子どもとかかわる基本技術とは何か
1 子どもと上手にかかわる第一歩は教師自らが自分のことを好きになること
子どもと上手にかかわる第一歩は、教師自身が自分のことを誰よりも好きになることです。自分の生き方に生き甲斐を感じて、自分のことを好きで十分に受け入れている人は、相手やまわりの人も大切にできるからです。とりわけ教師には、この感覚が大切です。
子どもたちは、自分にかかわってくれる相手がどんな動きや反応をしてくれるかを敏感に感じるものです。子どもは、おとなや教師をみる天才といっても言い過ぎでないと思います。
とくに教師が子どもたちのことを見ていてくれるとき、教師自身がしっかりとした考えと思いをこめて子どもたちに語るとき、子どもたちは教師を身近に感じるものです。そうすると、子ども自身も安心して自分を表現し、自分の本当の気持ちや考えを自由に話すことができるようになります。
2 聴き上手になる
子どもが話した言葉を繰り返しながら聴くようにします。そうすると、子どもは自分の話を聴いてもらえている。自分の気持ちを考えてくれていると、子どもは自分のことを安心して話せるようになります。それと、子どもの言葉の間に「うん、うん」「なるほど」などと、うなずくことも大切です。
子どもの実態やその場面に応じて、教師の多様な反応の仕方があると思います。子どもの心や感情の動きを察知した対応をこころがけることが大切です。子どもの言いたいことをよく聴くことで、子どもの気持ちが整理されます。
このとき、子どもの感情が伝わるように聴くことが大切です。子どもの気持ちになって一緒に考えるようにします。そうすると感情交流ができるようになり、子どもも、分かってもらえたといううれしい気持ちになります。すると、その子なりの行動ができるようになり、やる気が出るのです。
3 子どもの願いに素早く応じる
小学校低学年の子どもは自分の思いをすぐに教師に知らせたいという気持ちをもっています。教師がタイミングよくかかわるようにすると、子どもは自分の思いに充実感を憶え、意欲的に学ぼうとするようになります。
子どもの願いや要求を実現し、子どもと向き合う担任であるためには
(1)スピーディーなかかわり
子どもが話しかけてきたとき「どうしたのかな」とすぐに対応できる感覚をもつことです。子どもは聞いてもらえたと安心感や満足感を得ることができます。
(2)センスのあるかかわり
ひと言でいうと、教師が明るい感覚をもつことです。教師の人間性を含ませた温かいユーモアがほしい。
(3)笑顔のあるかかわり
いつでも子どもと笑顔で接する感覚をもつことです。学習するとき「先生はみんなと一緒にいることがうれしい」という笑顔は、子どもが安心して活動できる学習環境の要素の一つだと思います。
(4)気配り
教師が子どもと向き合い、子どもの成長を願うときにいかに「気をきかすか」「気配りをするか」ということです。その教師自身が醸し出す、その人なりの人間的な魅力といっていいでしょう。
4 子どもと一緒に活動する
教師は、子どもたちと一緒に学び合うとともに、子どもがどんな気持ちでいるのか、その学習への取り組み方はどうか、他の子どもたちとのかかわり具合はどうか、などについて子どもから学ぶようにします。
学級の生活をつくる中心は、一人ひとりです。子どもたちが安心できる、心豊かな居場所としての学級集団をつくるように努めます。このような心配りが「先生も一緒に考えてくれる」という一体感となって、子どもたちに映っていきます。
具体的には、次の点を大切にしたい。
(1)子どもが楽しく活動できる場面をつくる
子どもが自分たちの力で取り組む活動を積極的につくるようにします。子どもが活動そのものを楽しみ、互いのよさに気づき、高め合っていくようにすることが大切です。例えば週一回の学級活動で「ゲーム集会をしよう」「係活動の工夫を発表しよう」など。
(2)子どもが役割を表現できるようにかかわる
係活動でその子なりに役割を遂行したことやグループ学習で学び合ったことなどの成果を発表する場をつくります。活動の成果を学級通信に載せたりするなど、みんなの学級生活に役立っていることを援助するようにします。帰りの会で友だちのよいところを発表したりします。
(3)子どもと生活のルールづくりをする
子どもたちが学級の仲間のかかわりや活動の事実をとおして「自分たちの集団規範」を学び合うようにかかわります。この集団の規範づくりは、正しいことは自分たちの努力でしっかり守っていこうとする正義感を子どもたちに育てることにもなります。
また、子ども同士のトラブルや活動のゆき詰まりなどの場面でも、叱責だけで終わるのではなく、自分がしたことや、もっと改善できることなどを話し合いながら、学級生活のルールを具体的に自分たちの言葉でつくれるようにします。
5 子どもが目標に向かって行動していくには教師の助言が不可欠
子どもが目標に向かって行動していくには、「ほめられる」、「やらなくては叱られる」といった外的な動機づけを内発的なものに転換させていくことが大切です。そのために「こんなことに気づいたんだね」「こうやるといいね」「きみの考えでやってごらん」など、その行動を支える教師の助言が不可欠です。そして、その行動の事実を認めるようにします。
(有村久春:1948年鹿児島県生まれ、東京都公立学校教師・指導主事・小学校校長、昭和女子大学教授、岐阜大学教授、帝京科学大学教授を経て、東京聖栄大学教授。専門は教育学、生徒指導研究、特別活動研究、学校カウンセリング研究)
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