苦しいときこそ「笑いのある場」に身を置けたら救われる
苦しいときこそ笑いましょう。意識的にわらうことが大切です。私は新聞記者として日々事件を追っていたが、なぜ「笑い」に魅せられたのか。明石屋さんまといった大阪の芸人さんを取材して、笑いに興味をもったのがきっかけです。
面白いことを積極的に見つけ「多く笑う」ことが、今の世の中で最も強く求められていることではないか、と私は思います。
東日本大震災で家を流失して避難所生活を送っている婦人がいました。仲間とともに食事を作っているときに、誰かが冗談を言うと、そのつど笑いがおき、笑うことでみんなが支え合っていたと後に彼女は語っています。
避難所生活には、希望を取り戻そうとする人々の結束があります。同じ哀しみを抱く人々が寄り添う場があります。この場は被災者に限らず、すべての人が欲しているものだと思います。不安と孤独を抱えながら生きる人が「笑いの共同体」に身を置けたら、どれだけ救われるかわかりません。
ここでの笑いに求められるのは、話術ではなく、まして毒舌や皮肉でもなく「やさしさ」です。「やさしさ」には強さも必要です。人を元気にしたいなら、自分の中にもパワーがなくてはなりません。そこで、「自分で自分を笑わせる」ことも、重要になってきます。
「相手を笑顔にしよう」という思いやりに基づく、たわいのない冗談。これなら芸人なみの技術などなくとも、みんなにできるでしょう。
それには、どうすればいいでしょうか。答えは簡単です。「笑顔をつくり、笑い声を立てる」だけでいいのです。笑顔をつくると、表情筋の変化を感知した脳は「面白いと感じている」と認識します。笑い声を立てると、同じく脳が「楽しいのだ」と思い込み、幸せな気分になれるのです。
この笑いのトレーニングは、お風呂で、笑顔をつくって「ワハハハ」と五回、言ってみてください。言い終わったとき、確実に気持ちが明るくなっていることを感じるはずです。
コミュニケーションに笑いを増やすには、ネタが必要です。相手を笑顔にできるような話題を、数多く仕入れておきたいところです。「ネタなんて見つけられない」などという心配はご無用。日常のあらゆるところに、笑いのモトは転がっているものです。
例えば、先日、私がバスの中で聞いた女子高生たちの会話。「『煮炊きもの』ってなに?」「ニタキモノ? 知らない」「どこで売ってるんだろ」・・・・・笑いをこらえるのに苦労しました。
劇作家の中島らもは、これを「笑いの天使」と表現していました。呼んでもいないのに笑いの天使が降ってくると語っていました。私たちの周りにも、必ず笑いの天使がいて、そっと目の前に立っているはずです。
天使と目が合ったら、ぜひ笑ってください。そして、誰かにその話を伝えましょう。そうして人から人へと広がる笑いは、この世界をきっと、明るく照らすでしょう。
(近藤勝重:1945年愛媛県生まれ、毎日新聞社特任編集委員)
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