保護者のクレームに上手に対応するための具体的なテクニックとは
保護者が学校に苦情やクレームを言うときには、不満や不信があることは当然である。苦情や文句を言われることが好きな人間はいない。言われ始めたとたん、暗い気分になっていく。
「こういうのが一番苦手なんだ」と思いながら聴くと、つい「それは違います」とか「ちょっと待ってください」と、自分たちの落ち度をいかに少なくするかを探すようになる。早く切り上げたいと、逃げ口上の言葉に保護者の怒りが込み上げトラブルが大きくなる。こうなると出口は見つかりにくい。
保護者は、かたくなに身構える学校側に余計に腹が立ち「悪いと思っているんですか!」と不信感が増幅してくる。
そのような保護者に、すぐ反応するのではなく、自分たちの落ち度はどこにあるのかを見定め、相手の怒りはそこにあるのか、別のモノが重なって激しくなってくるのかを、腹を据えて向き合いながら推測することが大事である。実は家で子どもが親の言うことを聞かないことに困り果てていることが背景だと分かり始めることもある。
最初の語調が激しく、物言いがトゲトゲしくても、そこに本当の思いや要求があるとは限らない。私は「表面に見える訴えではなく、相手の主訴が何かを見定めること」や「主張の背後に何があるのかなと思って話を聞くこと」の大切さを各地の講演で伝えている。
解決の出口を見つけ「おかげでクレーム対応が苦に感じなくなりました」と、ある校長がうれしそうに話しかけてきた。トラブルを受けとめるしなやかさを身につけるのに効果があったのだろう。
苦情を言いに来た保護者を、ちゃんと人間として扱っているかの指標は「お茶を出す」ことにある。後になって「あの学校は茶すら出さなかった」と言われることがある。
お茶を飲まないかもしれません。でも出す。しばらくすると茶わんにスーと相手の手が伸びる。それを見て「あっ、少し落ち着いてきたかな?」と、自分が感じることの大切さがある。
ある私立学校では保護者が来校したら、すぐには話を始めずに、まずは応接室に通す。うどんを一杯持っていき「担当の者が後で参りますので、まずはお召し上がりください」と言って差し出す。食べて相手に落ち着いてもらう必要があるということだ。
教職員の間で事実の確認ができていないときや、管理職が報告をきちんと受けていないときにエラーが起きやすい。確認できていないことを、思わず憶測で話を進めたり、確約できないことを約束してしまって後で窮地に陥ることも少なくない。
もしそういう不安がよぎったら、話の途中でコーヒーブレークを入れるか、場所を替えることだ。全員がいったんその場所から離れて、簡単な打ち合わせをすることだ。
クレームの話し合いが始まったとき、誰も見に来てくれないと「見捨てられたような気持ち」になる。絶対にだめである。何分かたったら誰かがお茶を持って入っていく。「これはこじれそうだな」と思ったら、茶菓子を用意して入室する。
そこでの様子を教職員の間で情報交換し「ひと呼吸入れたほうがいい」と判断した場合には、「校長、緊急の電話です」と伝え、校長が外に出て打開策を探る。例えば、この保護者と親しい教師を呼んで話し合いに加わるようにすると空気が変わり始めることはよくある。
多くの教師が成り行きを見守ることができる衝立で仕切られた職員室の隅でもよい。トラブルは学校全体で受け止めた方が出口は見つかりやすい。
簡単に話が進まない場合や、仕事の期限が迫っている場合は、あらかじめ時間枠を決めて最初に伝えたり、話の途中で「きょうは先約もありますので、あと20分くらいで切り上げさせていただいてよろしいでしょうか? また後日(具体的な日付を挙げて)に、きちんとお話をお聞きしたいと思います」と言うことは悪いことではない。
学校にはできることと、できないことがあるはずです。できないのであればはっきりと理由をつけて「それはできません」と言うべきでしょう。逆にできるのだったら「できる」と言うべきです。躊躇して言わないため問題が複雑になることがある。
保護者との間で激しい反発が起きることが予想されても、NOと言うべきときには、言うことが必要である。保護者との関係はそれだけでは切れない。新たな土俵の中で話し合いは始まる。
学校のやり方で最も腹が立つのは、のらりくらりとした態度を繰り返し、怒りが冷めていくのを待っているのだろうと保護者に思わせることです。
生徒指導も大変、保護者対応も困難を極めている。ストレスがたまる一方の教師生活。それを適度に、グチをこぼすという形で吐き出すことは、メンタルヘルスの面からも重要です。
グチやボヤキを受け止めてくれる人を、身近で探しませんか。「お互いさまだから」と、互いにグチやぼやきに付き合ってあげることも大事です。
(小野田正利:1955年生まれ、大阪大学教授。専門は教育制度学、学校経営学。「学校現場に元気と活力を!」をスローガンとして、現場に密着した研究活動を展開。学校現場で深刻な問題を取り上げ、多くの共感を呼んでいる)
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