ちょっとしたことでも「いじめだ」と言いたてる保護者にどう対応すればよいでしょうか
「いじめのサインを見逃すな」といわれていることは、情報を軽視するなということでもあります。耳に入った情報を聞き流さないことは、鉄則でもあります。
いじめ防止のために 「子どもの人間関係をつくること」「状況をよく把握すること」「情報を軽視しないこと」の三つは、いじめ防止のためにだれでもが心がけたいことです。
ところが保護者からの情報について、これを重視する教師ばかりでないのが教育界の実情かと思います。「保護者は、ちょっとしたことでも、すぐに『いじめ』だと言いたてる」「保護者は余計なことばかり言い出す」などと、教師が愚痴ることや、腹を立てることが無いとは言い切れないでしょう。
保護者に誤解や思い過ごしのあることも事実でしょう。だからといって保護者からの情報を「ああ、そうですか」と、聞き流したり「心配することはないでしょう」と、放置していいでしょうか。
聞き流したり、放置することは、対処の甘さです。誠実さに欠けるとも受けとられかねません。とにかく、事実を確かめ、状況を把握しなければなりません。確かめたり、把握した状況を保護者と連絡し合うのです。
そして、保護者が誤解しているのなら、事情や状況を話して、誤解を解くように処置しなければならないと思います。
こうした話になると「忙しいのに、仕事がまた増えた」「厄介だ」と、教師の口から不満も出るでしょう。一本の電話によって生じた突発的用件で、教師の仕事の手順は狂ってしまいます。
しかし、情報を入れた保護者にすれば、大火にならないうちにと、知らせてくれたのでしょう。このことがわかる教師には、いつでも情報が入るし、わからない教師には情報をいれても無駄と、いつか情報を入れる人はいなくなります。
「面倒だな」と表情に出してはならないし、「忙しいので」と口にはしないことです。もし、誤解であるなら、事情を説明した方がよさそうです。それをしないで「あれは間違ってます」とだけ言ったのでは納得しないでしょう。
古くから「火の無い所に煙は立たない」と言うし、いじめの事実はなかなか発見しにくいものなのです。ですから、念には念を入れて、状況把握、事実の確かめは続ける必要必要もあるでしょう。
教師として大事なことは何でしょうか。いじめられている子はさぞ辛いだろうと思える心や構え。悪いことは許せないとする気構え。保護者と手を結ばなければ子どもは育たないと確信することです。
もちろん、手を結ぼうとしても、学校に足を向けず、教師と手を結ぼうとしない保護者もいるでしょう。そうなれば、根気強いこと、忍耐強いこともまた、教師に大切なことではありませんか。
(飯田 稔:1933年生まれ。千葉大学附属小学校に28年勤務、同校副校長を経て、千葉県浦安市立浦安小学校校長。千葉経済大学短期大学部名誉教授。学校現場の実践に根ざしたアドバイスには説得力がある)
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