保護者からのイチャモンには、どのようにすれば打開できるか
「よく問題のある教師のところでイチャモンは起きやすい」という人がいます。しかし、それは完全なまちがいです。
じつは、数多くの事例を集めてきて言えることですが、ある日、突然のように降りかかります。しかも、経験豊かで教師としての力量も高い人にも起きることもあります。
したがって重要なことは、だれにでも起きうる問題であるとの自覚を、すべての教職員が持つということです。そして学校全体でコトに当たるという姿勢を貫くということです。
なぜ、あの保護者はそうまでしてこの教師を追いつめるのか、という本質を見抜くためにも共同性は不可欠です。
イチャモンを教師一人で背負い込む状況は、私が調べたなかでも相当数あります。ほとんどの場合は自信喪失と孤立無援のなかで消耗して、やがてはツブれていくことになります。
私はやはり「一人で背負い込まないで、徹底的な情報の共有と、事実の確認、そして共同でコトにあたるという姿勢しかない」と残念ながら言わざるを得ません。
保護者対応の難しさに追い込まれると、そのことにかまけて子どもの教育が二の次になっている場合が少なくありません。
極端なことを言えば、子どもたちから確実な信頼を勝ち得ていれば、保護者対応の勝負は勝ちなのです。
教師の値打ちは、何をおいても子ども対応(教えること、学ぶこと)で発揮されるのです。教育の顧客は親ではなく子どもであるという、ごく当たり前の基本につねに立ち返れるかどうかです。それを見失った場合に起きるとも言えます。
当たり前のことですが、保護者はわが子がどのようにあつかわれているかに最大の関心を持っています。担任がわが子のことをじっくり見てくれているという安心感があれば、多少のトラブルは、すぐに解決に結びつくことが多いと思います。
子どもと教師が接する時間が減れば減るほど行きちがいが発生する可能性が高くなります。また同じように忙しい保護者と子どもの間にもズレが生じるでしょう。それは教師と保護者のズレにもなります。
教師が子どもと触れ合う時間が減少すればするほど、イチャモンは反比例してふえる。これは、私が2000ぐらいの事例を集めた結果いえる大原則です。
もし、子どもと教師が接したり話したりする時間があれば、かりにトラブルが生じたとしても、それが大きくごじれることはないと思います。
多くの事例を集めるなかで、ほぼ見えてきた一つの重要な原則があります。それは「ホンネや願いは、多くの場合にはイチャモンという形態で現われることが多い」ということです。
一見すれば、学校側にとってはイチャモンと感じられる苦情であっても、じつは親としての「思い」や「願い」が背後に透けて見えることも多くあります。そのツボをおさえて対応すると、かなり異なった反応となっていくことが多いように思います。
校内研修会で、よくある質問が「保護者からの罵声や、一方的な主張に対して、どのような姿勢で聞いたらいいのですか?」という質問です。
私は「そうですね」という肯定に近い相づちではなく「そうですか」と返答することが大切ですと答えています。
「そうですか」「そうなんですか」は、相手の主張を否定せずに聞く言葉です。その親の子どもを思う気持ちを受け止める共感の言葉ですが、すべてを認めたものではありません。
いったん引き取って、何が事実で、何が感情的な思いなのかを区別して整理するためにも、必要な応答の仕方だと思います。
私はいろんな事例を全国各地から集めていますが、だいたい事例の95%は当事者の努力んとかなるケースと思います。
しかし、当事者だけではどうにもならないケースがあるのもたしかです。初めから対決姿勢で言ってくるものもあります。バックに指南役がいるのではないか、と思うケースもあります。
背後にプロの存在が感じられたときには、絶対に手を出さないで下さい。そこは徹底的にプロの市町村の顧問弁護士に任せるしかありません。
(小野田正利:1955年生まれ、大阪大学教授。専門は教育制度学、学校経営学。「学校現場に元気と活力を!」をスローガンとして、現場に密着した研究活動を展開。学校現場で深刻な問題を取り上げ、多くの共感を呼んでいる)
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