保護者から見た信頼できる教師とは
保護者が信頼できる教師は、「自分のクラスの子どもが好き」につきると私は思う。
「○ちゃんのこんなところがいいですね」「△くんは、こんなことをよくやっています。いつもほめているんですよ」と、わが子を大切にされて悪い気がする親はいない。
打算でほめたことは伝わらないが、心から「私が受け持った大切な子どもたち」と一人ひとりの子どもを手のひらで包み込むように好きでいる。これが、まっすぐに親に伝わる。信頼も誠実さも好感も。
私は三児(中学・高校・大学)の母で、教育カウンセラーとして、さまざまな教師と保護者にかかわってきた。改めて取材した「こんな先生が信頼できた」という保護者の意見は
1 子どものことをよく見ている教師
圧倒的な第一条件である。「なんといっても、わが子のことをよく見ている先生が一番よ」という声が多数の保護者からあがった。子どものことを温かな目でよく見ていてくれる。と保護者が感じたとき、教師に信頼をよせる。
親は子育ての長さやエピソードの数だけ、いろいろな思いを持って学校に通わせている。でも、親は教室でのわが子の様子はよく知らない。そんなわが子の様子を教師から伝えられるときが信頼獲得のチャンスなのだ。
親が具体的によく見てくれていると感じるときは、
(1)親が否定的に見ていたわが子の一面を、教師ができていると具体的に例をあげる。
(2)わが子を認めて「ほめる」という、わが子がうれしくなるひと言をかけてくれた。
2 明るく、笑顔のある教師
とくに小学校では、明るく、いつも笑顔の教師がよい。子どもの気持ち、クラスの雰囲気、懇談会などにおいて抜群に印象がよい。
暗い感じの教師は保護者に印象が悪い。クラスの目標に、明るく元気な子という標語があるが、やはりまず教師から実行してほしいものである。
3 授業に魅力がある教師
今の親は授業参観でも厳しい目で見ている。私語の多い授業では、教師がもっと引きつける授業を工夫してくれたらいいのにと思っている。授業も漫才の最初の「つかみ」と同様に導入に知恵を絞って引きつけてほしい。
塾に通っている子どもは、塾はあんなにわかりやすく教えているのにと思っている。高校になると笑顔やジョークではなく、授業のわかりやすい、上手な教師が生徒や親に人気がある。
話しが長い、くどい、声が小さいなど教師の独りよがりの自己満足的な授業は、保護者の評価が低い。
4 公平な教師
親は教師が子どもに公平であることに敏感である。教師は「ひいきしている」と指摘されても「そんなつもりでは・・・・」と言いわけにすることが多いと多くの保護者はいう。「気をつけます」と前向きな返事をして、自分を素直に省みてほしい。
子どもの名前を呼ぶときが要注意です。決まった子だけを愛称で呼んだり目立つ子を無意識に連呼したりすると、不公平感が子どもや親の間に生じる。
知らないうちにおとなしい子を「さん」づけで呼び、活発な子をあだ名で呼ぶことのないよう気をつけてほしい。
隣のクラスとも公平に。隣のクラスと宿題、学級便りの量、特別活動の内容、授業の進度があまりにも違うと親は「うちの先生はどうなっているの」と不満を持つ。横との連携も欠かせない。
5 柔軟な教師
教師が自分のやり方に固執して目の前の子どもの様子をきちんと把握せず、突き進むタイプは、協力しようという親の気持ちを削ぐ。
「教師生活○年」と言い出す教師は、キャリアがあり、自分の指導に間違いないといった思いが根っこにあり、親との柔らかい関係をつくりにくくしている。
長いキャリアがあっても謙虚に子どもや親に耳を傾ける教師は信頼度が抜群である。
6 話しを聞いてくれる教師
保護者会にかぎらず、保護者と接する機会があったときは、ひと言でも「聞いてくれる」教師であってほしい。
聞き上手、まとめ上手な教師の保護者会の出席率がよく、盛り上がる。
保護者が子どものことやクラスの様子を話し、聴き合うことは学級便りよりもクラスの様子がよくわかる。また親の価値観の違いや子どもから聞いていた様子との照らし合わせなど、一目瞭然な効果がある。
(田中典子:元教師、東京都公立小・中学校スクールカウンセラー。カウンセリング・スペースさくら代表)
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