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保護者との関係づくりは「日常生活のちょっとした配慮」でつくる

(1)よいことがあれば親にすぐ電話する
 よいことがあれば、できるだけ早く直接伝えるようにする。そのときの状況がよくわかるように、具体的な場面の話をする。周りの子どもが認めたり、ほめてくれたことがあれば話の中に入れていく。つぎのような例がある。
 前年度、学級崩壊したクラスを担任した。Aくんという崩壊クラスの中心人物で職員室では知らない教師はいないという有名人がいた。私はドギマギして始業式を迎えた。
 しかし、Aくんは自分をかえようと決心していたようだ。教室から抜け出すことも、離席することさえなかった。その日の放課後、私はAくんのお母さんに電話をした。
「はじめまして、担任の○と申します。どうしてもお母さんにお話したいことがあって」と言うと、お母さんの声がこわばった。
「あの、Aがまた何かしたのでしょうか」このひと言で、学校から電話がかかると暗い気持ちになっていたのがうかがい知れた。
「いいえ、Aくんがとってもよくがんばっているので、お母さんとどうしてもお話がしたくなったのです」と言うと「そうですか」と少し明るい声になった。
 そこで、一学期が始まってからのAくんについての話をした。友だちとのトラブルがないこと。学習も積極的に取り組み、よくがんばっていること。お母さんは
「いいことで電話が来たことは初めてです」と言ってくれた。
(2)
問題があるときには連絡帳を使わない 
 連絡帳には書ききれない、伝えきれないと思うことには必ず、電話したほうがよい。無理して文章にしてしまうと「ここに書かれていることがわかりません」と親に言われ問題がこじれていく。いったんこじれると、どんなことを話しても、まず解決しない。
 また、内容によって返事を書きづらいものは、「ご連絡ありがとうございました。今から授業ですので、至急調べて、電話の返事をします。お許しください」と、返事しておくとよい。
 また、問題のある連絡帳をもらったら、必ずコピーを取り学年主任等に見せた方がよい。親が何を問題にしているのか、何が言いたいのかきちんとその問題についてつかめないうちに、あわてて返事をせず、まずは学年主任等に相談するとよい。
(3)
よくある苦情への連絡帳の返事は、教師の指導の事実を具体的に書くこと
 連絡帳で親が知りたいのは、親からの申し入れに対して、なんらかの行動を担任が、わが子のために行ってくれたのか、どうかである。要するに、わが子の困ったことに心を痛め、何か少しでも働きかけてくれたかである。
 例えば、親から「うちの子どもの消しゴムが何度もたせても、なくなるばかりです。どうか探していただけないでしょうか」という連絡帳をもらった。
 担任の返事は
「いつもお世話になっています。ご連絡ありがとうございました。消しゴムがなくなっていたのに気づかず、A子さんにかわいそうなことをしました。ごめんなさい」
「A子さんと話をすると『筆箱の中に入れておくのだけれど、なくなってしまったの』と言っていっていました」(本人が言ったことは正確に書く)
「その後、私も一緒に教室の落し物箱、Aさんの道具箱を捜しましたが、見あたりません。また、クラスのみんなに『Aさんの消しゴムを見つけたら、連絡くださいね。なくなったら、みんなだって悲しいものね。A子さんを助けてあげようね』と話しました」(担任の指導の事実は詳しく書く)
「私は授業の終わりには『机の上の鉛筆、消しゴムをしまいなさい』と声をかけているのですが、十分でなかったと反省しています」(担任の指導の反省)
「追伸、本日はA子さん、国語の授業中とってもよい意見を堂々と発表していました。ほめてあげてください」(本人のよい言動を伝える)
 すぐの返事はその日に書き、親から担任へのお願いの返事は、この程度に丁寧に一度書いておくと、親の方も安心する。
(4)
欠席したら即、電話連絡をする
 欠席はどのクラスでも日常よくあることだ。しかし、欠席したらチャンス到来。ふだん知らせたかったのに知らせることができなかった小さな「よいこと」を連絡するチャンスだ。
 欠席の理由を再度確かめ、現在の様子がどうであるか聞く。翌日の連絡をする、持ち物については詳しく。日々の様子で気づいたちょっとしたよいことを話す。
 また、電話連絡の場合は「即」連絡することも大切だ。わが子のことを心配してもらって、感謝こそすれど、怒る親はいない。早ければ早いほど、心配しているという気持ちが伝わる。
 ふだんから気になっている子どもが欠席したときもチャンスである。気になる行動について話ができるからだ。
 このとき大切なのは、学校でのよい行動を先に知らせる。気になるところをずばりと指摘しない。「そういう行動をとったお子さんの気持ちも、わかりますよ」というメッセージをそれとなく入れる。子どものことはお母さんのほうがよく知っているので、教えていただきたい。という姿勢を前面に出す。
(
大場寿子:1961年静岡県生まれ、東京都公立小学校校長)

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