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子どもたちの可能性を授業で引き出すにはどうすればよいか

 教育という仕事は、子どもたちの具体に応じて、こまかい手入れをしていかなければならないものである。
 子どもたちに、言葉でなり、声でなり、身体でなり表現させたら、その事実のなかにある、よいものとか悪いものとかをとらえ、その場ですぐに具体的に指摘していかなければならない。
 その事実のなかにあるよいものは拡大し、悪いものは否定して他のものをつくり出させることによって、子どもたちの持っている可能性は、はじめて引き出され形となっていくものである。
 そういう指導をするためには教師は、子どもの事実をみぬく力を持ち、表現の方法を指導する教師としての技術をもっていなければならない。
 また、それらのもととなる、教材への解釈とかイメージとかを持っていなければならない。
 教育という仕事においては、子どもの事実にふれるごとに、問題が生まれ、新しい解釈とかイメージとか、それに即した新しい指導の方法とか技術が生まれる。だから教育という仕事は面白いのである。
 事実を動かすような仕事をしていったとき、子どもたちは無限に教えてくれるのである。教師は、子どもに学ばせることによって自らも学んでいる。 
 教育の実践は、事実を大切にし、子どもを動かし、子どもを変える事実を日々つくり出していかなければならないものである。
 教師は子どもを動かしていく仕事である。教師の仕事は、授業という、教師と子どもが対決する作業によって、的確に具体的に子どもを動かしていかなければならない仕事である。授業は子どもを動かし変えることができ、子どもたちを新鮮に強じんにすることができる。
 授業で、教師が子どもや教材のなかから課題や問題をつくり出し、子どもたちの考えを引き出し、子どもたちから出た考えをつぎつぎと打ちくだいたり、発展させていくことによって、集中や緊張が生まれ、創造が生まれていくのである。
 そして、その課題や問題をみんなが理解し解決すると、子どもたち全体が豊かな気持ちになりリラックスする。「緊張や集中」と「リラックス」のどちらもある授業によってリズムが生まれてくる。
 そういう授業をすることによって、すべての子どもたちが、心をひらき、自分をおいかけて追究し、自分をつくり出すようになるのである。そのなかで子どもたちは新鮮になり、清純になり強じんになっていくのである。
 子どもが生き生き学習するには、教師が意図的に組織し構成することによって生まれてくる。教材のなかにある本質とか方向とか問題点とかをとらえ、それをもとにして子どもたちに働きかけ、それに対して子どもたちの出す発言とか行動とか反応とかの事実を見て、それらを組織し発展させていくことによって、はじめて可能になる。
 授業を組織し構成するということは、教師が子どもに働きかけていることであり、教師が子どもたちのなかに入っていることである。すぐれた組織がされ構成がされた場合は、それだけで子どもたちが生き生きとなり、心をひらいて学習に参加するようになる。
 授業は明確な方向性を持ち、単純化されていなければならない。それではじめて授業は力を持ち、リズムとドラマを持ち、新しいものを生み出していくようになる。
 教材の方向性と授業の方向性をどこで一致させるかということが、授業展開を成功させる条件である。一つの教材によって方法論を持つことが、授業での教師の方向性であり授業に方向性があることである。
 教材の方向性を考える。現実の子どもを考える。自分の方向を考える。教材のなかからもっとも適切なものを抜き出し拡大する。
 展開を単純化しようとする場合は、何をどうきりすてるかということが大事になる。教師が「読み取ったもの・解釈したもの・疑問に思ったもの・発見したもの」のなかから、こんどの授業では「何を取り上げ・何と何は切りすてるか」を決定する。授業展開に方向性を持たせるために、単純化し明確にするために惜しげもなく切りすてるとよい。
(
斎藤喜博:1911年-1981年、元小学校校長。島小学校などに優れた実践を残した昭和の代表的な実践者)

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