保護者から学校に苦情の電話が入った場合、どう対応すればよいか
保護者からの苦情を対面して受けると、相手の表情とその変化が目前で見え、感情の変化まで推察できるのが特徴です。声のトーンや言い方だけでも怒りの度合いは推測できます。最大の利点は、向き合って座っているので、不必要に騒ぐリスクが減るため、その場にいあわせる全員が理性を保とうとするところにあります。ポイントさえつかめば、解決に向けて進みやすくなります。
一方、電話だと相手がみえません。見えないぶん、向き合っていては言えないことでも、相手の姿が見えないことで、強く出てしまいます。声だけでは視覚情報がないため、双方の理解が深まりにくくなり、どうしても解決への難易度は高くなります。
電話の場合、相手の意図を聞きとることが難しく、こちらの意図を伝えることも難しい。教師と保護者の場合、そんな気がなくとも、非常に冷たく突き放したように聞こえてしまう、などということはよくあります。
保護者の学校への苦情はどのように受け答えすればよいのでしょうか。
最初に注意すべきこと、それは、周囲の教職員にも、苦情の電話がかかってきたことを知らせることです。苦情の電話を受けているとき、周りの雑談や笑い声などが聞こえてしまうと、関係のないことでも怒りが増してしまうものなのです。
苦情を受ける電話は、少なくとも二人が同時に聴ける設定にしてあることが望ましい。ぜひ一台はセットしておくべきです。担任と学年主任、あるいは教頭などと同時に聴けるようにすると、会話の最中でも筆記で指示を出し、軌道修正できる。できれば録音機能もあれば、なおよいのではないでしょうか。
話を聞くうえでの心得は、保護者が興奮していても、こちらは冷静さを保つことにあります。冷静といっても、事務的な話し方になってはマイナス。保護者の興奮度や声の大きさを踏まえて、やや近いトーンで対応しましょう。
また、申し出にはいちいち同調しながらも、ポイントをしっかり書きとめ、こちらからの返事は、最後まで聞いてからにします。もちろん途中で判断を求められたら答えられるものは答え、すぐに判断できないものは「教頭に相談して、あらためてご連絡させていただきたく思います。よろしいでしょうか」などと伝えればいいでしょう。
そして話が一段落し、保護者が落ち着いてきたら、こう切り出します。「せっかくの貴重なご意見ですし、お電話ではなく、直接お聞かせいただけないでしょうか。ご来校いただいても、訪問させていただくのでもかまいません」
おそらく、この言葉を聞けば保護者は一瞬ためらう。電話の特性に引っ張られ、感情のままに発していたのなら「いずれ会わなければならない」という事態を想像し、これまでの態度や言葉を恥入るはずです。
実際、こういったやり取りのあとに対面すれば、電話の向こうにいたはずの保護者とはまったく違う人物がそこにいる、などということもよくあります。そして相対したあとのほうが、冷静で建設的な意見を出せるに違いないのです。
以上が、保護者対応で私がお勧めする、電話から対面へ切り替える話法です。いきり立つ保護者と対面することは気が重いかもしれません。それでも有効な解決法であることは過去の事例からも証明されていることです。
(関根眞一:1950年埼玉県生まれ、苦情・クレーム対応アドバイザー。百貨店に34年間在職し、お客様相談室長を経て、メデュケーション(株)代表取締役。新学校保護者関係研究会委員)
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