒ぐのは、我流の授業のためである。授業には原理・原則があるが、それを身につけていないからである。我流を続ければ年月がたっても何も解決しない。クラスの荒れは毎年くり返される。 
 授業の原則は、
(1)
「趣意説明」指示の意味を説明し、子どもが「こういう目的で、これをやっている」と理解して行動すること。
 例「教室をきれいにします。ゴミを10個拾いなさい」と短く、スパッと言うのがいい。
(2)
「一時一事」指示する時は一つのことだけにする。同じ時に2つも3つも指示を与えると子どもは覚えていられない。
(3)
「簡明」指示は短く具体的に。指示・説明がくどいと授業がゴテゴテしてしまう。
 例「一人が3回跳んだら、先生のところに集まります」
(4)
「全員」指示は全員にする。聞いていない子がいると、やがてクラスが崩れていくようになる。
 例「おへそを先生の方に向けなさい」と、全員が教師に集中したのを確認してから、指示をする。
(5)
「所持物」子どもを活動させるためには、考えさせる時間、作業できる机の配置、資料や用具を確保する。
 例「新聞」を作らせるときは「相談する時間」「作業する場所」「必要な用具」確保して行う。
(6)
「細分化」指導内容を細分化する。素人は同じようにしか見えないことでも、プロは指導する内容を細かく分析することができる。
 例:「踏み切りは、足の裏で『ドタン』とするのではなく、はずみがつくように」と、細分化して、解釈をし、イメージ化(国語・算数では発問)する。
(7)
「空白禁止」たとえ一人の子でも空白な時間を作らない。教師が個別指導していると、課題をやり終えた子どもがいたずらし、教室は騒然となる。
 例「まず全体に大きな課題を与え。その後に個別指導する」「個別指導は短く何回もさせる」「終わった後の発展課題は必ず用意しておく」
(8)
「確認」指導の途中で何度か、教えたことが、どれくらいできるようになったかを確認する。
 例:朗読させる時には「全員起立。読み終わった者からすわりなさい」とすれば授業に集中が生まれ、状況がすぐに確認できる。
(9)
「個別評定」指導の際に大切なのは、一人ひとりを個別に評定すること。
 例:跳び箱を跳ばせ10点満点で次々と評定する。「無駄な力が入っていなかった」とか、どこがよくてどこが悪いか分析してポイントを示す。こうした力は、見る目がある教師に教わり、すぐれた演技をいっぱい見て養っていくほかはない。
(10)
「激励」常にはげまし続ける。人間が動くには「やる気にさせる」のが一番いい。その時に最も大切なことは「はげます」ことである。
 例「大丈夫だよ、がんばってみよう」「この前よりよくなったよ」と欠点を克服するようはげましを言い続ける。 
 すばらしい教師人生を送るためには、たった一つだけ条件がある。「授業力をつける努力」をすることだ。その努力をまじめにしないとき、子どもにそむかれ、学級崩壊が起こり、不幸な教師人生を送ることになる。志ならず教職を去ることもある。それが現実だ。
 授業の力量をあげるためには、知的な授業をすること。クラスを統率すること。シンプルな言葉で授業を展開すること。笑顔で子どもに接し、子どもの活動をほめまくること。発達障がいなどの子どもへの対応(叱ると大混乱となる。無視は最悪の対応)を身につけていること。リズムのある、テンポのよい授業をすること。楽しくおもしろいこと。国語や算数の基礎学力を全員の子に保証する。調べる・追及するなどの追究力を育てる。「成功体験(やった!)」という喜びを体験させる。幾多のすぐれた先輩教師のすぐれた実践をよく勉強して取り入れること。
 以上のような技量を身につけるには、きちんとした修業の場と努力の蓄積が必要だ。力量をつけるには、例えば、本を読み実践を追試してみる、ノートをとる、日々授業の努力をする、研究授業をする、模擬授業をする、セミナーに出かける、サークルに通う。
 授業のやり方は分かっても、できない。その「やり方(知識)」を「身につける練習」が必要だ。技能を身につけるには、先生(師匠)に稽古をつけてもらうしかない。教師の仕事はスポーツや芸術よりももっと複雑だ。それだけに習得に何年もの時間がかかる。授業力習得に熱心になれば、子どもや保護者から信頼される技量が育つだろう。
(
向山洋一:1943年生まれ、元東京都公立小学校教師、教育技術法則化運動代表を務めてきた。教師を退職後、TOSSインターネットランドの運営に力を注いでいる)

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