荒れたクラスの子どもたちと向き合うには、どうすればよいか
子どもの反抗的な態度に、多くの教師はカッとなってぶつかってしまうものです。例えば、授業中にお絵かきしている子どもに「ちゃんと勉強しなさい」と注意します。
すると子どもは「授業のじゃまはしていません」と口答えします。教師が「授業に集中しないと、勉強がわからなくなるでしょ!」と語気を荒げます。子どもは「勉強は塾でやっているからわかります」と開き直ります。
このように教師が子どもとやり合う姿は滑稽です。まわりの子どもたちは冷めた目で見ています。教師の権威が喪失する瞬間です。
口答えする子どもには、教師が一歩引いて冷静に対応することが大切です。「子どもはいたらなくて当然。だから子どもと呼ばれているのだ」と思えば腹も立たないものです。
口答えする子どもとはけんかをせずに、受け入れます。受け入れてくれた教師を子どもは信用しようとします。
例えば、教師が「なるほど、よく理解できているということだね。それなら、わからない人に教えてあげてくれない? きみの力を貸してほしいなあ」と子どもプライドをくすぐります。人はあてにされると応えようとします。友だちに教えることで、存在価値が高まります。
もし、子どもが教師の提案を受け入れてくれたら「ありがとう」とお礼を言います。それが教師と子どもの信頼関係を築きます。
どんなに荒れていても、クラス全員が悪いということはありません。必ずちゃんとした子どもがいます。そういう子どもにたちに光をあてます。教師は態度の悪い子にばかり気をとられすぎないようにします。
教師はちゃんとした子どもをほめ続けることで、当たり前のことを当たり前にできる素晴らしさが教室を包むようになります。「自分たちにも、そんないいところがあるのか」と気づかせます。
教師のやり方に不満を言ってくる子どもがいます。カチンときますが、とにかくその言い分を受け入れ、子どものやりたい方法に任せてみることも大切です。
例えば、教師が男女混合グループづくりを指示すると、男子同士など好きな子同士のグループを求めてくることがあります。クラスが荒れてくるとその傾向が強くなります。
そのような場合、子どもたちの意見を却下すると、反発を招くだけです。まずは、子どもの意見を受け、一人ぼっちをつくらないという条件をつけて、子どもに任せてみます。
グループ活動を始めると調理実習で「女子がいればなあ」という声が聞こえてきます。その時がチャンスです。教師が「困っているなら、みんなにグループの再編成を提案したら?」と促します。
一度失敗させてから、納得へ導くことも一つの方法です。うまくいけば継続し、そうでなければ新たな方法を考えたりします。
問題を起こしてしまった子どもには、気持ちを教師が共有します。例えば、けんかをしたら「叩きたくなるほど辛かったんだね」と共感します。興奮が収まったころを見計らって「他の方法はなかったかなあ」と聞きます。子どもは先生に共感してもらったことで、自分の感情を確認できます。
子どもが教師を信頼するようになると、「どうしたの?」と聞くと「あのね・・・」と話し始めます。注意を素直に聞く心の準備ができます。
あいさつはよりよい人間関係を築くうえで、大切なことです。あいさつができない子をそのままにしないで、その指導法を模索しましょう。挨拶をしても返せない子どもには、あいさつされているんだと感じさせるため、「Aくん、・・・・、おはようございます」と名前を呼んだ後に間を置くと、挨拶をする心の準備ができます。
子どもがあいさつできるようなれば、挨拶の後に「今日も登校も早いね」などと言葉を付け足すと子どもとの関係がさらに良くなります。
クラスが荒れてくると、子どもたちの態度がよそよそしくなります。教師が話しかけると「別に」などと無視するならば深刻な状態です。子どもと話す機会をつくる工夫が必要です。関係修復のきっかけは、公的時間の授業です。机間指導などをしながら話しかけます。繰り返していくうちに関係が少しずつ改善されます。
子どもが興味関心のあることを話題にして、給食や休み時間に声をかけます。子どもは自分が興味を持っていることに関心を示してくれると、相手に好感を持つようになります。共通性を見いだすと、心を許すようになるのです。教師のことを好意的にとらえるようになります。
クラスの荒れに一つの方法で対処してもダメなときは「この方法でもだめなんだなあ」と割り切り、「それもまたよし」とおうように構えて、新たな一手を考えます。深刻にならないで、長いスパンで考えることが大切です。
(城ケ﨑滋雄:1957年鹿児島県生まれ、千葉県公立小学校教師、教育委員会、不登校対策教員として不登校児童と関わる。荒れた学級の立て直し、小学校教師として教育情報雑誌「OF」等で情報発信している)
| 固定リンク
「教師と子どもの関係づくり」カテゴリの記事
- なめられる教師となめられない教師はどこが違うか、教師が心がけたいこととは 桶谷 守(2021.06.10)
- 教師の遊び心が子どもとの距離を縮める 斎藤 修・篠崎純子(2021.06.02)
- 子どもたちと人間関係が築けない教師の要因とその改善方法 山口菜穂子(2021.05.26)
- 教師が子どもから信頼されるには、どのように接すればよいか 関根正明(2021.05.19)
- 生徒と信頼関係をつくるうえで大事なことはなにか 杉田雄二(2021.04.24)
「学級の荒れ」カテゴリの記事
- 学級の荒れたときに「これが大切ではないか」という声とは何か 坪井 祥(2021.10.28)
- 荒れた学級に正義を取り戻し、クラスに誇りを持たせるためにはどうすればよいか(2021.02.13)
- 担任を受け持ったとき、学級が荒れ、崩壊しないようにするにはどうすればよいか(2021.02.12)
- 荒れていた学級を立て直すには、どうすればよいか(2020.12.08)
- 担任すると「いいクラスにしたい」と入れ込んで硬くなり、すぐに怒り、子どもに嫌わる。どう改善すればよいのでしょうか(2020.05.14)
「子どもと向き合う」カテゴリの記事
- あなたは教師として、子どもたちの言葉や思いの本質を聴き取る力がありますか(2020.05.03)
- 「お前は絶対に必要な人間なんだ」と言われれば、そこが子どもにとって安心して過ごせる居場所になる(2017.12.18)
- 子どもと関わるときに、してはいけないこと、すべきこととはなんでしょうか(2017.12.05)
- 荒れたクラスの子どもたちと向き合うには、どうすればよいか(2016.08.18)
- まるごと、その子と向き合えるか(2015.01.13)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント