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どの学校の調査でも笑顔の明るい教師がいい、教師が笑顔になるためのポイントとはなにか

 全国のどこの学校での調査でも「笑顔の明るい先生がいい」との回答が上位を占めています。やはり、子どもの指導に教師の笑顔は欠かせないものといえるでしょう。
 学校現場は忙しく、神経を疲れさせ余裕がもてない事情があると思います。そのせいか最近は「暗い先生が多い」「学校が冷たい」という子どもや保護者の声を聞くことが多くなりました。
 しかし、これは重大事です。見過ごしていたら、子どもや保護者との絆が断たれてしまいます。
 ある研究会で「子どものために笑えといっても、生まれつきの性格だから変えられないと思いますが」と、まじめそうな男性教師が私に質問した。私は
 
「いや、そうとは言えませんよ。指導のポイントがつかめれば、実践で笑顔がつくれますよ」と答えた。
 暗いといわれている人でも、子どもに対する指導を充実させることができれば笑顔が浮かびます。  
 鏡の前で笑顔の演技練習をしなくても、指導のポイントをつかみ、実践で子どもを躍動させれば、自然に自分も笑顔がつくり出されるということです。
 では、どのようにすればよいのでしょうか。その大切なポイントは二つあります。
1 子どもを活動させて長所をほめる
 私は全国各地で校内研究会に招かれたとき小・中学生と授業をすることがあります。私はまず子どもたちと遊ぶのです。授業前に15分くらい遊びます。
 そうすれば、遊びを通じて、子どもたちの長所を見つけ出すことができます。長所をほめたり励ましたりすれば、授業にはずみをつけることができるからなのです。
 例えば「五で叩く」という遊び。多くの子どもたちは活気をみせます。その遊び方は
 
「はい、三人ずつのグループになりましょう。それぞれ右手を机の上に出し、その手を重ねてください。重ねたら、一番上の人だけ手を30センチ上げてください。」 
 
「これから先生が数を言うので『五』と言ったら、上の人は、下の人の手を叩いてよい。下の人は逃げてよいのです。さあ、やりますよ。準備はいいですか?」
と、これだけで楽しく遊べるのです。
 もちろん何人かは、手を出さなかったり、出ししぶったりする子がいます。その場合は
「こわくないよ。競争じゃないから。まわりの人が誘ってあげなさい」
 この遊びのおもしろさは叩く方が有利に見えますが、ちがうのです。30センチ離れているため、たいがい下の子に逃げられてしまい、机の上を叩いてしまう場合が多いのです。
 数を言う私も、スリリングに言います。「一、三、六、八・・・・・」と、数を言い、緊張させておいてから「五!」と言います。
 そのとき、逃げる子は「わあっ」と、いっせいにわめく声をあげる。手が上だった子はバチンと机の上を叩いてしまい「いたいっ!」と悲鳴の声をあげたりする。
 これをローテーションでやって全員が叩く・逃げるの経験をしますが、私の着眼は子どもの長所を見つけ出すことにあります。
 
「きみの声は大きかったね」「あなたの逃げ方は、す早かったよ」「きみたちのグループは笑顔がいっぱいだった」というように長所をほめるのです。
「活動させ長所を見つける」と、子どもたちの気持ちもひろがり、やる気も動き出すところにねらいがあるのです。
 ほめるとき「何を長所として見つけ出すか」という観点が重要になります。ほめるときの具体的な着眼点は、
(1)
表情(表情がないと、相手の人と心が通い合えません)
 よくうなずく、喜怒哀楽を豊かに表現する、暗い表情が明るい表情に変化する
(2)
活力
 大きな声をだしている、他の子に呼びかけ・誘う、必要なことに体を動かしている
(3)
友だちと共同
 他の子に役立つことをする、いっしょにするのが楽しそう、遊びにすぐ加わる
(4)
物の扱い
 誰の物でも大事に扱う、かたずけをめんどうがらずにする、物を貸すのをいやがらない
(5)
創造・発見
 疑問を持つとすぐ質問する、「こうしよう」と気がつく、珍しいことに気づくのが早い
2 学び合いをつくり育てる
 授業のなかで「教師も笑顔、子どもたちも笑顔である」ためには、どうすればよいのでしょうか。私は「子ども同士の、学び合いをつくる」ことではないかと思います。
 そのためには、教師の指導技術をみがきあげることです。説明はわかりやすく、指示は的確に、発問は思考や意欲を誘い出し、ふくらますように指導技術をみがかなければならないということです。
 学び合いは、子どもたちが相互に意見を交わしながら、子どもたちの思考を出し合って、真理・真実を追及していくことです。
 できない子のちょっとした質問がみんなの思考を発展させることもあるし、誰かの思いがけない失敗やまちがいが、全員を深い思考に誘いこんでいくこともあります。そのなかで個性も感性も豊かに伸びていくのです。
 こうした学び合いはあるからこそ、楽しい授業ともなり、本当の学力も身についていくのだと思います。
 質問が学び合いのキーポイントになります。質問は、子どもの学ぶ意義や意欲を引き出す契機になります。授業で誰かが質問すると、他の子がそれによって啓発され、思考を高めていくことができるのです。
 質問が大事だといっても、子どもたちがなかなか質問しないという現実があります。教師がもっとわかりやすく教える努力をしなければならない。
 質問する力を培うために、グループによる話し合い・討論を多用するとよい。グループは3人が適当だと思います。4人だと一人が浮き、それ以上だと集中できない。
 子どもたちの関心をそそるように、私はキャッチフレーズをつくってグループで話し合い・討論をしました。例えば
(1)
よいとこ探し討論(作文や朗読、意見発表について長所を見つけ出すグループの話し合い)
(2)
はてな討論(質問、疑問、対立点、発問の解明などのグループの話し合い)
(3)
アイディア討論(提案、問題提起、訴え、発見などのグループの話し合い)
というようにです。これをあらゆる機会に多用します。
 そして、子どもたちの長所を見つけてほめる。とくに黙りがちな子、質問しない子に注目し、少しでも変化があったら、すかさずほめるのです。このような取り組みを重ねると、よく質問も意見が出るようになります。
 ですから「質問」をキーポイントにしたグループ討論を重ねながら、大きな討論へ広げていく。そうした学び合いを追及することが大切だと思います。
(
坂本光男:19292010年、埼玉県生まれ、元小学校・中学校・高校の教師。教育評論家。日本生活指導研究所所長・全国生活指導研究協議会会員)

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