教師が 保護者とトラブルをおこしたとき、どうすれば解決できるか
保護者の要求や非難や暴言には「きちんと向き合い、反論せずに話を聞く」ことが大切である。結果的にも好ましい。それは「話を聞いてもらえた」ことで、保護者の気分が安定するからだ。安定すれば、解決の道も開けてくる。
あいまいにしてごまかしたり、逃げたり、だれかのせいにしたりせず、真摯に応対することだ。保護者もそういう誠実な教師を望んでいる。
とはいえ、保護者のなかに、じつに不見識な言動をする人がいる。そういうときは、冷静に対応する。ときに、おだやかにたしなめてもいいだろう。たとえば、電話口へ担任を呼び出した保護者がいきなり
「なにもたもたしてんだ。こっちは忙しいんだ。いいか、よくきけ。子どもによ・・・・・」と怒鳴る。
「そちらもお忙しいのでしょうが、今、授業中で、私も急いてかけつけてきました。そのような言い方は失礼ですね」とたしなめる。あるいは、にこやかに「すいません。もう一度、おっしゃってください」と、相手に言い直しの機会を与える。
相手が保護者なら、教師はがまんしなくてはならないということはない。非は非として伝えなくてはならない。そのほうが好ましい結果をもたらすこともある。
というのは、市民としてのモラルや礼儀、人間としての誇りを厳として保とうとする教師は、最初は誤解されるが、やがて尊敬されるようになるからだ。逆に、威厳を失った教師は、保護者から、さらに疎んじられ、軽んじられることになる。
もし、教師が自分で言えないようなら、管理職に「こういう無礼を受けました。校長先生から保護者に抗議してください」と申し出れば、それくらいのことはしてくれるだろう。
教師がもっとも傷つくのは「私より年下のくせして、生意気なこと言うな」「先生は子どももいないのに、子どもの気持ちがわかるわけがない」と言われることだ。こういう例は、若い教師へ、やりこめるためにわざと言って、やりこめて溜飲を下げているのであろう。
では、どうするか
(1)寅さん流に「それを言っちゃ、おしまいですよ」と軽くいなす。
(2)偉そうな口をきく教師がいて「何様のつもりだ」と思うことがある。保護者の感情的な反発を買うことになる。その意味では、保護者への話し方には、謙虚さが求められる。
(3)保護者がいやがりそうなことを伝える場合、話の前に「子どもを育てたことのない私が言うのも、言い辛いのですが・・・・」と、前置きをすると、素直に教師の話が入っていく。
(4)学年主任や管理職などが、保護者にたいして「こんなことを言うのはやめてほしい」と伝える。また、PTAの役員から「先生に向かって、そう言うことは失礼だと思う」と、会員に話をしてもらったこともある。バックアップの体制をつくるということである。
保護者と教師がトラブルをおこしても、その保護者の子どもに悪感情をもって接してはならない。教師を批判し攻撃する保護者に対して、好感情は抱きにくいが、子どもは子どもととらえ、保護者とその子どもを同一視してはならない。むしろ、その子どもの対教師感情を好転させ、信頼されるようにすることだ。
保護者が教師に悪感情をもつようになるのは、子どもの対教師感情を反映しているのである。子どもが教師に不信を抱くようになると、保護者も教師不信に染まっていく。
だから、子どもが教師を好きになり、信頼するようになると、保護者の対教師観もしだいに和らぎ、好転するようになる。
保護者とトラブルをおこしたら、まず子どもとの関係を見直し、子どもとの関係を改善することだ。子どもが変われば、保護者も変わるのである。
(家本芳郎編:1930~2006年、東京都生まれ。神奈川の小・中学校で約30年、教師生活を送る。退職後、研究、評論、著述、講演活動に入る。長年、全国生活指導研究協議会、日本生活指導研究所の活動に参加。全国教育文化研究所、日本群読教育の会を主宰した)
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