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今や学校のクレーム対応は、企業と同じような対応をすべき時代になった

 私は毎日さまざまな相談を受ける仕事をしている。そんななか、教師から保護者対応に関する相談が増えてきている。「こういう保護者に、どう対応すればよいか」そんな相談が増えてきているである。
 内容を聞くと「担任をかえてほしい」「今のクラスの友だちと相性が悪いので、クラスを替えてほしい」といった無理難題の要求をしてくる保護者が増えている。以前にはなかった相談である。
 いくら保護者からの要求であっても、学校としては、できないことはできないと返答するしかない。ところが「できません」と言うと保護者がものすごい勢いで怒りだし、あっという間にエスカレートし、担任の「力量がない」「問題教師だ」などと個人攻撃に転化し、さらに校長への個人攻撃へと転化するというのだ。
 おさめようとしてもおさまらない、何度話し合っても解決できない。そして、いつの間にか教師個人の誹謗中傷へと姿を変えてゆく。「不倫している」「借金を抱かえている」「生徒にセクハラしている」などの事実無根の誹謗中傷が、メールやホームページへの書き込みなどによって保護者間に流されるのだという。もう名誉棄損の範囲である。
 しかし私がとても驚いたのは、教師たちがそうした保護者たちによって心身共に疲労し、心の底からおびえてしまっている、という事実であった。
 考えてみれば、教師は非常に無防備だ。連絡先を教えている。だから、へたをすれば24時間、保護者対応を強いられてしまうこともある。そして保護者との信頼関係を失ってはならない、という責任感によって、事態が悪化しても誠実に対応することで、何とか解決しようと努力していた。
 教師たちがどれだけ誠意をもって対応しようとも、事態はおさまるどころかエスカレートするばかりである。「訴えてやる」「マスコミに言う」などの言葉に心底おびえ、「謝れ」という保護者の言葉に、繰り返し謝り、それでも収拾がつかない事態になる。教師は人生の危機を感じていた。そして最後に、私のところに相談にやってくるのである。
 こうした保護者にとりつかれてしまった教師たちの多くが、精神的に追いつめられ、うつ状態に陥ったり、燃え尽き、休職に追い込まれているのも全国共通の事情なのだ。
 私は思った。まず学校の教師たちに教えてあげなくてはならない。それは保護者という名の「クレーマー」なのであって、学校がすべきことは「保護者に対する誠意ある対応」や「丁寧な謝罪」ではなく、「クレーマー対応」なのだ、ということを。
 クレーマーに謝る理由がないのに、絶対に謝ってはならない。「謝れば許してやる」などの言葉は信じてはいけない。謝った時点でこちらの非を認めたことになるのだから、要求はエスカレートしていく。
 クレーマーの対応の基本は、毅然とした態度をとり続けるということである。できないことは、学校として「そんなことはできません」と明確に返答することである。金銭の要求、「担任かえろ、辞めさせろ」といった荒唐無稽な要求は、即座に否定することが必要である。特別扱いは一度でもしてはいけない。
 曖昧な返事は絶対言ってはいけない。後々「やると約束した」という話になる。言った言わないが始まると、クレームは長期化し、エスカレートする。
 もちろん、否定しきれない内容もある。「先生の言葉に、子どもが傷ついて、学校に行かれなくなった」などである。こうした苦情の扱いは難しい。親は教師に謝罪しろ、責任をとれと言う。
 ここで重要なのは、問題の本質がすりかわってしまわないことである。謝るのであれば、子どもに対してである。責任は子どもが元気に学校に通えるようにすることである。その目的は、親と教師は一致するはずである。双方が子どものことを思っているのなら、話し合いを重ねていくことは必要である。
 子どもと話し合うためには、親に対する謝罪は必要かもしれない。重要なのは謝罪は一回で済ます、ということである。謝罪は非を認めての謝罪ではなく、今後の話し合いを始めるためなのだ。
 
「謝り方が悪い」など理由が変化したら応える必要はない。教師を傷つけ自分たちの思い通りにしようとするクレームなのだ。「今回のことに関する謝罪はすでにいたしました」と断言すべきである。クレームをエスカレートさせない重要なポイントは、一つの要求を一つひとつ確実に「終わらせてゆく」ことである。
 こうしたクレームは絶対に個人で対応してはならない。精神的に追いつめられてしまうからである。確実に相手のペースに巻き込まれる。個人で対応できる問題ではないのだ。学校は組織として対応しなくてはならない。
 
当事者になっている教師に事実確認をし、学校組織としてどう対応するかを検討したうえでなければクレーマーと対峙してはならない。最も必要なことは教師間の信頼関係である。
 教職員全体で情報を共有し、意識を一致させて、被害にあっている教師を支える。被害者の教師も安心できる。クレーム対応は、笑い飛ばすくらいでなければやっていられない。
 これ以上、熱心で優秀な教師たちが、教師という職業に絶望し、疲弊し、心身を壊したりして辞めていってしまうことは、絶対に子どもたちにとってマイナスであり、日本にとってもマイナスでもあるのだ。
(
山脇由貴子:1969年東京生まれ、東京都児童相談センター・児童心理司を経て、山脇由貴子心理オフィスを開く。講演を行うなど国内外を問わず幅広く活躍。また、新聞や雑誌への寄稿を通し、臨床現場の生の声を発信し続ける)

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