教師の話が子どもに伝わるようにするには、どのように発声すればよいか
正しい発声とは、自分の感情やイメージをきちんと表現してくれる声です。嬉しい時には、そのうれしさが伝わるような声を出すことができるのが、正しい発声だということです。
意外とこれは難しいことです。例えば、子どもをほめる場面です。教師はうれしいはずです。でも、その気持ちが子どもに伝わっていない場合があります。ほめられた子は「この先生、本当にぼくのこと思ってほめてくれているのかな」と感じることがあります。
これでは困ります。うれしい時には「笑顔で話す」「声のトーンを上げる」等、うれしさが伝わるような声をださないといけないのです。ちょっと意識するだけでも、受け手の印象は変わってくるはずです。
また、逆のパターンもあります。教師の感情が必要以上に伝わってしまう場合です。教師が子どもを叱ったあと「先生はあなたが嫌いで叱っているのではないのよ。あなたのためを思って叱っているの」と、言っても、実際この教師はこの子のことを嫌いであると、教師のマイナスの感情は確実にその子に伝わってしまいます。教師は、何よりも子どもに対してマイナスの感情を持ってはいけないということです。
では、「正しい発声」をするにはどうすればいいか。声の要素は5つ(大きさ・高さ・音色・間)あります。
1 大きな声を出してみよう
大きければいい、逆に小さければいいというものでもありません。「こういう意図があるからこの大きさで声を出しているということを意識して行うことが大切なのです。
一度、大きな声を出してみましょう。例えば、全力で声を出し、じゃんけんをします。全力で声を出す気持ちよさを実感できるとともに、自分の声のマックスを知ることができます。また、腹式呼吸でないと、次の日にのどが痛くなるような発声になりがちだということもわかります。
自分の声の大きさの上限を知っていることは大切です。感情的になっていきなりマックスの声の大きさで子どもを叱ることを防ぐことができるはずです。
大きすぎる声は、威嚇の効果はあても、指導したい内容は相手に入っていきません。相手には伝わりにくい声の出し方です。
2 高い声はNGです
教室が騒がしいので「静かにしなさい!」と、どなりたてる教師を見ることがあります。騒いでいる子どもたちよりも大きな声を出さないと教師の指示が通らないと考えて、大きく、高い声を出そうとしているに違いないからです。
大きな高い声は、子どもたちの耳には入っていないということです。こういう場面では「意識的に声を低くして話す」方が効果的です。低い声で話すと説得力が増します。
また、けんかの仲裁など興奮した相手と話す時も、意識していつもより低い声で話そうとしてください。低い声で話そうとすると、自然にゆっくりと話すことになります。ゆっくりと話すことによって、自分自身が落ち着くことができます。そして、その雰囲気は周りにも伝わります。
3 声が出るクラスはいいクラス
これまでいろんなクラスを見てきたのですが、いいクラスはしっかりと声が出ているということです。朝のあいさつ、音読、発表、歌。何をとってもしっかりと声が出ています。声が出るということはエネルギーが満ち溢れているということです。
声を出すクラスをつくるために一番大切なことは「まず教師が声を出す」とことです。「笑顔の教師が笑顔の子どもを育てる」のと同じです。教師の後について、子どもたちに声を出させます。
私流のやり方をやってみます。国語の教科書(光村図書)「漢字の広場」(1ページものの単元)を、前置きなしに、いきなり、教師は、張った声で読み始めます。
教師「漢字の広場」、子ども「漢字の広場」。このように、すぐに子どもたちがついてきたら、つぎの漢字を読み始めますが、後をついてきていなかったり、声が小さいときは、何も言わず、もう一度「漢字の広場」と繰り返します。
テンポよく教師が読んでいけば、ただ、これだけでも子どもたちは熱中してついてきます。声もしっかり出て、一通り最後まで読んだら、もう一回最初から行います。
ただし、2回目は、教師が「声の高さ」や「音色」「速さ」「間」を意識して読み方を変えていきます。「賛成」を「さぁ~んせぇ~い」とゆっくり読む。「提案」を高い声で読む。といった感じで、いろいろなパターンの音読を子どもたちに示していきます。
(俵原正仁:1963年生まれ、兵庫県公立小学校教師、笑顔の教師が笑顔の子どもを育てる実践はマスコミにもとりあげられた。教材・授業開発研究所「笑育部会」代表)
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