保護者からのクレームを減らすために、教師の話し方をどのようにすればよいか
苦情がよせられた際は、保護者の申し入れを頭ごなしに否定せず、まずは冷静にすべてを聞きだし確認しましょう。
怒っている相手の気持ちを察しながら丁寧に話をすすめることが求められ、随所に「子どものために」というフレーズを盛り込む。こうしていくうちにヒートアップしている相手も、トーンが少しずつ下がっていくはずです。
教師は話すことが仕事の一つであるし、うまいはずですが、すべての教師がうまいとは言えません。教師の仕事が子ども相手であり、特に保護者との会話はうまくいかないようです。
私の感覚では、民間企業人と比べて、教師は不用意な一言を発してしまう人の割合が多いように感じます。日頃から保護者に対する言葉遣いや語法に気を配る意識を持つことがクレームを減らす第一歩となります。
とにかく苦情対応の基本姿勢は「相手の気持ちをくむ」ことです。そうすることで、はじめて相手の痛み、悔しさがわかります。
また、保護者と数多く話すことがとても重要です。コミュニケーションを増やすことを心がけておくとよいと思います。ふだんから顔を合わせている保護者との間であれば、何かが起きても、割と簡単に収まることが大半でしょう。
教師が対応に行き詰まるのは、誰にも相談せず抱え込み、誤った判断をしてしまうことです。トラブルを恥と感じ、隠ぺいしようとする姿勢で保護者と接したなら失敗します。
そして、行き詰まる原因の二つ目は「初期対応のミス」です。苦情対応では、その第一印象が結果を大きく左右してしまいます。そこでは、表情と声、言葉遣いが重要です。
保護者が話をしている最中に「そうはおっしゃいますが」「それはですね」と話の腰を折ることは、わかりやすい失敗例です。
最もひどいのは、最初から相手の間違いであると決めつけて、聞く耳を持たずに対応してしまうこと。そのような態度で接したなら、相手を怒らせることになるのは容易に想像できます。
苦情対応するのであれば、ともかく相手の申し入れに、じっくりと耳を傾けることが重要です。大人の話術では、こちらの印象をよくすることがその役割として求められ、終始相手と共感することが求められます。
人は興奮すると早口になります。つられてこちらも早口になると火に油を注ぐことになりかねません。話が途切れたころ合いを見計らって、今まで話された内容の要約を落ち着いてゆっくり話すことが有効となります。
解決策も先を急がず、即答はさけ、要望された事項についてオウム返しで確認するにとどめましょう。きちんと確認しつつ、対話を続けていれば、次第に相手もこちらの話を聞かざるをえなくなります。
相手が口を挟んできたのなら、こちらは瞬時に黙ります。そうすることで、常に相手が主役であることを印象付けましょう。相手が口を閉ざしたなら、何事もなかったように先ほどの続きの会話を始める。これが苦情対応として、基本となる話術です。
保護者が無理難題なクレームを言ってくることがあります。例えば、運動会の日程変更を要求するような無茶な苦情は、学校と保護者がどれだけ話し合っても平行線をたどることは明白です。
このような場合、ポイントとなるのは、会話に「間」(目安は五~七秒)を取ることです。黙って考えこんだ様子を見せることで無理な注文であることを、間接的に知らしめる効果が生まれます。
強い調子で頭ごなしに突っぱねると、関係がこじれます。そこで「無言」を最大限に生かし、保護者に自分の主張を振り返らせる。無言といえど、「言」の字が意味を持った会話なのです。ぜひ無言の効果を実感してください。
「切り返しの話法」も効果があります。「○○さんの希望で日程を変更しましたと説明したら、反発を受けるのはあなたと学校です。要望された本人の名前を出すのは、仕方のないことです」と。
(関根眞一:1950年埼玉県生まれ、苦情・クレーム対応アドバイザー。百貨店に34年間在職し、お客様相談室長を経て、メデュケーション(株)代表取締役。新学校保護者関係研究会委員)
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