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夏休みが目前に迫ってくると、学級にさまざまなトラブルが起きる、どうすればよいか 

 学級が荒れる大きな要因は、ひと言で言えば、学級内で人間関係が築けないことにあります。教師と子どもの縦関係、子ども同士の横関係が学級の中にどこかいびつな関係が生まれているのです。
 新年度から三カ月あまりが経ち、夏休みが目前に迫ってくると、子どもたちの間ではさまざまなトラブルが起こってきます。友だち関係が変化することで、小競り合いやグループ内での仲間外しなど、いじめの芽が出てくるのです。しかし、その多くは、ちょっとした行き違いや感覚のずれが原因で、きちんとした指導を行えば、いじめに発展することなく収まる程度のトラブルです。
 この時期のこうした問題行動は、ほとんどが「ごめんなさい」で済むような、小さなトラブルです。教師は現象のみを大きくとらえるのではなく、よく見きわめることが大切です。「トラブルが起こった。どうしよう」と慌てるのではなく、人間関係の築き方を学習させる絶好の機会だと、プラスの方向にとらえる姿勢が大切です。
 この時期は、教師に対して反抗的な態度をとる子も出てきます。反抗することで、自分を格好よく見せたかったり、よい方向へ向かう努力から逃げたりしているのです。
 こうした子どもには、毅然とした態度で接することが大切です。ただし、上から抑えつけるような「ぶつかる指導」はしないこと。接近しすぎて真正面から衝突すると、子どもとの対立が深まります。
 反抗する子はクラスで強い力をもっていることが多く、クラスの他の子どもたちも強い子に引きずられてしまいます。「教師1」対「多数の子どもたち」の構図ができてしまうと、指導が難しくなります。教師は、子どもたちから一歩距離を置いて、客観的に「眺める」姿勢が重要です。
 担任はまず、他の子どもたちが強い子に引きずられることのないよう、クラスの子どもたちを味方につけ、「多数(教師+クラスの子どもたち)」対「問題ある子」で臨むようにしましょう。
 このとき、担任がその子の悪いところを直接指摘するのではなく、他の子どもたちもうまく巻き込むことが大切です。例えば、いつまでも教科書を開かないAさんに対して直接叱るのではなく「授業が始まっても教科書を開かないのは、6年生として望ましい行為でしょうか?」などと、クラス全員に問います。もちろん誰も望ましいとは答えません。クラス全員の意見ならばAさんも意見を無視するわけにはいかなくなります。
 ただし、Aさんが孤立することがないよう、担任はフォローをしっかり行いましょう。Aさんがよくなったところをクラスのみんなで出し合うのです。「Aさんは最近『ありがとう』と言ってくれるようになった」など、子どもたちは、その子の過去と比較して成長したことを見つけます。子どもたちはよき観察者なのです。
 最後「Aさんも頑張ろうと思っているから、一緒に頑張りたい人はいますか?」と、クラス全員に問いかけます。Aさんの人格を否定するのではないという担任の姿勢を、Aさんにもクラス全員にも理解させることが大切です。
 とにかく担任は「夏休み前のこの時期は、ここまでできるようにしなければ」と焦りがちです。もっと、ゆったりした姿勢で構えてほしいものです。
 こうした取り組みは、とてもエネルギーがいります。クラス全員が挙手するまで辛抱強く待たなければならないし、Aさんが孤立しないよう、プラスの方向に向けていく指導も必要です。
 担任が精神的にも肉体的にも元気な状態でいないと「明日にしようかな」となかなか踏みきれず、つい先送りにしてしまいがちです。教師としての気概を忘れず「やるべきときは今」と強い気持ちで臨んでください。
 何か問題が起きたとき「指導力不足だと思われる」と、担任の目は管理職や保護者に向いてしまい、問題行動を抑え込む表面的な指導になってしまいます。教師は、それぞれの抱える課題について話し合うことができる場が必要です。助け合う体制がないと危険な状態に陥ります。
 担任は、目の前の子どもの姿に右往左往するのではなく「1年間を通して、今、この子はこの辺りの位置にいるな」と、長いスパンで見ていくことが大切です。そのためには、1年間を見通したぶれない軸をもつべきです。
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菊池省三:1959年生まれ 福岡県北九州市公立小学校教師、2015年に退職。コミュニケーション教育を長年実践した。「プロフェッショナル-仕事の流儀(NHK)」などに出演、「 菊池道場」(主宰)を中心に全国で講演活動をしている。 北九州市すぐれた教育実践教員表彰、福岡県市民教育賞受賞)

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