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ダメなことはダメと毅然と指導をしなければ、子どもは健全な発達ができない

 生徒の問題行動に対して「ダメなことはどんな理由があってもダメ」とする指導をしなければ子どもは健全な発達ができるはずがない。
 荒れた学校を再生しようとするとき、日常の教育活動を充実するとともに、毅然とした指導の考え方をしっかりと認識したうえで実践にあたっていただきたい。他校の実践を形だけまねてもうまくいかないからである。
毅然とした指導をするための考え方とは
1 毅然とした指導こそが生徒と学校を変容させるという強い信念を持つ
 校長として赴任した中学校は荒れていた。職員会議で「最優先課題は学校秩序の回復である。今後は問題行動に対しては妥協のない対応をする」と宣言した。それまでの生徒の言い分を聞きながらじっくりと説諭する指導からの転換だった。
 生徒の反発を危惧した教師からは「そんなことしたら本校はもっと大変なことになる」と反対意見が出された。しかし不退転の覚悟を決めていた私は「長年の膿を出し切ったその先に学校の正常化ができる」と説得した。その結果、次第に生徒たちは落ち着いて授業を受けるようになり、学力も向上した。学校自由選択制度のもとで人気校になったのである。
 劇的な成果を生んだ理由は、本来子どもは失敗をくり返しながら成長するものだ。子どもが失敗したとき、怖い役割を果す大人がしっかりと叱ることによって、子どもは自分の過ちに気づき、規範意識や自制心を形成することができる。大人にはそのような大事な役割があるのである。
 子育てにおける大人の真の愛情とは、そのような姿勢のなかに存在すると言ってよい。この子育ての原則が見失われたとき、学校や社会は荒廃するのだ。
2 生徒の暴力に負けない強固な意志をもつ教員集団を組織する
 「暴力行為に及ぶ児童生徒に対して、教職員は正当防衛としての行為をするなどの対応も有り得る」との文部科学省の通知がある。教師は体罰が禁止されているが、殴りかかる生徒の腕をつかんで押さえつけることは、体罰であるはずがない。
 教師の力を発揮するには、生徒の暴力に立ち向かえるだけの体制を学校内につくるとよい。体力と気迫のありそうな数人の教師を呼んで、生徒の暴力行為に体を張って阻止してくれるように私は頼んだ。依頼に応じた教師は四人いた。
 私は「たとえ授業中でもなんでも、私が緊急招集の放送をかけたら、すぐ集合して生徒指導にあたってほしい。それでも生徒たちの暴力がやまない場合には、即座に私が警察の支援を要請する」と話した。
 これで生徒集団の暴力には負けないと確信した。実際に召集をかけた場面が二回あったが、これまでと異なるただならぬ雰囲気に強い決意を察知した生徒たちは身を引いた。
 一人の教師が単独で指導した場合には、生徒たちはその一人の教師を標的にする。だから、指導力のある教師を孤立させない対策を講じることは非常に重要なことなのである。
 念のために断っておくが、生徒指導においては「優しい母性的な姿勢の指導」と「厳しい父性的な姿勢の指導」のバランスがとれていることが大切である。もし悪役の教師が一人もいなかったら、だらしのない校風がすぐにできてしまうに違いない。
3 犯罪的な問題行動は躊躇せず警察と連携する
 対教師暴力、校内での放火、対生徒致傷事件、大量の器物破損等の重大な犯罪的問題行動が発生し、学校の指導が十分に及ばないと判断されたときは、すみやかに警察に支援を求めるべきである。
 被害を拡大させないことがもっとも緊急な課題だからである。警察への通報、被害届の提出、取り調べの立ち合い、保護者への説明等はすべて管理職が先頭に立って行う。そして、すみやかに臨時朝礼と保護者会を開催し「責任の取り方を学ばせる指導が大切」という学校の姿勢への理解を求めた。
 警察との連携を円滑に進めるためには、日常的に管理職と生活指導主任が警察署に出向いて、少年係と情報交換を行うことが有効である。学校と警察が日常的に連携を取っていることを、生徒や保護者に周知することが生徒の問題行動へのブレーキとなって働くのである。
4 PTAや地域の関係機関と積極的に連携する
 問題行動が拡大し、通常の指導では手に負えない状況になったときは、PTAや地域や行政などの外部の関係機関との連携を強化することが有効な対策となる。 
 私はPTAの役員と連絡を頻繁に取り、生徒指導について包み隠さず説明して理解と協力を要請した。PTA役員の耳に届く保護者からの学校批判の声には謙虚に耳を傾け、要望については即座に対応していった。
 地域が団結して健全育成に取り組むべきと考えた私は、「非行防止対策協議会」を設置した。PTA会長、指導主事、教育センター相談員、警察署少年係、民生委員、児童相談所職員がメンバーである。月一回開催し、情報連携から行動連携へ発展するようにした。
5 校長の迅速な決断と行動力
 問題行動に対して、教師集団が勇気と自信をもって生徒指導にあたるためには、「決断と実行と責任」のすべてにわたって、管理職が積極的にかかわることが必要である。
 実は、学校秩序が破壊され、状況が悪化しているときこそ、管理職が一段と踏み込んだ対応策を実行するチャンスである。大きな事件が起きた時には反対意見は出にくい。
 失敗や批判を恐れずに管理職が教師の先頭に立ったとき、教師集団の指導エネルギーは確実に増大し、学校は変容の一歩を踏み出すのである。そのときの校長の迅速な決断と行動が非常に大きな働きをするである。
6 教育行政に学校支援を要請する
 荒れた学校に必要なのは、学校秩序を回復するための戦力である。この状況把握を的確に行い、人材を派遣するのは教育委員会の仕事である。その対応にあたることも校長の重要な役割である。校長は積極的に教育委員会へ支援を要請すべきである。
(
山本修司:1950年生まれ、東京都公立中学校教師、指導主事、指導室長、校長を歴任し、荒れた学校を立て直した。2005年度読売教育児童生徒指導部門最優秀賞受賞、編著書『実践に基づく毅然とした指導』は、生徒指導に悩む教師たちのバイブル)

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