教師が保護者と話すときの心得と、個人面談や保護者会で批判や反発されたときどのようにすればよいか
教師は子どもに向けて毎日話をしています。いつしか教師の口調を身につけ、自分が話し上手と思い込んでしまうこともあるようです。
しかし、子ども相手の話し方には巧みになれても、大人を相手にした話し方はいささか不得意なのかと思います。
教師の話し方に、どんな特徴があるかお気づきでしょうか。子ども相手に話しているので、ついつい話がくどくなっています。また、指示的で指導的な語調の多い話し方になりやすいのです。
この調子で、大人を相手にして話をするとどうでしょうか。人によっては「学校の先生の話は、命令調だ」と不満感を抱く人も出てきます。教師にそんな思いがなくても、相手に誤解を与えてしまいます。
保護者と話し合う場合は、社会人対社会人の話し方をしたいものです。ところが、教師のなかには、それならと、親しい間柄の話し方でとばかりに、くだけた言葉を用いると相手に「失礼な」と誤解を与えかねません。
やはり教師は話し方のマナーを心得て、人と接することが大事なのです。教師が笑顔もみせず、命令調で話されると、保護者の側も緊張し、やがて不満に変わっていくのかと思います。
やはり、保護者と話すときは、相手に対する敬意、社会人として接する態度、きちんとした話し方の三つを心にとめるようにしましょう。
例えば、保護者会で、親の側から担任にあれこれと、意見や注文が出ることがあります。教師は、意見や注文を聞いたり、批判されることに不慣れなようです。
子ども相手の毎日だから、ついつい“お山の大将”になってしまっているのかもしれません。話をじっと聞いたり、きつい話だと思っても笑顔で対応することに、慣れないままに過ごしてきたからでしょうか。
相手の言い分に無理があるなら、わかりやすく説明したり、誤解しているならそれを解いたりする話し方もあるでしょう。
反論の極意は「相手に言わせるだけ言わせ、それから筋立てした話し方で論破する」ことがよいと、聞いています。
こうしたことを書くと「教師は何を言われても我慢しなければならないのか」と、不満顔になる教師がいます。事柄によっては、反論し説得しなければなりません。
その際、言葉を選び、話し方に気を配ることは、知的職業人の教師として当然です。相手の言い分に間違いがあったとしたら「それは違っています」などと、いきなり言ってどうなりますか。
「おっしゃる気持ちはわからぬではないのですが、そのことについては・・・・・」と、切り返すこともできるでしょう。「なるほど、そうした見方もあるのですね」と、相手の言い分を一応は認めたようにして、反論していくことも可能でしょう。
つまり、表現力は子どもだけに育むのではなく、教師自らが育てることが課題なのでしょう。教師と親を結ぶ糸は、一度切れてしまえば再び結ぶのは容易ではありません。だから、上手な聞き手になることが大事なのです。
次の例として、個人面談で感情的に反発する保護者がいた場合は、どうすればよいでしょか。
親であれば自分の子どもをよくしてほしいのです。ですから、どの親も大なり小なり不安や不満はあるのです。
担任は最大40人の子どもの成長を見守っているわけです。ですから、一人ひとりの子どもたちの願いや保護者の期待に十分に対応するのは難しいことです。
しかし、「40人の子どもたちのめんどうを見ているのですよ。一人ひとりの子どもに十分に対応できるはずがありません」と絶対に言ってはいけません。かえって反発をますだけです。
保護者の話の中から、子どもへの願いや担任のいたらなさが保護者にどのように映っているか冷静に聴き取りましょう。いやな雰囲気ですが、考えかたを変えれば、担任を成長させてくれます。
保護者が感情的になったといえ、保護者の話には「なるほどな」「そう、その通りだ」などと共感できることもあるはずです。「そうですね」とあいづちをうつ担任の誠実さは、必ず保護者に伝わるはずです。
「今度、もう一度話し合いませんか」「学校での子どもさんの様子も見てみませんか」と。保護者の話をうかがたったら、自分の考えを話すことも大切です。どこかに誤解やずれがあるかもしれませんから。
学校と家庭の協力は、対等の関係で協力し手を結ぶものです。これまでは、学校や教師の言い分に保護者が従い、協力するものと思い込んできた傾向があります。
今は、学校は教育サービスを提供する場だと考える必要があると思います。したがって指示的な話し方などは避けるようにします。
教師は話し方や、話の聞き方など、保護者に対しては社会人として接し、それでいて気配りもできる。つまり、世間の常識を心得ている人になればよいと思います。
教師は子どもを指導することが仕事ですから、その指導が確かなことが保護者から信頼される第一条件です。
そして、保護者の意見に耳を傾けることのできる柔軟さも、教師には大事だと思います。意見の適否は後から考えればよいでしょう。保護者が発言すると、文句か批判としか受けとれないような、かたくなな教師の態度は、保護者との心の距離を広げてしまいます。
教師は、人間関係づくりに巧みになってほしいし、それをおっくうがらないことです。ささいなことで、人間関係がつくられもするし、崩れもします。
保護者の問い合わせに対する返事や連絡はすみやかに行うようにします。返事することを忘れたり、そのままにしたりすれば、誠実さが無いと思われます。大人同士のかかわりでは「忘れた」では済まされません。誠実さは、人間関係の土台です。
言い訳、釈明、言い逃れはしない、爽やかさも必要なことです。詫びるときは詫び、主張することは、言葉を選びながらもきちんと話しましょう。大ふろしきを広げて「あれも、これも実践する」などと公言せず、できることから小出しに実践する慎重さも必要です。
こうしたことは、教職員研修にも登場しません。それだけに、自分自身で心を配らなければと思えてくるのです。
(飯田 稔:1933年生まれ。千葉大学附属小学校に28年勤務、同校副校長、千葉県浦安市立小学校校長を経て、千葉経済大学短期大学部名誉教授。学校現場の実践に根ざしたアドバイスには説得力がある)
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