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教師にとって最も必要な資質とは何か、また授業の実力を高めるにはどうすればよいか

 教師としての楽しみは「教師になってからの努力」によってこそ、もたらされます。初心を忘れ、現状に安住して過ごすようになると、教師人生の楽しみは半減してしまうでしょう。「進みつつある教師のみ人を教える権利あり」という言葉を心に刻んで進むべきだと思います。
 人生において、自分自身の資質や力量を高めていくことほど、すばらしいことはありません。自分の上達を実感できることは最高の喜びです。
 上達していくためには、他の人からの意見や批判によって、それまでの自分の考え方や感じ方を省みることが必要です。常に「自分の現状の否定と破壊」を自らに課する必要があると言えるでしょう。
 つらいこと、聞きにくいことにも、耳を傾けなければなりません。自分を変えて、変えて、変え続けることによって、徐々に望ましい自分になっていくのです。
 私はこれまで、たくさんのすばらしい先生がたにお会いしてきました。共通するのは、謙虚で素直だということでした。
 教師にとって何よりも大切なのは、自分が人間として教師としても、まだまだ未熟である、という自覚を常に持つことです。そうすれば、より向上したいという意欲がわいてくるものです。
 自分が未熟であることを自覚し、謙虚であり続ければ、正直になります。自分をよく見せようとする必要などありません。
 すると、教師自身が楽になるだけでなく、勇気を持って子どもたちと向き合えることになります。自分が間違っていたとわかったら、素直に改めていけばよいのです。
 自分を省みつつ、向上させていく教師には、子どもたちも心を開き、その姿勢を見て学び、成長していくのです。
 この「謙虚さ」と「向上心」の二つは、すべての教師にとって最も重要な資質と言えるでしょう。
 自分をより高く伸ばそうと思うなら、優れた人に直接会うことが最も近道です。いろいろと問いかけ話の糸口をつくることが望ましい。そして素直に聞くことです。
 上達の一番の条件は素直さです。まずは素直に教えを受け入れ
(1)
その指摘は、私の授業のどこにあてはまるだろうか。
(2)
その指摘を取り入れると、私の授業のどこが変わってくるのだろうか。
(3)
そのように実践したら、私の授業はどういうことになるのだろうか。
(4)
この指導は、私の授業のどこをどう改めよということになるのだろうか。
というように、自分の実践をまな板にのせて、受け入れることが大切です。そうすることによって、より良い実践が生まれてくるはずです。
 授業のレベルを上げるには、優れた授業者の授業を参観することが、最も効果的です。その場合も、発問法を見るとか、受けの技術を見るとか、学習形態の組織の仕方を見るとか、はっきりとした問題意識を持ち、具体的な目的を持って見ることが大切です。
 さらに、自分のふだんの授業を他の人に見てもらうことは、いっそうよい勉強になります。研究授業の回数は多ければ多いほどよいのです。それは教材研究や授業の腕を磨いていくことに役立つのです。
 授業では、子どもたちの反応を見ながら、常に工夫を加えていきましょう。授業を行った後に、指導案に授業の気付きをメモ書きし、反省を記入することをくり返すとよいでしょう。日頃の積み重ねが実力を高めます。
 授業の実践を記録するには、学級通信を利用するのもよい。授業の様子や学級のできごと、教師の思いや意見を記すと、特別に時間をかけなくても、教育実践の記録を積み重ねることができます。
 経験はぼんやりと繰り返しながら積んでも力にはならない。「こうしてみよう」「あれを加えてみよう」「あそこを削ってみよう」と、常に意図的に積むことが肝要なのです。
 私は本当に優れた先達との出会いに恵まれてきました。多くのことを教えてくださる。それが自分の成長の糧となるのです。すばらしい喜びとなるのです。
 一つひとつの出会いに意味を見い出せるかどうか、ということこそが、実は人間の成長の分かれ目のような気がします。
(
野口芳宏:1936年生まれ、元千葉県公立小学校校長、植草学園大学名誉教授。千葉県教育委員会委員長職務代理者、日本教育技術学会理事・名誉会長、授業道場野口塾等主宰)

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