教頭に求められる心構えと実践とはなにか
教頭は学校に出勤してから退出するまで気が抜ける立場ではない。教職員はもちろん、子どもをはじめ、多くの保護者や様々な来訪者から、教頭の姿、行動や言葉の端々まで注目されている。
教頭はみんなから頼りにされているのである。人間として、教師として、さらに教頭としての自覚をもって、誠心誠意勤務することである。服装や身だしなみは、常に清潔で、品位を保ってほしいものである。
外部から電話を受けた時の第一声は非常に大切である。まず「○○学校・教頭の△△です」と、明るくはっきりと名乗ること。電話は学校の声の窓口である。応答は明るく、元気よく、明瞭かつ、丁寧をモットーとしてほしい。事務職員にも指導の必要がある。
朝は、子どもの欠席や遅刻の届け、教職員からの休暇願いなどの電話が頻繁にかかってくる。担任や校長に確実に伝達する。
その他、苦情電話や、情報提供の電話がある。その対応によって話がこじれて問題が大きくなってしまうこともある。だからこそ、親切、丁寧に対応しなければならない。すぐに対応する姿勢と誠意が必要であり、必ず校長に報告する。
学校には様々な人びとが出入りする。気をつけることは、服装や態度で相手を判断したり、扱い方に差別をしてはならない。校長室に案内すべきかの判断も必要となる。湯茶の接待の気配りも必要である。
事前に予定されている公的な来訪者の場合は、玄関入口には、案内図などを示しておく。役職、名前を調べ、下駄箱に名札を表示する。
教頭にとって大事な心構えの一つは、教頭が勝手に判断して、教職員に指示してはならないことである。どんな些細なことでも校長の考えと違っては、職場は混乱する。一つひとつ、校長の指導、指示を仰ぐという基本的なことを常に心してほしい。
ただし、校長不在で連絡がつかない場合は、事態を把握し、決定しなければならないこともある。判断しきれない時は、教育委員会の指導を受ける。
教頭の中には「教職員が、私に相談しないで、校長に直接行ってしまう」と嘆く例がある。これでは、教頭としては失格である。日頃、この教頭では頼りにならないと思われていたり、最終決定者は校長だから、校長に相談してくれ、と責任逃れをしていて、信頼感が薄いからだと思う。
教頭が、教職員の日常生活に「心の眼」を向け、気配りをして、時に声をかけ、相談者として意欲的に接していれば、好ましい人間関係が醸し出され、自然と公私にわたり相談に来るようになる。
また、教頭は校長決裁を求める場合、教頭として、自分自身の見解や意見を必ず持って臨まなければならない。校長から「きみなら、どう考える」と問われて、返事に窮するようでは、校長の補佐役として問題である。
教頭は教職員と校長との単なるパイプ役であってはならない。教頭としての哲学、見識をもつことである。
教頭になるために、様々な研修を重ねてきているが、さらに、教頭実務を含め、一層研修を深め、人間として高める努力をしなければならない。私はつぎのような努力をした。
1 日々の記録をつける
教頭になった日から、私的な日記(記録)をつける習慣を薦める。教頭は多忙な日々だが、その日の出来事、処理方法、改善への感想など、箇条書きでも良い。これが後日、役立つ。
行事など一年前の事柄の細部までは、なかなか思いだせるものではない。学校評価にも、職務遂行の向上のためにも、大変貴重な資料となる。記録は大切なものである。
2 法規に強くなる
管理職は、教職員の管理はもちろん、教育活動の円滑な推進のために、法的根拠を理解し、身につけておく。法規、例規集を座右の書とし、疑問に対して「だろう」ではなく「根拠はこうだ」と、明確に答えられるよう、疑問に思ったことは、すぐに調べて確認する習慣をつける。
3 視野を広げ、教養を高める
教頭の研修は自校の教育課題に対して、どのように改善することが必要か、ということを意識することから始まる。子どもの生活の様子、保護者とのかかわり、PTA活動などからも、世の中の確かな変化と、望まれる教育課題が発見できる。
さらに、国内外の教育事情はいうに及ばず、様々な社会事象をはじめ、世界の政治、経済、社会、宗教、文化など多方面に視野を広く持ち、学習を深める必要がある。多忙でも、自らの見識を高める努力が大切である。
4 教頭職として自ら高める
とかく忙しさにまぎれて、校内にとどまりがちではあるが、教頭職に精通するために、地域や全国の教頭会を大いに活用しなければならない。資質を高める積極的な意欲があれば、校長も研修に参加することを応援してくれるはずである。教頭として自ら高めるには
(1)健康管理と体力の維持、強靭な精神力
(2)社会的常識と人間的魅力
(3)教職員やPTAなどに指導助言できる識見
(4)情報収集能力と組織力、企画力
(5)実務知識と事務処理能力
(6)若い教師に研修意欲の喚起と幹部職員を育成する能力
(7)自らの教育観、学校観、教師観、子ども観などの確立と先見性
おおよそを、あげてみたが、何といっても「健康」が第一である。健康を害して、志なかばで涙をのむ人も少なくない。自分なりに健康維持と増進には心してほしい。特にストレス解消法を持つことである。
私は、ストレスや疲労感があるような時は、腹式呼吸によって心身の安定を得るようにしている。腹式呼吸を5~10回繰り返し「気持ちが落ち着いている、大変心地よい、心地よい」と自分に言いきかせると、本当にゆったりとした落ち着いた気持ちになる。
頭に血がのぼるような時、疲労したと思った時、だまされたと思って、一度ためしてほしい。
(藤ヶ谷敏明:1929年東京都生まれ、元東京都公立中学校教頭(10年間)・校長(6年間)、教育相談員等)
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