いじめにはどのような特徴があるか、気をつけるべきこととは
いじめを受けている子どもは、友だちにいじわるをされたり、嫌われたりしないようにするのに一生懸命で、ときに自分が悪いという思いもあり、振り回されて、苦しくなったりします。そして、その苦しさに、自分はダメなんだという気持ちになって、人に打ち明ける自信もなくなってしまうことがあります。
テレビや新聞で報じられるいじめの中には「犯罪行為」にあたるといってよいものもあります。犯罪行為とは、暴行・傷害・脅迫・強要・恐喝・侮辱罪などで、その行為はひどいし、受けた傷も大きい。日常起こっているいじめでは、いじめた側がつぎのような、言い分けをすることがあります。
(1)たいしたことでないから、いじめではない
いじめをした側からよく聞かれる言葉です。たいしたことがない行為は、相手を傷つけることはないと思っています。しかし、相手が深く傷つくことがあることはよく知られています。
(2)いじめではなく、ふざけていただけだ
これもよく聞かれます。遊びとしてやっていただけだというのがこれにあたります。悪気はなかったのだといっているのだと思いますが、相手を深く傷つけることがある。
(3)相手が悪いのだから、いじめではない
これもまたよく聞かれます。特に自分は正しいと思っている場合、対応が難しくなります。例えば「約束を破ったお前が悪い」などという非難はこれにあたります。ときに、いじめる側に「正義」があるかのようにみえることがあります。
いじめを受けている方の辛さがみえにくく、やっている方は悪いと認めない傾向があります。
いじめの特徴にはどのようなものがあるでしょうか。
(1)いじめを「する側」と「される側」に意識のズレがある
「えっ? そんなことでいじめになるの」、そんな思いが、いじめをした側に起こります。
「たいしたことがないこと、軽い気持ちでやったこと、正しいと思ってやっていることでも、いじめになることがあるんだ」ということを、子どもたち自身が思えるようになることが大切です。教師がそうした働きかけがとても大切です。
教師が「いじめだからやめなさい」と言っても、子どもたちの心には届かず、こじらせてしまうことがあるのです。
そんなとき、いじめをする側と、される側のズレを理解し「傷ついているよね」という問いかけが大切だと思います。これが「いじめを受けている子どもの気持ちに立って」考えることでもあるのです。
いじめをした子どもを「謝らせる」という対応にも注意が必要です。こうしたズレをそのままにして、謝った場合、「自分はそんなに悪くないのに」などという気持ちを持っていると、屈辱感が残ります。その屈辱的な気持ちが表れ、謝罪の態度が問題にされたりすることがあります。
いじめを受けた子どもがどのように解決してほしいのかというイメージが一番大切です。いじめた子どもが謝る場合には、自分の何が相手を傷つけたのかを、子ども自身が言えるようにしてあげなければいけません。いじめを受けている子どもの立場から、ズレを埋める働きかけがとても大切になります。
(2)いじめはエスカレートする
いじめは「する側」と「される側」にギャップがあります。特に「ふざけていたたけだ=楽しい」といういじめは、楽しいという気持ちが、相手の気持ちをおもんぱかったり、善悪を判断する態度を鈍らせてしまいます。
「相手が悪く、自分は悪くない」といういじめの場合、いじめる側に正義があるかのように思い、そこに、いじめを抑制する力が働きません。
また、「たいしたことがない」と考えるいじめの場合でも、それが繰り返される中で、その程度への意識がマヒしてしまうことがあります。
そうした中で、いじめは、ときとして気づかれないまま、エスカレートしていくことになります。
(3)いじめられていることを、人に話してくれない
いじられていることや、その苦しさをなかなか人に話してくれません。「話したことによる報復を恐れる」「かっこ悪い(恥ずかしい)」「親に心配かけたくない、心配されたくない」と思っているかもしれません。
そうした中で、誰もいじめに気づかず、どんどんエスカレートしていき、一人で抱え込み、追いつめられていきます。
(4)いじめを受けている子どもを死へと追いつめる
悪口やからかいも、それを言われた子どもは深く傷つきます。たいしたことがないようにみえるいじめであってもまた、どのような形のいじめであったとしても、いじめを受けている子どもを死へと追いつめる、これもいじめの特徴の一つです。
(野村武司:獨協大学法科大学院教授。獨協地域と子ども法律事務所開所。弁護士)
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