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保護者や地域からイチャモンが急増し教師は疲れ果ててしまっている、どうすればよいのでしょうか

 文部科学省が実施した教職員の勤務実態調査(2006)によると、一日の労働時間は11時間(休憩時間は9)、残業が2時間、自宅へ持ち帰り残業が35分です。給食の時間でさえ、教師にとっては貴重な業務時間。クラス全員分の連絡帳に目を通しながらメモし、片手でパンをかじる。これが現実の姿なのです。
 
「おまえとこの生徒がマンションの玄関でたむろしているぞ。早く来て注意せんかい」と言う電話がかかってきたら、教師たちはすぐに飛んでいきます。 
 
「うちの子、最近元気がないねん。学校で何かあったんやろか」という相談があれば、話し合いに出かけます。
 こうした目のまわるような日々は、教育にかける情熱や、子どもとふれあう喜び、そんな根っこからの教師魂が支えているのです。
 けれど、現実は過酷です。年間の病気休職者が8069人、うち、精神性疾患による休職者が4995(文部科学省調査 2007)という現実が、それをはっきりと物語っています。
 世間には学校に対する誤解や偏見がたくさんあります。学校知らずといえるかも知れません。教師たちの精神的なしんどさは、ギリギリのところまできています。でも、いまやそれも難しい状況になってきています。
 国からやつぎ早に降りてくる、場当たり的な「教育改革」は、確実に学校から活力を奪っています。
 さらに、学校はこの20年あまりの間、じつにさまざまな荷物を背負わされてきました。世の中のあらゆる問題の原因が、すべて教育にあるかのように吹聴する一部の政治家やマスコミによって「学校がやって当然だ」という意識が急速にふくらみました。
 たとえば「おい、四丁目の道路に猫の死体があるぞ。子どもの通学路だから何とかしろ!」
 かつて、家庭や地域社会で対応していたものが、すべて学校に求められる構図になっています。それらは本来、学校の守備範囲を超えた領域のはずです。もしも、断ろうものなら徹底的に叩かれる。
 まさに「学校はゴミ箱、教職員はサンドバック」なのです。そうした状況のなか、学校や教師のゆとりと保護者と向き合う気持ちは急速に低下しています。
 実際いま、学校はこれまで考えられなかったような要求の前にうろたえています。
「子どもがケガをさせられて休んだのだから、相手の子も休ませろ」
「担任の能力が低いから、うちの子が非行に走った。担任を変えろ」
「校庭の砂ぼこりで洗濯物が汚れる。なんとかしろ」
「息子が窓ガラスを割ったというが、割れるようなガラスのほうが問題だ」
 すべて本当の話です。学校にもどうしようもできない無理難題(イチャモン)の要求が急増しています。
 そもそも「善意の集団」というレッテルが貼られた学校は、必死になって対応をする。その結果、学校も教師もくたくたに疲れ果ててしまっているのです。
 消費者意識が急速にふくらんでいます。けれど、果たして教育はビールと同じような商品と考えてよいのでしょうか。
 教育においてサービスの受けてである子どもと保護者は、一方的な消費者ではないのです。子どもと保護者と学校は、いっしょになって教育の満足度を高め合うパートナーなのです。
 けれどいま、その事実がまったくかえりみられず、学校は消費の対象に変わろうとしています。保護者と教師のコミュニケーションが薄まり、消費者意識の高まりから間違った関係性がつくられようとしています。そこから保護者と学校のトラブルが発展していきます。
 教育の主人公は、子どもたちです。いまこそ、私たち大人がその事実をしっかり胸にきざみ直しませんか。保護者も学校も地域もまっすぐ子どもを向いて、手を取り合おうではないですか。
 そのためには、保護者と学校・教師が何らかの共同作業をすることです。まず、これが重要だと私は思うのです。
 連携するためには、まず学校の姿を保護者がきちんと理解すること。それが前提条件として必要なのではないか。
 そういう思いから、大阪大学の私の研究室が、大阪府吹田市の片山小学校にお願いして、保護者のための学校ガイドブックをいっしょにつくりました。
 ガイドブックの内容は、たとえば「学校でケガをしたときは、どう給付金を請求すればよいか」「忌引きは何日間欠席できるか」「通知表の評価は何を基準にしているか」といった、知っているようで知らない学校の情報を掲載しています。
 いまの学校は保護者のみなさんが通っていたころとは相当にさまがわりしています。その実像を知ることで親はまず安心するし、学校も知ってもらうことで教育活動をスムーズに進められる。なにより、学校ガイドブックづくりの共同作業の過程で保護者と学校の相互理解が深まり、ともに手をつなぐきっかけになるのではないかと期待しました。
 私たちはPTA、教職員のみなさんといっしょになってつくりました。「学校の先生って、楽な仕事だと思っていたけど、違うんですね」と、何かすることで、PTAのみなさんもはじめてわかったと言います。
 職員室はいつも戦場のようにあわただしい。教師たちはしじゅう走っていて、座っている姿を見たことがない。その現実を肌で知ったのです。近づかなかったら、偏見と先入観で誤解したまま終わったことでしょう。
 いまでは、学校ガイドブックは「学校ナビ」として全国にひろがりつつあります。大事なのは楽しんで作成するということです。つくらされるものではありません。「できたらいいよね」という気持ちで無理をしないことが大切です。
 学校につどう関係者(子ども、保護者、教師など)みんなで「いっしょに考えませんか」という双方向の交流が生まれるようにしていくことが大切です。
(
小野田正利:1955年生まれ、大阪大学教授。専門は教育制度学、学校経営学。「学校現場に元気と活力を!」をスローガンとして、現場に密着した研究活動を展開。学校現場で深刻な問題を取り上げ、多くの共感を呼んでいる)

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