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学級崩壊の根本的な原因とは何か、どう考えて取り組めばよいか

 学級崩壊は、子どもの自由や個性を第一に考えてきたなかで起こっているのではないかと私は考えている。学ぶ自由を主張することは、学ばない自由も認めることであり、学級崩壊はその表れと考えることもできるのだ。
 子どもに自由にさせろと言いながら、学校は管理していないと攻撃されても教師としてどうしたらいいかわからないではないか。学校たたきをしてきた人たちは、学校をたたくことだけを考え、一貫性など考えていないようだ。まじめに取り組んできた教師は、いい面の皮である。
 社会と子どもの変化に教師や学校がうまく対応できず、ありたきりの授業、教師の指導力不足という指摘はまちがいではない。しかし、学級崩壊の根本的な原因は、子どもが変わってきて、我慢しなくなったり、他の子どもたちといっしょに生活することがむずかしくなってきていることによる。
 学級崩壊は社会のうねりと家庭の変化が根本のところにある。それは担任だけの力でなんとかなることではないのである。
 決定的な問題は「日常」が何かをきっかけにしてあっというまに崩れてしまうという点にある。その変化の原因が、私たち教師にもはっきりつかめず、毎日が綱渡りをしているような危うさのなかにあると言っていい。学級の中のたった一人か二人が枠を越えて振る舞いはじめると、クラスの秩序がなくなり学級崩壊が起こる。
 最近、教師の多くは、子どもに押しつけたり、抑えたりすることはよくないと思っている。ひょっとすると教師-子どもという上下関係に教師自身が耐えられないのかもしれない。だから、つい説得しようとしてしまうのだ。 
 しかし、説得に踏み出したとたん、教師と子どもの関係は五分と五分になってしまう。最近、小学校では、叱ってはいけない、ほめることが大切だ、怒鳴るなどもってのほかだという考え方が支配的である。しかし、教師にある程度の「怖さ」がなければ、子どもは言うことを聞くはずがない。
 教師の言うことを聞かないというのは、子どもにとっては面白いのだと思う。わあわあやって授業妨害するのも楽しいだろう。トイレへ行くのだって遊びなのである。最近の子どもたちは、自分の感情や欲望を抑える訓練をほとんど受けないで小学校へ入ってくる。そうした子どもたちのふくれあがる欲望を言葉で説得して抑えるのは不可能である。力で抑えつけなければいけないのである。
 教師は、子ども集団を相手にし、集団をどうつくるかということを第一に考えるべきである。教師はその意味で、組織者なのである。押しつけや強制も必要である。
 一年生のときから、教師と子どもはちがう、学校は自分の好きにはならないところだ、学校と家とはちがう生活の形があるのだということを、教師がみんなで根気よく教え込む必要があるのだ。
 さらには、そこからはみ出す子どもには、厳しく対することが必要だろう。それは子どもとトラブルを生み出すかもしれないから、どこまで何ができるかは一律には言うことはできないが、状況を見ながらやっていくしかない。
 学級の荒れが起きたとき、しなくてはならないことは、
(1)
子どもの現状を冷静に見るなかで、事態が担任一人でなんとかできることではないことを確認すること。
(2)
教師はこれまでの教師としてのメンツとプライドとかは捨て、できることは何でもやる必要があるが、できないことは率直にできないと発言し、助けを求めることから逃げてはいけない。
(3)
個人でなんとかとしようと思わず、学年や学校としての集団性をつくる努力をし、一年間、共同で問題に取り組もうとしてみること。
(4)
子どもの荒れが学校だけが原因で起こっていることではないことを宣言し、現状をありのままに親や社会に知らせること。
(5)
とくに不安定な子どもについては、親に様子をしっかり報告し、一時的に教室から離すことも相談しなくてはならないだろう。
(6)
校長が行政の末端としての立場しかとらず、現場のリーダーとしての責任を回避する場合は、校長と直接ぶつかることも必要だろう。校長のメンツより、現実の荒れる学級をどうかするほうが大切なのは言うまでもない。
(河上亮一:1943年東京都生まれ、埼玉県公立中学校教諭、教育改革国民会議委員、日本教育大学院教授を経て、埼玉県鶴ケ島市教育委員会教育長、プロ教師の会主宰)

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