学級崩壊・学年崩壊し、子どもの願いから再出発して落ち着きを取り戻した
子どもたちが急に荒れ始め、家庭科室より包丁を取り出す事件も起きました。小学校高学年の全クラスが同時に崩壊し、運動会の予行も成立しないほどの荒れようで本当に大変でした。
絶え間ない私語、奇声。騒ぐ、はしゃぐ。些細なことでトラブルが起きる。いやがらせ、いたずら。机の中やロッカーに物が溢れ散乱している。時間にルーズ。机に落書きといった状態です。
子どもたちのなかには、朝食も満足に食べさせてもらえない子、洗濯もしてもらえない子、お金だけを握らされ、夜まで一人ですごす子、全く手をかけてもらえず愛情に飢えている子など、様々な生活を背負いながら「荒れる、すさむ」という表現で、私たち教師に訴えていたのです。
学校も教師も親も否定し、生きていることへも絶望した子どもたちや、配慮が必要な子どもを相手に、毎日が闘いで心身ともクタクタでした。
学校の研究テーマを「子ども研究」に切りかえ、「子どもが安心感のもてる学校、ゆったりとした学校、子どもの願い・思いから出発する学校」を、めざしました。
そのなかで、指導方針を「楽しい学級、わかる学習、豊かな人間関係をめざす」とし、
(1)生活リズム・生活習慣の確立、身辺の自立を早期にめざす。
(2)多様な体験やとりくみを組織し、手先の器用さ、物事を見通す力、段取り能力を育てる。
(3)楽しくわかる学習素材、できる喜び、達成感のもてる教材の活用。
(4)科学的系統に基づく大胆な教材の精選とスモールステップ学習。
(5)「焦らず、慌てず、怒鳴らず」(3つの「ず」)じっくりと、わかるまで、できるまで、待ち寄り添う姿勢をこころがける。
(6)失敗やつまずきを学級の宝とし、どの子も「安心感、信頼感」が持てるように、こころがける。
(7)「助け合い、励まし合い、認め合い、教え合い」(4つの「い」)を、取り組みの中で力を育てる。
(8)子どもの「願い、思い」に寄り添い「共感と共同」を育てる。
(9)「民主的、自治的」で、みんなが活躍するクラスづくりをめざす。
全国のレポートを読み合い、子どもの声を聞き、全校の子どもからアンケートをとりながら、何度も全教職員で議論を重ねました。
何よりも困難だったのは、教師集団の意思統一、まとまりづくりです。全教職員でつくりあげることは大変なことでした。担任は自分の弱さを知られたくないので出さない。かくそうとする。プライドが許さない等、いろいろの課題をもっています。
それを乗り越えるのが大変なのです。いたわり、励まし、癒しのない学校職場では荒れたクラスの担任は生きていけません。
さらに、保護者の力を借りながら、ようやく落ち着きを取り戻したのです。
でも、子どもたちの苦悩の根底にある心の声を聞いたとき、涙が出てきました。子どもたちに共感できたとき、叱るより健気に生きる子どもたちに、いとおしさを感じられるようになりました。
(樋口清隆:東京都公立小学校教師)
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