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授業を成功させる授業技術の原則とはなにか

 教師は教えるのが仕事である。授業の目的は、子どもに知識や技能を習得させることであったり、学習意欲を高めるためだったりする。授業技術とは目標を達成するための手段である。
 授業技術は先人たちの知恵である。より効果的な技術があるなら、それを使えばいいのである。
 授業の技術が優れているとは、何をもって判断すればよいのか。それは、授業後の「子どもの事実」で判断できる。すなわち、教師が意図した目的が、より効果的になされる方が、よい授業技術なのである。
 授業の教え方の技術の原則とはどのようなものがあるのでしょうか。
1「見本を示し、やり方を説明し、させてみて、助言する」
 子どもは授業で知識と技能を学んでいく。学ぶうえで大切なのは「真似をすること」である。まず、教師がお手本を見せる。次にやり方を説明する。そして、教師が教えた通りに、子どもに真似をさせる。最後に、子どもの出来を見て、助言していく。
 助言は、できるだけ個別に行うのが望ましい。
 子どもに創造力を発揮させたいなら、教える内容は、真似させて教える。そして創造力を発揮させる内容は、子どもに任せるようにする。
2 一つずつ教える
 コメニュウスは大教授学で「いちどきには一つしか教えない」と述べている。「一度に複数のことをさせない」ことは、昔から伝わる大切な原則である。
3 教える内容を絞り込む
 あれもこれもと授業で扱うと、子どもは混乱する。混乱して、指導内容が理解されないことになる。大切な内容に限定して教え、活動させるのである。
 教える価値がある、その教材のポイントに絞り込んで授業するようにすると、子どもの意識がその内容に集中し、理解が深まっていく。
 例えば、4年生の理科で「人の全身の骨格」を教える学習がある。「全身の骨格図を予想して描かせる活動」がよく行われている。これを、あえて「腕だけ」に限定して「腕を触ってごらん。骨がありますね、腕の骨を予想して描いてごらん」
 骨が一本と考える子もいる。関節で分かれて、骨は二本だと考える子もいる。腕だけに限定されるから、違いが明確になり盛り上がるというわけである。話し合いをさせた後に、答えを示す。関節で骨がわかれていることを教える。そして、全身の骨格図に進めばいい。限定するから子どもの頭が働くのである。
4 指導内容を細かく分けて、簡単なものから難しい内容へと教える
 知識と技能は易しい内容から、「だんだん」難しい内容へ、少しずつレベルを上げて教えるのがよい。指導内容を細かく分け、簡単なものと難しいものを判断し、一つずつ段階をふんで教えていけばよい。
 例えば、ダンスを習得させるとしよう。いきなり複雑な動きをおしえると、子どもはバラバラの動きになってしまう。子どものやる気もなくなる。まずは、簡単な動きから練習させる。例えば、足のステップだけを練習させる。足だけなら簡単にできる。できたところで、すかさずほめる。すると、子どものやる気が出てくる。
 調子が出てきたところで、難しい手の動きを教える。やる気になっているので、その勢いのまま習得できるのである。
5 反復して学習する
 知識を確実に習得するために、反復して学習するようにする。
 子どもたちは学習しても、しばらくすると忘れてしまう。事あるごとに繰り返し教えることが必要なのである。
 例えば、算数では、授業の最初に、必ず復習から入るようにする。時間は5分。短いが、かなりの効果を発揮する。単元の最後に必ず復習問題を出す。教科書のまとめの問題を解くだけでいい。
 反復するときに、「少し変化をつけて反復する」と飽きがこないで楽しく学習できる。
6 最終的なゴール(目標)を示してから活動させる
 授業では、様々な活動を子どもにさせていく。活動には目標があるはずである。その目標(ゴール)を示してから活動に入るのが原則である。
 そうしないと、子どもたちは、不安に感じるし、見通しももてない。その結果、やる気がなくなっていく。
 例えば、写真資料を読み取らせる際、「前の写真と比べて、3つの違いを見つけられたら、合格です」と言う。「3つの違いがある」というゴールを示されるだけで、子どもたちの集中力が増す。ゴールが明確になるから、やる気が出てくるのである。
7 学習者に合った課題を選択する
 教室には、一人ひとり違う子どもが集まっている。学習者に合った課題を設定するためには、子どもの実態をつかまなくてはならない。学習に対する準備が整っているかをつかむ必要がある。
 実態をつかんだうえで、子どもに少し難しい課題を与え、成長を促していく。課題の与え方は
(1)
習熟度別に別の課題を用意する。
 例えば、水泳指導で、25mを泳げる子には、フォームを整える練習メニューを与える。息つぎなどの基本ができている子は、25mをめざすメニューを与える。そして、息つぎなどの基本ができていない子は、顔付け、伏し浮きなどの基本メニューで練習させる。
(2)
全員にとって発展した課題を与える。
 例えば、算数で基礎を教えた後で、応用問題や発展問題を考えさせてもいいだろう。全員にとって発展した問題を解かせると、学力差があまり影響しなくなる。ひらめきが必要だからである。できる子もできない子も頭を悩ます課題を設定できれば、全員にとって成長できる課題となる。
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大前暁政:1977年生まれ、岡山市立小学校教師を経て、京都文教大学の准教授(理科教育)。理科の授業研究が認められ「ソニー子ども科学教育プログラム」に入賞)

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