若い教師が保護者に信頼されるには、どのようにすればよいでしょうか
子どもをよりよく伸ばすために、家庭訪問は重要な仕事です。私の学校では五月に行います。各家庭には十分間くらいしかいられないのですが、計り知れないほどの収穫があります。
その家庭の雰囲気と、保護者の考え方や性格などが感じられます。こういう人だからこういう子なんだと妙に納得するところがあります。子どもの家庭環境を知ることで、生活指導がとてもやりやすく感じられます。
親の顔を覚えることはとても大切なことです。何かのおりに「○○さん」と名前を言って話をすると、もう覚えてくれたのかと、うれしそうな顔になります。教師に対する好感度が増すようです。
親と仲良くなり、教師に親しみや信頼関係を持っていると、何かにつけて意思の疎通がよくなります。問題行動が起きたときでも、そんなにこじれないで解決することができます。
参観授業はふだんの授業よりも力を入れます。安心して私に任せられるというような信頼感を持ってもらえないと困るからです。
親たちに、自分の指導状況を認めてもらわなければ、信頼関係がくずれてきます。「あの先生は教え方がうまい」「やさしく教えている」「きちんとしつけている」「授業がしっかりしている」「あのくらい厳しくてちょうどよい」などという、プラスの評価を得なくてはいけません。
参観授業は、全員の子が発表でき、どこかしら、その子のいいところがアピールできるような授業にします。毎回違う教科を見せるように計画していきます。その方が教科によっても得意、不得意のある子どもたちの姿を、違う面から見せることができるからです。
授業参観後の懇談会では、生活、学習内容について話します。私は話すことが好きなので、いろいろな話題を提供します。
おもしろくなくては、話を聞いてもらえないと思っているので、笑いの中に事実を入れて話していきます。私の子育ての失敗談などを交えておもしろおかしく話をします。
子育ては楽しいという話にもっていきます。毎日親がきちんとやることが、子どもによい影響をもたらす。早く寝させて早く起こし、朝食をきちんと食べさせ、学校に送り出すことが大事な役目だと話します。
成績だけで右往左往するのではなく、きちんとした家庭生活から、落ち着いた子どもが育ってくる。親が疲れた態度を見せたり、気分屋であったりしては、よい子にならないと話します。
懇談会で話をすることに自信がなく心配なら、話す内容を話ことばで台本を書くといいですよ。
私なら参観のお礼を言って「今日の学習のねらいは○○でした。それを達成するためにこういう手だてをしました。行き届かなくて申し訳ないのですが、これからも精一杯、指導していきますので、よろしくお願いします」と。
次に、教室での子どもの様子を楽しそうに話しましょう。いいことをたくさん話し、直してくれたらもっとよくなると思うことを少なめに話すとよいと思います。
懇談会に参加した親には、その子のいいところを必ず見つけて話します。懇談会に参加してもらった親への私なりの感謝の気持ちです。
そのとき、教師へのクレームがでることもあります。そんなとき、あわてずに謙虚に意見を聞きましょう。けんか腰にならず、卑屈にならず、誠実に対応しましょう。その話している様子を見ながら、保護者は品定めをしているのです。
口には出しませんが、たいていの親は新任教師を危ぶんで見ているのが普通です。だからこそ誠実に受け答えするのです。
内容が手に余るものでしたら「今ここでは詳しくお答えできませんので、校長と相談して返事申し上げます」と言って、懇談会後に事後処理をした方がかえって信頼感を増します。
親は、毎日子どもから、教師の言動を聞いています。子どもが教師とうまくいっているなら何も言いません。そんなものです。子どもとの日々の学習や生活を充実させているならば、ちっとも保護者は怖くありません。
(卯月啓子:1949年東京都生まれ、元公立小学校教師。NHK教育テレビ「わくわく授業 卯月啓子さんの国語」(2002年)で好評を得る。「卯月啓子の楽しい国語の会」代表。現職教員のための国語教育研究会の常任講師を務め、後進の指導にあたっている)
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