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ダウンしやすい教師の傾向とは何か、ダウンしそうなとき、どうすればよいか

 教師のメンタルヘルスが深刻な問題になっています。文部科学省の調査によると、2013年度に精神疾患により休職した教師は5078人にのぼります。7校に一人の教師が休職した計算になります。
 加えて、休業に至っていなくても、メンタルヘルスに問題を抱かえている教師がたくさんいます。精神疾患でダウンする事態が、他人ごとではない時代になったのです。
 忙しいのが当たり前の毎日で、たくさんの人間関係のなかで仕事をしている教師のみなさんは、日々疲れの具合が強いのではないでしょうか。
 私の勤務先である近畿中央病院を受診した教師のデータをもとに、ダウンしやすい教師の傾向を見ていきます。
 受診者の61%が仕事上のストレスにともなう心の病気であり、34%がうつ病を中心とした気分障害をともなう病気でした。ストレスの要因で多いのは、生徒指導が31%、同僚・管理職との人間関係が23%、保護者対応が15%でした。
 生徒指導に保護者対応が絡んできて、同僚・管理職との人間関係も大変になるという連鎖が起こり、ストレスが増大して疲弊しやすくなるようです。
 具体的には、生徒指導担当(特に部長)、教務、クラブ活動主担当(中学・高校)50歳代になって全く新しい仕事をする、現実とのギャップに適応できない若い教師が多い。
 特に生徒指導担当教師が圧倒的に多い。学校全体が同じ方針で動かないと精神的に疲弊する。孤立すると倒れやすい。フォローやねぎらいがあると報われる。
 暴力を受けた教師が休業する率は高い。怖い思いをするとフラッシュバックを起こしたりするからです。この場合も、早めに同僚・管理職・医療機関の精神的フォローがポイントになってきます。
 研究指定を受けた学校の世話役の教師などが過労となり心身の変調をきたす可能性は大です。
 校種によって原因に差があります。小学校では、学年で動く文化が少なく、空き時間もほとんどなく、多忙ななかで相談相手もなく、子どものケンカ、保護者対応などが入ってくると、もうまわりません。
 中学校では部活動の指導で疲弊する教師が非常に多い。保護者のなかには、部活動がサービスだと知らず、やって当たり前と思っている人が少なくありません。がんばってもさほどほめられないことも消耗の原因になる。土日も休養がとれず、睡眠の不具合を起こし受診に至るケースは珍しくありせん。
 中学校では学年で動く文化があります。うまく機能していれば、いわゆる指導困難校のほうが、教師同士のスクラムが組めて人間関係が温かいので、生き生きしている教師が多いように見受けられます。
 高校は学校差があります。転勤により不安感を強く感じる。指導困難校を2校程度経験した後、進学校に赴任し、教科指導のプレッシャーと教師間競争にさらされると精神的に参るようです。
 教師は自分の気持ちを出さないぶん、身体の症状でその肩代わりをして、しんどくなるというタイプの人が多いと感じます。気持ちを出せないため、うつ気分などが改善しないのではないか、思われる教師も多く見られます。
 感じたことを自由に話すことで、うつ症状や身体のだるさが改善されることがあります。教師特有の他者に干渉しない独立の精神は、うまくいっているときはいいのですが、悩みや困ったときには、自分ひとりが煮詰まってゆき、事態を悪化させることがあります。
 教師が転勤し、新しい環境に慣れるのは、自分が思っているよりも気をつかいます。年齢が上がるほど大変です。精神疾患による休職者の約半数が、その学校での勤務年数が2年以内に休職にいたっていた、とのデータもあります。
 人生の転機と重なった教師も多く休業しています。例えば、家庭の問題(子育て、介護、借金、夫婦不和など)を抱かえている。2年以内に肉親を失った。自分の病気や家族の病気などです。
 こういったときには、管理職や同僚に事情を話して、一定期間は最低限の勤務にとどめておくと、メンタルヘルス不全に陥らなくてすむかもしれません。倒れてからでは、かえってもっと迷惑をかけるという発想も必要です。解決のめどがたたない場合は、信頼できる人に相談したり、各専門機関を利用したりするのも一案です。ためらわないことが重要です。
 残念ながら、人間ですから、精神的な病気による思考力の低下や人格の荒廃といったことは起こりえます。
 本人は努力をしているのに、物事がうまくいかなくて周囲から責められるケースのなかには、病気を発症している場合もあります。
 本人は病気に気づいていなかったりすることもありますが、家族や管理職・同僚が付き添い、専門医を受診するとよいと思います。
 もともと教師として適性が問題となる場合があります。人間である以上、起こりえます。本人が悪いのではなく、職業のミスマッチです。他の職種であれば充分に力を発揮する人もいます。
 近年、ベテラン教師の大量退職にともない、若い世代の大量採用の時代に入っています。転勤や学校内の調整、研修などで力量アップの試みをしたりしても、うまくいかないようでしたら、転職を考える自由もあると思います。
 疲れたとき、ダウンしそうなとき、進むのは前だけではありません。そんなときは、とにかくぐっすり眠って、身体をほぐします。マッサージや整骨院などで身体をほぐしてもらうことも、自分へのケアにつながります。
 教師のように人のケアをする対人サービス業についている人は、自分が思っているよりも消耗することが多いものです。こころがけて自分にも休養・栄養などのケアをしないと、自分が枯れてしまいます。自分に戻れる時間や場所を確保するようにします。
 信頼できる人に話をしてみることも、健康に生きる糸口になります。弱音や愚痴をいえる人をもっておくことは、大事なことです。自分の話や気持ちを受けとめてもらえるだけで、元気になります。本当に大事なことです。
 もうひとつ大事なことがあります。できないことは「できない」と言う勇気をもつことです。教師は、なぜか「できない」と言えない人が多いのです。
 それに、人に「頼む」ことが苦手な教師も少なくない。「自分でやるほうが早いし確実」という考えからのようです。頼むのは、他人を信頼してみるということなのです。人を信頼して任せて頼むことができると、自分への余裕も生まれます。
(
井上麻紀: 臨床心理士。公立学校共済組合近畿中央病院メンタルヘルスケア・センター副センター長。10年以上にわたり、学校教職員の専門病院で、教員に特化したメンタルヘルスケアや職場復帰支援をおこなってきた)

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