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学校の日常を包み隠さず世の中に知ってもらうと信頼関係が生まれる、クレーマー対策にも有効である

 学校現場にかかわっている人と、いない人との間の情報の落差がはなはだしい。この情報の落差が日本の教育のあらゆる問題の根源にあるのです。
 学校が困難な状況にあること、先生方が懸命に教育活動に取り組んでおられることを、私はよく承知しています。しかし、世の中は学校や教師の日常を知りません。
 でも、ひとたびいじめや体罰のような事件が起きたとき偏った報道がいっせいに流されます。世の中は学校を知らないだけに、それら偏った情報だけで学校のすべてを知った気になります。結果、学校を見る目がますます厳しくなっていきます。
 一般社会は学校のことが見えていません。すべての学校でひどいいじめ事件があるかのように錯覚しています。各種調査では、圧倒的に多くの子どもたちは「学校を楽しい」と感じ、友だちと一緒に過ごすことを楽しみにしているのです。
 ところが、学校にとってきわめて珍しいことが事件として大きく報道される。例えば大津市で起きた「いじめ」がすべての学校であるかのような報道が多い。日本人は心配性です。メディアも不安を煽るような報道が多い。そして、AかBかと考えさせ、結論を急がせ、思考停止に陥らせてしまう。
 その結果、今の社会は勝手に子どもの状況を深刻に描き、私は非常に危うい状況であると感じています。子どものことを心配すればするほど、教師に対する社会からの期待と不審が強まっています。
 いじめ事件では学校の閉鎖性が明るみに出ました。うまくいっていないところを隠ぺいしようとして失敗し、かえって世の中の信頼を失い、たいへん大きなつけを払わされることになりました。閉鎖的な対応をしていて、世の中の信頼を得られるわけがないことを学校教育関係者は理解しなければなりません。
 このような情報落差をそのままにしていれば、学校に事件が起きたとき、学校は麻痺状態に陥ってしまいます。本来認められてよいはずの個人情報の保護でさえ、隠ぺいと見なされ、悪意ある記事になることもあります。
 では、実際にどうすればよいか。必要なことは、まず、学校の日常を包み隠さず世の中に知ってもらうことです。いいことばかりでなく、うまくいかなかったことも、すべて正直に発信するのです。情報があれば、世の中は学校現場の日常を理解してくれます。それが学校への信頼につながります。何も情報がないところでは、信頼関係は生まれっこないのです。
 日常から報道機関に情報を提供し、人間関係を築いておくことです。新聞の地方記事はときどきネタがなくなることがあります。そんなときに学校のネタは地域の人に喜ばれ、記者にとっても好都合なのです。
 掲載されなくても、日常から真摯に教育活動に取り組んでいることが伝われば、印象がよくなり、変な報道はなくなってきます。
 私も校長のとき、できる限り情報を公開していました。学校ですから、細かいところでは問題も発生します。そんなときも問題のない範囲で説明します。閉鎖的な体質をつくらないことです。「情報を隠さない」「地域と一緒に考える」日常からこうした行動をしておくべでしょう。
 保護者のクレーマー対策としても、実はこのどんどん情報を公開するという取り組みが有効です。これまでは、このような保護者が学校に押しかけてきたとき、学校は隠していました。相手に恥をかかせたくないし、学校も恥をかきたくなかったためです。クレーマーはそこにつけこんできます。
 そうではなく、クレーマーについての情報も、どんどん出していくのです。その存在を社会で共有する仕組みにしてしまう。公開しておけば、クレームをつけてこられたとしても「あの人はクレーマーだからね」と認識されることになり、社会的にはそれで収まるわけです。
 クレームは、あらゆる手段で解決を図るという、気構えが必要だと思います。そうすれば、クレームをつけてきた人も、助言者に変化していくのです。無理が通れば道理が引っ込みます。道理を通すには無理を抑える必要があるのです。
 クレームが変にこじれてしまうのは、初動に問題がある場合がほとんどです。学校内で情報を出し合い共有し、議論して組織的に対応することです。最終段階で校長が毅然と立ち向かう腹を据えていれば多くの場合は解決します。「教育委員会に言うぞ」と脅されれば「どうぞ」と言えばよいのです。そして、教育委員会とともに解決する。
 こうした当たり前のことを当たり前にやる気構えを最初から持っておけばよいのです。「自分は正しい」「自分の間違いは認めたくない」などと思っていると問題はどんどんこじれてしまうでしょう。
(
陰山英男:1958年兵庫県生まれ、兵庫県公立小学校教師、広島県尾道市立小学校長(公募)、立命館小学校副校長、国の教育再生会議委員、大阪府教育委員長を歴任した。立命館大学教授、日本教育再興連盟代表理事、徹底反復研究会代表。兵庫県の朝来市立山口小学校で保護者を巻き込んで、基礎学力向上のための岸本裕史が提唱した百ます計算や日常の生活を見直すチェックシートの活用などで成果を上げた)

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