教師の教え方や学級運営に不満をもつ保護者にどう対応すればよいか
保護者が教師の教え方について抱く疑問や不満には、次のようなことが考えられます。
(1)授業の技術
教師の声が小さい、話すのが早すぎる、口調や表情が威圧的すぎるなどの基本的な技術。
(2)授業の方法
子どもの挙手のさせ方、指名の仕方、授業の進むスピード、宿題の出し方、テストの仕方など授業全般にかかわる方法。
(3)教え方
学習の苦手な子ども、得意な子どもに応じた教え方、やる気を高める声かけ、ほめ方、注意の仕方などについて。
保護者の教師の教え方についての不満に対して、教師が 「これが私のやり方ですから」「ずっとこれでやってきましたから」という説明では、保護者の不満がますます高まることもあります。
教師は保護者には「子どもに身につけさせたいことが○○で、そのためにはこの方法が最適であると考えられる。短期的に見ると効果的でないと思われるかもしれないが、長い目でみると、このやり方のほうが意義がある」などと、わかりやすく説明します。
保護者の疑問を受けて、教師の教え方が不十分であった点については素直に認め、今後改善していくことを伝えます。不十分な点は、研修の機会を利用したり、優れた実践を行っている先輩や同僚などの授業を参観するなどして、教育力を磨く努力をし、工夫する必要があります。
教え方の苦情の背景には、個々の教師の教え方だけでなく、学校の教育方針の不透明さへの不安、そうしたことを伝え切れていない学校のコミュニケーションの不足へのいらだちなども考えられます。
学年や学級での保護者会の際に、教師がどのような教育目標を設定していて、それを達成するためにどのような方法を使おうとしているかについて十分に説明しておく必要があります。
それを知ってもらったうえでの保護者の苦情は、今後の学校教育において必要な議論であると思われます。
保護者が教師を信用していた時代には、苦情はそれほどでなかったと思います。しかし、保護者の価値観が多様化し、教師への信頼も低下している現代は、学級経営について様々な意見がでると思われます。
教師は学級経営の目標とそれを実現するための方法を保護者がわかるように示す必要があります。保護者に理解してもらったうえで、どこに不満な点があるのかを明確化していきます。
教師が考えている目標自体が納得できないものなのか、実現するための方法が適切でないと考えているのかなど、率直に意見を聞く必要があります。
教師と保護者との考え方にずれがあったとしても、教師の権威を保つために保護者の意見を変えてもらわねば、と考える必要はありません。
さまざまな意見や提言があるほうが、より良い学級経営につながる可能性があります。異なる意見を集約して、より良い教育実践を行っていく力が教師に求められます。
保護者にとっても、意見が言えて、良いものを取り入れてくれる教師には信頼感が高まり、教師を支援してくれる関係が生まれる可能性も高いと思われます。
もちろん保護者の意見に迎合する必要はありません。しかし、保護者の意見を学級経営に反映しないときは、その理由を説明して、理解してもらう努力が必要です。
(松尾直博:1970年福岡県生まれ、東京学芸大学助教授)
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