統率力のない教師は学級をまとめることができない、どうすれば統率力がつけられるか
集団があるところ、必ず指導者の統率力がとわれる。統率力のない教師が、クラスを上手にまとめられるわけがない。人をひきつけ、人をひっぱっていく力があってこそ、集団はまとまる。
統率力のある教師は、上手に自然に人を引きつけるし、統率力のない教師は、ぎくしゃくとひっぱっていって、時々、ボロがでる。
動物の世界でも、群れのあるところは「ボス」ができる。ボスは、自分の体力で、他のサルを従える。人間の集団も放っておけば、弱肉強食の世界になる。その中で「力の強いもの」が、集団を支配するようになる。
学級崩壊のうしろには、このような力の支配が存在する。弱肉強食の「力の支配」が作用している。だから「いじめ」も起こるし、「不登校」も起こる。
これを防ぐには、教師が「力の支配」をすればいい。つまり、教師が「ガキ大将」になればいい。
おとなしくて、まじめで、小学校のときから、ずっと優等生という人が教師になると、クラスはどうなるかというと、まずクラスは荒れる。学級崩壊になる。なぜ、駄目だというと、クラスをまとめられなかったからである。
教師には「ガキ大将」になれない人も多い。今さら、これまでの生き方を変えられないわけだ。
しかし、子どもの中にも「教師のガキ大将」に反発する子も出てくる。人間は知的な生き物だ。体力だけでは従わない人間も出てくる。「知的な権威」なら従うという立場だ。
知的な権威は、いろいろあるが、まず第一は「授業が楽しく分かりやすい」ことだろう。子どもが学級ですごす大半の時間は授業である。「楽しく、分かりやすい」授業をする教師なら、子どもはついていく。逆に「つまらなくて、分かりにくい」授業をする教師には反発する。
どうすれば「楽しく、分かりやすい」授業ができるでしょうか。それには
(1)授業がシンプルなこと。
指示が明確である。文字にして「10文字」ぐらいで指示が出せる教師ならよい。言っていることにブレがない。15秒以上の指示や説明はグドクドして分かりにくいのである。だから子どもは聞かなくなる。いつか反発するようになる。
(2)リズム
流れるように授業が進むことだ。全員がやり終わるまで待つ授業はグチャグチャだ。
(3)テンポ
授業にスピード感があるということである。小さなステップをポンポンやっていくと、スピードがあるのに、ゆったりとしているという感じになる。
(4)授業の内容が知的である
本が好きで、本を買って読んでいる教師でなくては、授業は知的にならない。本を読み、授業の研究をすることである。すばらしい教師は、自分からすすんで研究授業をやってみせる。
以上のような授業をできれば、知的権威があり、子どもを統率することができる。
すぐれた統率者はすぐれた教師であるといえる。孫子を参考にすると、つぎの五つが必要である。
(1)知的な授業ができること。できなければ統率する力は弱い。(知恵)
(2)正直でウソをつかない。約束を守り信用できる。(信)
(3)思いやり深く、子どもを包み込むようなあたたかさがある。(仁)
(4)必要とあらば、ひるまないで、進んでいく勇気がある。(勇)
(5)時には、けじめをはっきりつけ、叱責する厳しさがある。(厳)
これは、歴史が始まった頃から明らかにされている統率の原則である。自分自身を反省してみるとよい。
さらに現代で明らかにされている統率の行為は
(1)進むべき方向を持つ
目的、進むべき方向、理想の姿をはっきりさせる。これがないと、集団はあっちこっちを向いて、グチャグチャになる。
教師は、自分の心の中に、追い求める豊かな教育を描かなければならない。このために教師は多くの教師に出会って学ぶ必要がある。
(2)集団を運営していく「ルール」と「しくみ」をつくり、上手に作用させなければならない。
どのような授業のシステム、毎日の生活のシステム、ルールをつくるかは、極めて大事である。
(3)非常時に、すぐ対応しなければならない。
解決の方法を決断し、即座に実行することである。悪いのは、決断しないこと。遅い決断、間違った決断である。教師は決断できない人が多い。
(向山洋一:1943年生まれ、元東京都公立小学校教師、教育技術法則化運動代表を務めてきた。教師を退職後、TOSSインターネットランドの運営に力を注いでいる)
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