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教師が悩んでいるのは「子どもとの対応」「親との対応」「職場の関係」である

 「悩める教師を支える会」を作って、学校の中で教師の声を聞くと、一番多いのは、子どもとの対応のことです。子どもが変わった。教師が振り回され始めた。前ほど教師の指示がすんなり入らなくなったと、すごく悩んでいます。
 あともう一つ、教師の苦しみとして多いのが、親が変わったということです。親が協力してくれなくなった。例えば、子どもが恐喝をしたと親に伝えても「それでどうしたんですか。先生」と開き直ってしまう親もいます。
 学校を離れて相談を受けた場合、個人的に相談を受けると、多いのが同僚との悩みです。教師同士の関係で決定的に落ち込むということが非常に多い。特にこれは学校を休職、退職まで追い込まれた教師にすごく多いのです。
 あるいは他の教師とトラブルがあったことを管理職に伝えると「あんたはだいたい教師としての能力がないんだ」と言われると、もう自信をなくしてしまう教師もいる。
 教師の悩みは「子どもとの対応」「親との対応」「職場の関係」の、三つに問題があるということです。
1 子どもとの対応
 子どもとの対応でカーッとしたとき、そのまま出てしまったらよくないことが起きるので、そういう時こそ、一呼吸おいて心の余裕をって「自分を見つめる目」を持たなければいけない。
 そういうときほど、穏やかな雰囲気づくりをしていくクラス経営が求められます。例えば、「さん」づけをして言葉づかいを丁寧にしたり、間を取ったり、ヒーリング音楽を活用したりしてクラスの雰囲気をよくするだけでもずい分違う。
 毎朝5分くらい教室のなかで遊びを取り入れてみたり、休憩時間に遊びをしていると、「けんか」がたえなかったクラスなのに、教室が落ち着いてきた。
 今までは、問題を起こす子どもに「お前、何やってんだ」と、怒鳴ったりしていた。そうするとクラスの他の子どもたちもすごくストレスを抱かえていくんですね。
 子どもが何に傷つき、どこで苦しんでいるか気づいてあげる必要がある。そこから、子どもと共感しあえる教師の言葉や対応が生まれてくるのだと思います。子どもに苦しみ痛みに共感できない対応は子どもをいっそう傷つけたり、追い込んでしまう。
 イライラする子どもはどうすればよいか。イライラしっぱなしの子なんかいないから、イライラしていない瞬間に注目するとよい。これができるといいですね。
 問題児ばかりに注目するのではなく、普通の真面目な子や頑張っている子どもたちを取り上げ、周りの子を高めていく。時間がかかるがこのやり方でやっていくしかないなと思います。
 教師は子どもの行動が枠から外れることにこだわり過ぎていると思います。そのことに全力を注ぎ過ぎると、教師と子どもの間に対立しか生まれてこない。だから教師は疲れてしまう。
 私は、子どもは多少問題を起こしてもしょうがないと思っています。個々の問題は教育相談で対応しながら、一方では「子どものパワー」を授業や行事で創造性を生かし活用することだと思います。
2 親との対応
 今は親から教師との対話を求めてくることは少なくなってきています。ですから、私は意図的な工夫をしています。宿題プリントなど一か月ごとにまとめて返却するのですが、そこに互いに感想やコメントを書き合うようにしていくのです。
 子どもに問題があったとき、保護者に、こちらの意図することをわかってもらい、味方になってもらう努力をします。
 そのために、何か問題が起こった時だけに保護者に話をするのではなくて、常日頃から学級懇談会や学級通信の中で、自分の考えを知ってもらうと同時に「子どもたちは、こんなところで頑張っています」とか「お宅のお子さんはこんな感じですよ」というのを伝えていく必要があると感じています。
 子どものいい点を報告したり、親や教師が自身の悩みや生活を語り合うことも必要だと思います。そういう関わりが持てるようになった時、親も真剣になるし、子どもにも変化が現われる。
 小さい頃からの成長をみてきた親の、子どもの見方を教えてもらって、教師と親の視点を合わせて対応策を練り、その子どもを見ていく、という感じで保護者と接していく。親と共同歩調がとれたときの、子どもの回復成長ぶりにはめざましいものがあると思う。
 問題があって保護者が学校に呼び出されると重い足取りで学校に来られる。つらいと思います。子どもに個人的な指導をする場合は、できるだけ家庭訪問して、親と話すとよい。その方がいろいろな視点から話し合いができると思います。
 子どもも含めて親が「どうなりたい」と、思っているか。問題がどうであるかより、この問題が解決した姿がなんであるかが大切ですね。親としてはどうなったらよいか。
 それには、当面は何をしたらいいか。じゃあ、当面それで行きましょうかと。一回方向が定まると後はどんどん変化します。それで落ち着いてしまうということもあります。
 教師は低姿勢でいったほうがいい。冷静で低姿勢でいかないと続かない。とにかくほめるということです。
 親との関係で悩んでいる教師に、まず最初にするアドバイスは「親は簡単に変わりません」ということです。熱心な教師ほど、親を何とか変えようとする。「目の前の子どもたちに何ができるかに視点を変えましょう」と申し上げるんです。
 多くの教師がやってしまうことなんですけど、クレームをつけてくる親に正論で対応しようとすることです。親はキレてしまい、教師もキレる。そうすると悪循環のまま、ののしり合うことが多い。
 つまり、正しいことを言うかどうかは親との間でそんなに大切じゃないんです。まず「関係づくり」に徹しましょう。よく話を聞きましょう。話を聞いてうなずいて、この先生は味方なんだなあ、というふうに感じてもらうことが先決です。
 
「本当にお子さんのことを一生懸命に考えてくださっているのがよくわかりました。私たちはそのために何ができますか」というふうにもっていくとよい。もしかしたら学校のための戦力になってくれるかもしれない。
 だから、カウンセリングマインドというのは相手が責めてきたら、その力を積極的に利用する合気道の精神なんですよ。そういう精神は親との対応でも必要なのかなと思うことがあります。
3 職場の人間関係
 学級崩壊とか親との関係で悩んでいる教師も、それだけで休職や退職にまで追い込まれる教師はそんなにいないんですよ。むしろ「それはあんたの力不足だ。教師としての適性がないんじゃないの」と同僚や管理職から言われて、ものすごく自信を失ってしまった。そういうケースが多いと思います。
 力のある教師が管理職との折り合いの悪さに悩んでいる場合も多い。特に同じ学年の教師との関係がうまくいかないと、決定的に勤めづらい職場になってくる。
 前の学校でよく思われていた教師が転勤で次の学校に行くと、全然だめということもある。
 いつのまにか競争の雰囲気やシステムのなかで教師たちは生きているように思います。教師一人ひとりがバラバラになってきているかなという気がします。
 この学校でやりにくいと思っている教師は自分だけだと思っている教師が多いんですよ。私が「あの先生もちょうど同じこと言ってましたよ」とつなげていって、その学校で不適応を感じている教師が3人くらい集まると学校変革の機動力になったりします。
(
諸富祥彦:1963年福岡県生まれ、明治大学教授。カウンセリング心理学、心理療法、臨床心理学、学校カウンセリング、教師のサポート、日本トランスパーソナル学会会長、日本カウンセリング学会常任理事、悩める教師を支える会代表)

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