« 教師が保護者に信頼されるためには、どのように接すればよいか | トップページ | 学級で生徒同士がけんかしケガをしたとき、保護者を伴う和解まで具体的にどう対応すればよいか »

いじめの「予防や治療指導」の極意とは

1 いじめの予防
 いじめの最大の予防は、すべての生徒が明るく楽しく元気よくのびのびと過ごせる学級づくりをすることだと私は思っています。日常の学級づくりが即いじめ予防の方策だということです。
 生徒が尊重されており、学校生活が充実していれば、誰かを傷つけ、いじわるしてやろうとは思わないからです。いじめ予防の指導をするには
1)教師の人権意識を高める
 いじめは人権侵害である。予防には生徒の人権意識を高めることが大切です。そのためには、まず教師が人権意識を高めることです。そのために
(1)
言葉づかいをていねいにする
 生徒を一人の人間として尊重します。生徒を「さん」「くん」付で名前を呼ぶ、丁寧語で話します。生徒に呼ばれたら「はい」と返事をする。
(2)
大声で叱責したり、皮肉を言ったりせず、穏やかに丁寧に話す
 大声の叱責や皮肉はいじめにつながる心性を助長します。
(3)
毎日一度は生徒の名前を呼ぶ
 朝の健康観察などで、私は生徒と目を合わせて笑顔で名前を呼び、笑顔で反応します。短いコメントすることもあります。「あなたはこの教室の大切な一員だ。私はあなたが大好き」という思いを一人ひとりに伝えます。生徒の心を安定させることにつながるのです。
2)秩序ある教室をつくる
 秩序のない教室では、何が起こるかわからず生徒の心は安定しません。教師が教室で守るべきこと、やるべきことの基準をはっきり示します。
(1)
教室の環境を整える
 教室にゴミが落ちていたり、掲示物が破れたりしている、乱れているクラスほど、生徒の言動が荒く、いじめが起きやすかったりします。
 やることは簡単です。終学活後、日直の生徒と一緒に机を整頓し、教室の隅を箒で掃き、黒板を綺麗にし、黒板下にチョークの粉が残っていれば雑巾がけをし、掲示物の四隅がきちんと貼られているか点検するのです。朝、生徒の登校前にもう一度点検します。
(2)
学級を規律正しい集団にしつける
 規律正しい集団にすることで、教室に落ち着いた雰囲気が生まれます。生徒は安心感が得られ、学級に温かい雰囲気をもたらします。いじめ防止につながると考えています。
 私は規律ある授業になるように「発表者が話をしている時は、黙って聞きます」「発表はみんなに聞こえる声でします」「余計なものはしまいます」「ルールを守ることで、安心して暮らせる、温かい学級になるんだよ」などと指導しています。
 叱責や禁止ではなく、ほめることで規律をつくり上げます。生徒の望ましい言動に教師がすかさず評価することで、望ましい言動をするようになっていきます。「・・・・してくれてありがとう」と感謝の言葉を添えます。納得して規律正しさを身につけていきます。
(3)
小さな差別的な言動を見逃さない
 授業中に、ある生徒が発言すると悪意のある笑いが起こることがあります。こういうとき、「差別は絶対見逃さないぞ」という思いから説諭すると迫力が出ます。このような教師の態度が、学級の中に「いじめはダメだ」という正義が通る空気を醸成していくのです。
3)
教師の目が届かないことがあると心得る
 教師がいくら注意しても教師の目が届かないところにいじめがあるものです。そこで
(1)
毎朝、出勤したらすぐに、生徒の靴箱をチェックする
 靴箱は生徒の心の健康が出るものです。状態をチェックし、靴をきちんと収められない生徒に「何か気になることある?」と声をかけます。
 日常から生徒のちょっとした心の変化を敏感に感じ取る、きめ細やかな見取りが、いじめを芽のうちに発見されるために大切です。
(2)
定期的に「いじめ・悩み調査」を行う
 月に一回ほど「いやな思いをしていないか、周りでつらい思いをしている生徒がいないか」を調査します。「なぜ、うちのクラスだけ」とならないために、学年単位でもかまいません。
4)
授業の中で生徒同士のかかわりを増やす
 授業でできることは「生徒一人ひとりの自尊感情を高め、横のつながりを強くする」ことです。
(1)
全員が参加できる授業を行う
 私はまずは、全員を起立させて必ず音読します。教師が読んだ箇所を追い読みするのです。どの生徒でもできます。
(2)
授業の中で生徒同士が関わり合う場面を意図的につくる
 生徒同士がお互いのよさをわかり合えば、いじめは起きにくくなります。まずはグループ(4人)になって教科書を一文交代で読みます。教師の簡単な問いに対して、全員に意見をもたせた後、グループでお互いに説明しあったりしてもいいでしょう。
 このような簡単な活動であれば、授業中に5回も6回も組み込むことができます。生徒同士の心のつながりをつくる基礎になっていくのです。そのうえで、学活などで「いいところ探し、プチお悩み相談」のような活動をグループで行います。
2 いじめ治療
 いじめの治療は迅速かつ慎重に行わなければなりません。さらに継続的に行います。大切なのは「学級全員に当事者意識をもたせる」ことです。全員でいじめをなくしていこうという雰囲気をつくっていきます。
(1)
起きた事実を確認して指導に入る
 いじめや生徒指導では、事実を確認し、事実に基づいて指導していくことが大切です。
 「いじめ・悩み調査」を行った後、確認する順序は、被害生徒→周りで見ていた生徒→加害生徒、と聞いていきます。ここで大切なのは、加害生徒に先入観なしに「○○していたことを見た人が何人もいるが覚えがありますか?」と必ず事実を確認し、そのうえで指導に入るようにします。
(2)
いじめの事実を明るみに出し、学級全体の問題であると意識させる
 いじめは、たいていの場合、教師には隠し、生徒たちの多くは知っています。「卑怯な隠しごとを許さず、正義を貫く」という教師の姿勢を示すという意味で「クラス全員が知る」ことが大切だと思います。全員が当事者であることをはっきりさせます。
 そのうえで、まず道徳授業をして生徒が感想を書きます。後日、その感想文をグループで回し読みをして、ワークシートを配り授業を行う。
教師「人から、されたら嫌だなと思う人は立ちます。『悪口を言われる』、『死ねと言われる』・・・・・・・」(1項目ずつ区切って起立をさせる)
教師「今読み上げたクラスは明るいクラスですか。明るいと思う人は○、明るくないと思う人は×を書きなさい」「では、○の人起立。×の人起立」
教師「明るいクラスにしていくために、どんなことをしていけばいいと思いますか。頑張りたいこと、こうしてほしいことを書いてください」
 3分ほど書かせた後、グループに分けて書いたプリントを回し読みし、仲間のプリントに励まし文を書かせる。
教師「先生はいつも教室にいることはできません。明るく笑顔あふれる教室をつくるのは、先生でなく、あなたなのです。みんなの力で明るい教室をつくっていきましょう」 
この授業に、私のいじめ治療法が凝縮されています。
(
海見 純:富山県公立中学校教師)


|

« 教師が保護者に信頼されるためには、どのように接すればよいか | トップページ | 学級で生徒同士がけんかしケガをしたとき、保護者を伴う和解まで具体的にどう対応すればよいか »

いじめの指導」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/173207/64569439

この記事へのトラックバック一覧です: いじめの「予防や治療指導」の極意とは:

« 教師が保護者に信頼されるためには、どのように接すればよいか | トップページ | 学級で生徒同士がけんかしケガをしたとき、保護者を伴う和解まで具体的にどう対応すればよいか »