言葉を大切にして子どもを育てると、子どもと子ども、教師と子どもがつながるようになる
私が教室で実践してきたことは「言葉で人間を育てる」ということです。言葉にこだわって、言葉を大切にして、一人ひとりの子どもたちと向かい合ってきました。
多くの言葉を獲得して、書いたり話したりすることが可能になった子どもたちは、深い思考ができるようになります。書くことによって、内面をふり返り、整理することができます。
そして、友だちとより良い人間関係を築いたり、お互いの成長をうながし合ったりすることができるようになります。
私は子ども同士が本音で向き合える人間関係をつくることをめざしました。言葉を大切にしていくことで、安心できる人間関係が成立する教室になります。自分の実感をそのままに発言ができ、友だちの正直な思いを受け止めることによって、お互いに考え、お互いに成長していくのです。
私は「言葉で人間を育てる」ということを、日常的になるべく簡単な方法で、いくつも創り出して実践してきました。例えば、次のような取り組みをしてきました。
1 価値語
子どもたちの考え方や行動をプラスに導く言葉です。価値ある言葉を子どもたちに積極的に教え、増やすようにさせています。例えば、「寄り添い合う」「正対せよ」「常に進化する」「自分を見くびらない」「厳しさを乗り越え合う」「希望」など。
子どもたちの中に、価値語が増えていくと、日常の行為が変わってきます。何が正しいことなのか、どうすることが良いことなのかが具体的に分かってくるのです。徳目として示すのではなく、日々の学校生活と関係した生きた言葉を示すことが大切です。
その後、子どもたちは自主的に価値語を増やそうとし始めます。言葉を育てると心が育ち、心を育てたら人が育ちます。
2 ほめ言葉のシャワー
一人ひとりの良いところを見つけ合い、伝え合う活動です。全国的に広がっています。私にとって大きな喜びです。子どもたちは放っておくと「むかつく、バカ、消えろ、関係ない」といった言葉が教室に蔓延します。そうしたマイナスの言葉ではない、相手を思いやる言葉を教室に満ちさせることができるのです。具体的には
(1)毎日の帰りの会で行う(10分程度)
日めくりカレンダーを各自1枚描く。その日のカレンダーを描いた子どもが教室の前に出る。その子の良いところをクラスの子どもたちと担任が自由起立してシャワーのように言う。最後に前に出ていた子どもがお礼を言う。
(2)1年間で四回(四巡)程度行う
ほめ言葉のシャワーは、違いを認め合って学び合おうという授業観、つまり「教え込む授業」から「学び合いの授業」への転換が必要です。軌道に乗ってくると、子どもたちの様子が変わってきます。授業にも大きな変化をもたらします。子ども同士の関係が良くなりますから、ペアやグループ学習が活発に行われるようになります。
3 質問タイム
ほめ言葉のシャワーを浴びるその日の主人公に、朝の会で、全員が質問します。最初の質問の答えに関連する質問を続けていくようにします。どんどん掘り下げ、深く知ることができます。子どもたちは、同じクラスの友だちのことをあまりよく知らないものです。質問タイムでお互いのことを多面的に知ることができます。コミュニケーションの土台となる温かい人間関係が築かれていきます。年間の見通しをもって、簡単な内容から始めて、少しずつ内面に入っていくような質問へと高めていきます。
4 成長ノート
書く力を育てます。クラスの子どもたちを社会に通用する人間に育てようという思いで、私の信じる価値観を子どもに投げかけ、子どももそれに対して応えて書くという、双方向のノートです。この指導をとおして私は人間を育てようとしてきました。子どもたちは、書くことを通して新しい自分を発見し、より自分らしく生きていこうと変わっていきます。教師と子どももつながります。
(菊池省三:1959年生まれ、 福岡県北九州市公立小学校教師、2015年に退職。コミュニケーション教育を長年実践した。「プロフェッショナル-仕事の流儀(NHK)」などに出演、「
菊池道場」(主宰)を中心に全国で講演活動をしている。 北九州市すぐれた教育実践教員表彰、福岡県市民教育賞受賞)
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