子どもにどう見られているか自己表現をチェックしている教師はほとんどいない、どうすればよいか
自己表現がへたな子どもが大人になり教師になったらどうだろうか。子どもはなかなか教師が思うようには読みとってくれたりはしない。しだいに子どもとの関係もまずくなっていく。
「なんだか疲れて、やってられない」という教師にときどきお会いするけれども、話を聴いていると「疲れる」と言いながらも、自分の自己表現について、いい人間関係をつくるのにふさわしい自己表現なのかとチェックしている教師はほとんどいないのである。
教師は常に子どもたちと対峙している。素晴らしい実力を持っていても、表現のしかたが悪いために、子どもに誤解され、反感さえ持たれてしまう教師は多い。
教師が日常生活で自分の善性をめいっぱい表現しつつ、子どもたちの個性や心情を正確に読みとって、よい人間関係を築いていくパフォーマンス学の知恵を学んでほしい。
パフォーマンス学を学ぶことにより、教師が表現を変えると、人間関係がおもしろくなります。また、教師が自分の良さをのびのびと表現し、かつ、教師が余裕をもって子どものたちの表現する真意を読みとれると、子どもたちから頼られるようになります。
さらに、子どもたちの表現が変わってくると、クラスが生きかえり、教師生活はどんなに輝きを増すことでしょう。
では、どのようなことを学べばよいのでしょうか。まず、あなたは子どもたちにどう見られているのか検討してみることです。童話の「はだかの王様」を思い出してほしい。自分は理想的な教師を演じていると教師は思い込んでいます。だから自分の姿をチェックしたりはしない。
たとえば、自分は子どもたちにとても親切で優しい先生であると思っている。しかし、子どもたちの意見を聞くと「お節介で、うるさい先生だ」と言われて、がっくりくる。人間表現の特性から、一定のレベルを過ぎればマイナスの印象を与えます。
では、教師が子どもに「見られている自分」のチェック法は何かあるのだろうか。最もよくある方法は子どもたちに「先生について思うことを書いてごらん、無記名でいいんだよ」といったかたちで書かせてみると、本当のあなた自身の姿が透けて見える。
このドキッとする体験こそが教師にとって宝物であり、自分が子どもたちの目にどのように映っていかをチェックしながら、自分の自己表現を向上させていくことが教師にとって欠かせないことなのだと私は思う。
なぜ子どもたちはついてこないのでしょうか。
子どもは教師の表情を読みとります。だから言葉で「きみたちが好きだ」と言っても顔の表情や声で「本当はうそである」と気づいてしまう。教師が心の底から、この仕事にやりがいがあり幸せだという認識があって表現すると矛盾しないようになってくるのである。
たとえば、自分が子どもに頼られる教師になろうと思ったら、言葉遣いから、顔つき、姿勢、持ち物まですべて「頼られる教師」という統一性を持つこと。そして、自分は頼られる教師としての素質があるのかチェックしてみる必要がある。
自分が思う長所と短所、友人や家族に聞いた私の長所のチェックシートで、ちょうど車の車検のように客観的にチェックしていくことが役に立つ。自分の本質と合っていることを設定していかないと心に無理がかかって不安が大きくなってしまう。
こうやって、自分という人間の全体像がしっかりと明確につかめたら、その上で頼られる教師、優しい教師、明るい教師といったように設定するわけだ。そうしておいて、言語表現においても、非言語表現においても、徹頭徹尾表現するよう統一を図っていく。
このような努力を毎日しっかりとしていれば、自分が子ども対して明確な自分の姿を伝えていくことができるから、子どもたちは教師を見ていて不安な気持ちがなくなる。
それと同時に、自分自身も、自分はこのような人間であり、それを絶え間なく表現しているのだという揺るぎない自信になって、しだいに不安が減っていく。
そうなれば、何も周りに気をつかってぐらぐら変える必要はない。そのようにしっかりと確立したうえで教室に立つ。こういうことをくり返しているうちに、不安はしだいに減っていくのである。
私は先生方と共に明るい自己表現を日本中に満ちあふれさせていきたいと思う。
(佐藤綾子:1947年長野県生まれ、1980年日本初の「日常生活における自己表現」の「パフォーマンス学」を開始。日本大学教授、パフォーマンス教育協会(国際パフォーマンス学会)理事長、国際パフォーマンス研究所代表、「佐藤綾子のパフォーマンス学講座」主宰)
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