三学期をどう出発すれば、学級づくりは、有終の美を飾ることができるか
三学期は学年の終わりである。「終わりよければすべてよし」と言われるように、三学期の結果がよければ「有終の美を飾る」ことができ、この年度は成功したといえる。
三学期は授業日数も短く、多くのことは望めない。つぎの三つの重点課題をおさえたい。
(1)四月にたてた目標をにらんで、一年間の学級づくりをまとめる活動をすすめていく
たとえば「楽しい学級をつくる」という目標をたてたとしたら「楽しかった」という満足感に充ちた活動によって締めくくる。「自主的な学級をつくる」という目標だったら「やったぞ」といえる成功感、成就感を共有できる活動によってまとめ、有終の美を飾るというようにである。三学期に実現できれば、目標達成ということになる。
(2)学年に求められる学力を定着する
この学年で教えるべき教科内容を教え、かつ、一人ひとりの子どもに当該学年に求められる学力を定着する授業を進める。進度を消化する授業ではなく、当該学年の基礎学力を身につけるようにする。
その身につけるべき学習事項については、子どもたちに、たとえば「これだけのことを身につけて進級しよう」と具体的に示し、子どももまた意欲的にとりくむよう励ます。
(3)四月に新しい学年に進級しても困らない生活能力、自立的な能力を育てる
たとえば、小学校五年生の教師は「自分のことは自分でできるようにする」として、つぎのような具体例を示していた。
起こされないでも、自分の力で起きる。勉強しろと言われなくてもやる。学校のしたくは自分でやる。使ったものはかならず元の場所に戻す。自分の部屋の掃除は自分でする。毎日、家の手伝いをする。
このなかで、まだできてないことはなにかをあげ、年度末までのあいだに、できるようにするという、取り組みである。ただし、子どもの自立は家庭のしつけにかかわることなので、保護者の協力が必要である。「家庭でしっかりしつけてください」と家庭の責任に委ねては、保護者の支持をえることはできない。
学級PTAで、たとえば「どうしたら、わが子が起こさなくても、自分の力で起きるようになるか」を話し合い、経験を交流するといいだろう。
なお、三学期にびっくりするような事件が起きることがある。一、二月にその危険性がある。それは突然やってくる。実際はおこらないかも知れない。しかし、心の準備だけはしておくといいだろう。
たとえば、いじめや万引きが起きるというようにである。けっして落胆して、それまでの意欲がぷつんと切れて「もう知らん」と投げ出して「あと何日」と日数を数えて年度末を待つということのないようにしたい。事件を学級づくりの最後のやま場とみて、いつもと同じように力をつくして取り組むのである。
学級は一月くらいまでは、だらだらと低成長が続くが、この最後のやま場を越え、二月後半から三月にかけて、ようやく子どもたちが高度成長期に入るのである。
子どもたちが高度成長期を迎えられるかどうかは、ひとえに、この一月のやま場の処理にかかっている。この覚悟をきめて、三学期を出発するのである。
(家本芳郎:1930~2006年、東京都生まれ。神奈川の小・中学校で約30年、教師生活を送る。退職後、研究、評論、著述、講演活動に入る。長年、全国生活指導研究協議会、日本生活指導研究所の活動に参加。全国教育文化研究所、日本群読教育の会を主宰した)
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