教師が保護者といっしょに子どもを育て変えていくには、どうすればよいか
保護者はふだん、学校で起こることを自分の目で見ることができません。だからこそ、教師の対応が気になるのです。ときには学校への苦情などにもつながるのです。しかし「あなたの子どもを私も大切に思っているよ」ということが保護者にちゃんと伝われば、温かい目を教師に向けてくれるようになるでしょう。
保護者との面談でも気をつけたいことがあります。問題の多い子の保護者との面談では、まずはその子のいいところをほめることです。
問題を抱かえた子の保護者というのは、いつも教師から注意されているので、子どものマイナス面を指摘されると「またか」と思うわけです。わが子が他人から責められたとき、守ろうとするのは親にとっては当然のことです。
そこで、私はまずほめます。そして「この先生は今までの先生と違う。うちの子のいいところもちゃんと見てくれている」と安心してもらえば、保護者も心を開いてくれます。
すると「でも、うちの子は言葉づかいが乱暴なので・・・・・」などと、保護者のほうから問題になっていることに触れてくれることも少なくありません。わが子のことを客観的に見たあとに相談ができれば、とても建設的に改善策を話し合うことができるのです。
このように、子どもたちを改善したいと思えば、その子本人だけでなく、保護者の方の心も巻き込んで対処していくこともとても大切なのです。
教師と保護者が一緒に子どもを育てるにはどのようにすればよいでしょうか。
子どもは、自分が変わるための一歩を踏み出せたらうれしいし、親にも聞いてもらいたいものです。そのために、私は保護者に「私は一生懸命、子どもに力を注いでみます。少しでも変化したら、必ずそれを、その日のうちにお母さんに伝えますから、家に帰ったら子どもがそういう話をするのを待って、きちんと話を聞いてほめてあげてください」と言います。
例えば「今日は、頑張って授業中に自分から手を挙げて発表しました」「友だちからほめられました」と、子どもが家に帰る前に、保護者に伝えます。保護者に伝える内容はシンプルなことでも、その情報があれば、親は子どもの小さな変化に気づくことができます。
親は「へえ、どんなことをやってほめられたの」と、余裕をもって聞くことができます。だから、親も具体的にほめることができます。こんなことが続くと、子どもが家に帰って親に話すことが増えます。親に話したいから学校でもっと頑張るようになる。このスパイラルができれば、子どもは目に見えて変わるのです。
学校で子どもが頑張っている姿は学校にいる私たち教師にしか見えていないのです。だからこそ、それをそっと伝えてあげることをすれば、大きな効果が出ることも少なくないのです。
子どもたちも高学年になると、親子の関係がどんどん悪くなってしまうケースがあります。その要因は、実は苛立っている親にあることが多いのです。子どもは成長すると干渉されるのが嫌になります。親はそれが反発に思えて苛立ってしまうからトラブルになるのです。
だから、私がつくる夏休み前の学級通信は、子どもたちのお守りになっています。「相談しやすい、話しかけやすい保護者になりましょう」と書いてあるからです。親が苛立ったら子どもは相談しなくなります。ですから「苛立たないで笑顔で相談にのる」という部分は大きな文字にしておき、夏休み前の保護者会でもこういった話をしておきます。
そして、子どもたちにも「お父さん、お母さんにこういうことを言っておいたよ。だからイライラして相談しにくいときは、この学級通信を見せればいい」と話します。
適度な距離を保ちながら、タイミングよくコミュニケーションをとることが、親子関係にも、そして教師と子どもの関係にも必要です。
私は保護者に「子どもに聞こえるか、聞こえないかのところで、夫婦でわが子をほめる会話をするといい」とも言っています。「あの子は言われなくても、時間がくると勉強に取りかかるよね」「あの子は親に対しても優しい物の言い方をするよね」と言えば、そのような子になります。
反対に保護者がきついことを言えば、きつい子に育ちます。親から攻撃されて育った子どもは、他人を攻撃する子に育つのです。昔から「子は親の鏡」と言います。大人は子どもを見ながら、自分を反省することも必要です。
(田中博史:1958年山口県生まれ、山口県公立小学校教師を経て筑波大学附属小学校教師。専門は算数教育、授業研究、学級経営、教師教育。全国算数授業研究会会長・日本数学教育学会出版部幹事・学校図書教科書「小学校算数」監修委員)
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