クレームを適切に対処するには、クレーマーの特徴をよく知っておくことが大切である
教師がクレームに適切に対処するには、クレーマーの特徴をよく知っておくことが大切です。クレーマーは、クレームの内容・方法・頻度等、クレームそのものと、訴える人物の2つの視点から分類できます。
1 溺愛型
わが子かわいさゆえのクレームです。あまりにも自分の子どものことだけを考え、無理難題を押し通そうとする姿勢は問題です。
このタイプの親に対しては、十分に耳を傾けて聴き、溺愛の弊害について具体的な場面で、機を見て助言するようにしたいものです。
例えば「先日の運動会で、うちの子が1位だったのに2位にさせられた。校長に1位にするよう教育委員会から言ってください」と、いったタイプの親のクレームは、子どもかわいさゆえのものです。
その点さえしっかり押さえておけば、問題がこじれることはほとんどありません。親心の受容に始まり、親心の受容に終わる。これがポイントです。
「お母さんの気持ち、よくわかりますよ。お子さんも悲しかったでしょうね」と、母親の気持ちを受け入れたうえで、子どもの気持ちに焦点を当てます。
教師「お母さんの要求で事態が変わったら、お子さんはどう感じるでしょうか?」
母親「もちろん喜びますよ」ときたら
教師「そのことで、まわりの子に迷惑がかかることを考えても喜ぶでしょうか。私には、お母さんがそういう子に育てているとは思えないのですが」と、二の矢を放ちます。
2 放任型
ふだんは子どもへの関心が低く、あまりかまってやれない分、教師へのクレームを通して、その「埋め合わせ」をするかのように、子どもを守る保護者の役割を果そうとするのです。
子どもを「ほったらかし」にしている親が、子どものことでクレームをつける場合は、親の子育てが、放任なのを責められそうになったとき。責められるのを避けるために、子どものことを真に思う親を演じるときが考えられます。
いつもは放任されているのに、突然、愛情深い保護者のように振る舞われて、子どもは混乱するばかりです。
そんな態度の保護者のクレームに対するには、教師の側にも強靭な精神力が求められます。
3 欲求不満解消型
保護者自身が抱えている不平・不満を学校にぶつけることで、欲求不満を解消しようするタイプです。このような人にとって学校は格好の対象となります。クレームの内容はそう重いものではありませんが、教師のろうばいや学校の混乱を目のあたりにすると、攻撃型に転じる可能性は否定できません。
4 攻撃(愉快犯)型
クレームに戸惑う教師や学校を見て満足感を得ます。学校や教師に対して明らかな敵がい心や嫌悪感をもっていることが多い。
教師や学校に不安感を与えて楽しむというところから、保護者の「心の問題」も疑われます。
5 利益追求型
クレームをつけることで、金品の要求を突きつけることがあります。直接的な要求は脅迫や恐喝に当たるので、手を替え品を換え、巧妙に金品の提供を迫ります。
学校事故で子どもがケガをしたり、教師の不用意な発言や不適切な指導のため、子どもが不登校になった場合などに起こりがちです。
学校のミスに関しては、誠意をもって対応しなければならないのは当然ですが、これ幸いとばかり過剰なクレームに対しては毅然とした姿勢が求められます。
6 理解不能(混乱)型
クレーム内容が突然変わったりするなど、混乱が見られるタイプです。クレームが終わるまでに多くの時間と人間が費やされます。
このタイプの保護者は、多くの人間を巻き込む術にたけているうえ、心理的に不安定な状態に置かれているなどの問題がからんでいます。
大勢の人を使って要求を通そうとする。一つの要求をのむと、もっと高い別の要求をしてくる。感情の起伏が激しく、まわりの者が巻き込まれていく。感情を逆なでにすると非常に攻撃的になる。といった例があり、教師を精神的に追いつめることがまれにあります。
7 敏感・依存型
何かひと言いわずには気がすまない人で、チャイムの音や庭木の落ち葉などに敏感に反応し、学校に不平・不満をもち込みます。クレームが学校と人間関係を結ぶ役割を果たします。
ささいな出来事を大げさに訴え、たびたび学校を訪れたりします。学校にとって貴重な情報を提供してくれることが多いので軽視するわけにはいきません。
ただ、少々度が過ぎる振る舞いが目立つようになると、教師がへきえきする場面が増えていきます。
8 善意の問題指摘型
登下校の子どもの迷惑行為、教職員の不適切な指導、施設・設備の問題など善処を求めるタイプです。不登校の子どもをもつ保護者が学級だよりの配布を求めたりするなど、保護者として当然の「要望」で、これをクレームに入れることさえはばかられます。
学校や教師が気づかなかった問題点を指摘してくれるわけですから、学校にとっては「厳しくも温かな、ありがたい存在」です。教師に、保護者の思いをきちんと受け止める力があれば、クレーマーとは映りません。
ただし、教師の力量が乏しいと、当たり前な要求を不当な苦情と受けとめてしまうことがあります。
(嶋﨑政男:1951年生まれ、東京都立中学校教師・教育研究所指導主事・中学校長等を経て神田外語大学教授)
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