教師から見た「困った親」のタイプと、その共通していることとはなにか
いま、親たちがあきらかに変化してきています。端的にいうと、質的に劣化してきつつあるのです。
私が多くの学校現場の教師の悩みをお聞きして、うつ状態に陥る教師の8割がそのきっかけとしてあげるのが、保護者からのクレームや教師攻撃です。しかも、そのクレームや攻撃の内容たるや、あきれるほどひどいものばかりなのです。
もちろん、非常識なひどい親はほんの一部ですが、あまりにもひどいので、それによって学校現場は混乱し、教師は大きな心の傷を負わされているのです。
困った親に共通しているのは、親が子どもとしっかりと向き合い、子どもと対話するのを避けている。面倒くささからか、そこから逃げているということです。
子どもは勝手なことを言ってくるので、きちんと向き合うのは大変なエネルギーを必要とします。子育てで一番大切なのは「手間暇かける」ことかもしれません。
教師から見た「困った親」には次の4タイプがあるように私は思います。
(1)不平不満型
ストレスのはけ口として教師を利用する親がこれに当てはまります。このタイプは子どもには熱心ではないことです。教育に熱心ではないのに、クレームだけはつけにくるのです。
(2)放任型
親が子どもを放ったらかしにしている親です。とにかく、子どもの面倒を見たくない、面倒くさい。放任というより放置です。
非行型の子どもが多い。端的に親の愛情に飢えているのです。さみしさを埋めるために道を踏み外してしまう。非行少年少女になりやすい。
(3)家来型
文字どおり、親が子どもの家来になって、ふだんから親が子どもの言いなりなのです。子どもに嫌われたくないので、ついつい子どものわがままな要求に従ってしまうのです。子どもに言われるままになんでも買い与えてしまう親も、ここにはいります。
大人をなめきった態度をとりがちです。この子どもたちは「私がワガママを言えば、大人は言うことを聞いてくれる」と思い込んでいます。教師を振り回す子どもになりやすい。
(4)支配型
子どもをきちんと教育しよう、正しくしつけようという姿勢が強すぎる親です。
いい親であらねばという思いの強い親は、知らず知らずのうちに子どもにプレッシャーをかけてしまいやすい。電車の中でキレて子どもを大声で叱りまくる母親も支配型にあたります。
挫折しらずで生きてきた優等生タイプの親が、親としても優等生であろうと、子どもを見守ることができずに、余計な口出しをしまう。過剰に支配的になってしまいやすいのです。
「自分の子どもは絶対にこういう子どもにする」という気持ちがとても強いので、当然、教師や学校に対する目も厳しくなります。かなりシビアなクレームをつけてきます。
教師をあたかも自分の服従すべき雇用人のようにコントロールしようとし、指令に従わないと、それが許せない。「能力がないなら、やめてしまえ」「校長を出せ」と責め立てる。
「いい子」でなければという重圧に耐えかねた子どもは、心が破裂するようにして問題行動を起こしてしまうのです。
中学生にもなると、自分がないと苦しくて仕方がない。反抗期には、子どもの自立に必要な「自分づくり」という意味があるのです。子どもは不登校やリストカット、拒食・過食などになりやすい。
子どもをいい子のフレッシャから解放するには、まず両親が「いい親」から降りる必要があります。夫婦で一日一回は、子どもの前でぐちを聞きあうなどして「弱音を吐ける家庭」を築く必要があるでしょう。
以上、4つのタイプに共通しているのは、きわめて利己的、個人主義的で、自分の子どもの立場からしか、ものを考えられないことです。
クラス全員の子どもを大切にしなくてはならない教師の立場など、まったくおかまいなしです。
なかには、子どもとの関係をうまく保つためのネタとして、教師の悪口を家で、日常的に口にしている親も少なくありません。教師という共通のターゲットを持つことで、はじめて親と子どもが仲よくできるという歪んだ関係にあるのです。
(諸富祥彦:1963年生まれ、明治大学教授,臨床心理学、カウンセリング心理学、現場教師の作戦参謀としてアドバイスを教師に与えている)
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