授業のスピードを加速すると学習が楽しくなり、高度なことに挑戦すると能力が向上する
授業のスピードを加速すると学習が楽しくなります。
速く、テキパキと、パッとできることって気持ちいいことです。それなのに、授業の最初に「きりーつ、れいー」と、ノロノロするのではなく、「起立、礼、着席!」までを2秒以内でできるまで指導しましょう。授業の始まりの集中力が見違えるように変わります。
授業の導入に、スピードを重視したさまざまな基礎練習を毎日、反復しています。たとえば、10マス計算(1ケタの計算問題が10問ずつ記載されているプリントを使った反復学習)です。たとえば「10問を5秒で解きます」と言ったら「えー、無理」と言いだす子がいます。
そんなときは「じゃあ10秒」と言って始めます。タイムを競わせることもあります。タイムを競ううちに「速くできた!」と、速さの気持ちよさも実感できるようになるのです。
あいさつも10マス計算も音読も、常にスピードを意識させます。最初は優しく接して雰囲気づくりをします。信頼関係ができあがったら、高速で基礎固め、反復学習を始めます。
すべてをスピードアップすることで、他のクラスが1時間で教えることを5分で終わることもできるようになります。その分、発展的な内容を、深く教える余裕も生まれるのです。
最初からスピードアップして始めれば、最後までスピードが保てます。速いのは楽しいと思えば学習が楽しくなります。
高度なことに挑戦させることが能力向上につながります。
高度なことをやらせて、次々にレベルの高いことをやらせる理由は、いくつかあります。
(1)小学生のうちに
漢字プリントにしても10マス計算にしても、超高速でやることで小学生は盛り上がります。そして効果が出てきます。しかし、中学生になったら「何でこんなことをやらなきゃいけないの」と、真面目に取り組もうとしないでしょう。
(2)現代の情報化の時代の問題
インターネットがあり、情報は簡単に手に入ります。交通機関も発達し、いろいろな場所に行けます。携帯電話の進化もものすごい速さです。こういう環境になると「便利=ラク」と思うようになってもしかたがありません。
だからこそ、自分で汗をかいて獲得した能力に感動するのです。そして「もっと伸びたい」と、さらに汗をかくでしょう。
自分が苦労して手に入れた技術、能力は一生ものです。イチロー選手だって、毎日同じトレーニングをして、自分で能力を高め続けてきたからこそ、大きな記録を生み出すことができたのです。
たとえば、漢字プリントや10マス計算、そして百人一首で札を取る速さもそうですが、高度なことをやらせるとき、私がよく言うのは「できなくて当然だよ」です。
トップレベルのスピードを私が見せることで、子どもたちは挑戦したいと思います。トップレベルになるための練習ですから、夢中になってやります。
しかも、そのトップレベルをクリアしても「やった! できた!」と、安心させません。「これで終わりじゃないよ。次のレベルのスタートだよ」と言って、次々に与えます。
漢字ができた、つぎは熟語、つぎは意味を覚えろと、必ず「つぎ」があります。「漢字を一通りできた? じゃあ漢字検定の勉強だ」と、これで実際に合格した子どももいます。
なぜ、子どもを安心させないのか。学習能力を鍛える効果があるからです。一回やって、わかったつもりになるのが、今の小学生のよくないところです。それでは、内容がわからず授業から落ちこぼれていく子どもが出てしまいます。
私は毎日、少しずつ繰り返し教えます。一人ひとりの子に対して、どこがわからないか、その部分を補強し、高度なことに挑戦させるのです。
次々に高度なことをやる楽しさがわかった子、自分が伸びるおもしろさを知った子は、他の子には見えない世界が見えてきます。
有名なスポーツ選手や科学者だって「人生はつねに学び。これで終わりということはない」という意味のことを言っているでしょう。小学生がこの境地に立てるのです。
(杉渕鉄良:1959年東京生まれ、東京都の小学校教師。「教育の鉄人」と呼ばれる実践家、子どもを伸ばす為に命をかける熱血教師。ユニット授業研究会代表。その実践スタイルは全国の教師、保護者から支持を受ける。2003年夏、日経スペシャル「ガイアの夜明け」に出演。PHP「VOICE」や、経済誌「プレジデント」での教育シリーズに取り上げられ、各方面からの注目も高い。ユニット授業、10マス計算、表現読み、指名なし発言など、子どもの可能性を引き出すため、さまざまな工夫を凝らした教育実践を行っている)
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