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教師は自分の仕事をどのようなものだと思っているのか

 学校で大事なことは、子どもが勉強して学ぶこと。そして、それを通じて子どもが自立の精神を身につけて社会に出ていくこと。この二点です。社会に出れば、すべて自己責任で、自分で決めなければなりません。そのトレーニングする場(自治活動など)が学校のもうひとつの使命です。
 
「子どもが好きで先生になった」という言葉をよく聞きます。子どもが好きというのは、当人は気がつかないが「自分の言うことを素直に聞く」「自分の思う通りになるから」好きと言っているのと同じです。
 ちょうど、よく飼いならしたペットを可愛がる飼い主と同じ程度の心境なのでしょう。こういう人は、飼い主に手を噛まれてみて初めて、犬だって噛むのだ、ましては人間においてをや、と覚るのではないか。
 
「子どもが好きだから」先生になった教師は、好きな子どもだけ周囲に集めるような心性が生じてきます。中心に教師である自分がいないと気が済まないから、言うことを聞かない子どもを自然に遠ざけることになる。子どもに対するエコヒイキはここから生じます。
 教師になろうとすれば、教職の悪い面もしっかり見据えることが大事です。よく「結婚する前は両目を開いて相手をよく見なさい。結婚したら片目をつむり悪いほうを見ないようにしなさい」と言うでしょう。職業選択も同じだと思います。
 私は弁護士や医師と同じように教師も客商売に違いはないと思っています。弁護士は依頼人が、医師は患者が、教師は学習者が、来なければなりたたない商売です。それであるにも関わらず、客を客とも思わないところがあります。
 教師は公務員であり、全体の奉仕者です。公務員は税金で食べさせてもらっているから、国民に奉仕する精神を持つべきものです。学校は生徒や保護者に対してサービス精神を持ってもらいたい。
 私は塾、予備校の校長も経験したので、よくわかっていますが、学習者が教師を選び、学校を選ぶのは当たり前なのです。お客さんが来てくれないと、潰れてしまうし、クビになってしまうんですね。
 だからいちばん苦労するのは、お客を集めることです。特に二月三月は毎年、胃が痛む思いをしたものです。客の入りが悪ければ、即座に教職員のリストラにもつながりかねない。教職員も必死です。生活かかっていますから。
 ところが、公立学校の教師はお客が来なくなったら統廃合すればいいし、教師は異動すれば良いからクビにはならないんです。親の悪口を言っても成り立つ商売が公立学校で、塾・予備校などは親の悪口を言ったら成り立たない商売なのです。この違いは大きいですね。
 新採の教師が夏休み私のところに遊びにきて「保護者とつきあうのは本当にシンドイ」と。そこで私は言ったのです。
「教室で子どもたちに教えることだけのために、給料が払われているのではないのですよ」
「じつは、その背後にいる保護者に、きちっと説明ができるというサービス料も給料の半分くらいは入っているのではないですか」と。
 ところが、教師本位の教師ほど「子どものことは私に任せておけ。親がいろいろ言ってくるのは余計な仕事が増えるだけだ」と思っています。ところが期待や信頼を裏切ると問題が生じるのです。コミュニケーションをとるうえでの責任がある。
 日頃から、よく保護者の声に耳を傾けて、コミュニケーションを取っていれば、その教師に対して親が攻撃的に出てくることは少ないと思います。
 NHKの「ようこそ先輩」という番組がありました。教員免許のない人でも「サービス精神がある」から良い授業ができるのです。ふだんから「お客(市場)に鍛えられている」からです。
 たとえば、一流デザイナーが母校で授業をする。デザイナーの力量は、お客さんが「この人のデザインが良い」と支持してくれるからでしょう。授業も聴いてくれるお客(生徒)に理解してもらおうと考えるから、良い授業ができるのです。
 やはり授業で大事なことは、まず聴いてもらうということ。聴き手が聴いてくれなければ話にならない。聴いてくれないなら、話し手は反省しなければならない。基本的には、教えるほうが、子どもの反応を受け止めて話を進めなければなりません。
(
戸田忠雄:1937年生まれ、長野県の私立、公立学校の教師、公立高校長、信学会長野予備学校長などを歴任し、政策研究大学院大学政策研究科客員教授。XYサタデースクールネットワーク代表。専門は教育政策・学校論など。政府の審議会専門委員も務めた)

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