授業が楽しいと子どもに感じさせれば、学級崩壊など起こるはずがない
「学校がつまらない、休みたい」と子どもが思うようになったら、赤信号です。休み時間や給食だけを楽しみにしているという子どもがいるなら、黄信号です。
しかし、授業が楽しみだ、という子どもが多ければ、その学級は青信号です。ですから、子どもたちに授業に充実感や達成感を感じられるようになれば、学級崩壊など起こるはずがないのです。
絶対にしてはいけない、駄目な授業の典型は
(1)講義型授業
一方的に教師が講義する授業です。小学生にこれを行うと致命傷になります。
教師が知っている知識や情報をただダラダラと話しまくる。子どもの反応などお構いなしに自己満足にふける。子どもたちの空気が読めなくなると危険。
(2)板書型授業
板書した文字を子どもにひたすら写させ、穴埋め問題を子どもたちに答えを求めさせる。プリントを配布して穴埋めさせる方法も同様である。
一見、静かで集中しているようにみえても、頻繁に行うことは絶対にさけなければなりません。このような授業では、子どもが学ぶ意欲も起きませんし、本当の力はつかないからです。
(3)硬直型授業
教師が無理やり導きたい方向に子どもたちを持って行こうとするあまり、教師も子どもも表情が硬く、学習のめりはりや盛り上がりが感じられません。
子どもの実態に寄り添った教材研究が必要でしょう。
(4)放漫型授業
教材研究もせず、経験だけで何とか乗り切ろうという、場当たり的な授業をいいます。教師の情熱と迫力が伝わらないため、子どもたちも満足感が感じられず、退屈しのぎに学習以外の楽しいことを探そうとします。人前でも平気になった途端に授業妨害まで一気にエスカレートします。
(5)放任型授業
授業の妨げになる子にばかり注意していると先に進まないので、無視して学習を進めるようになります。これを繰り返していると、まじめに学びたいという子の集中力が減退し、逸脱行為がいたるところで出現し、授業が成立しない状態に陥ります。
「楽しくなければ授業じゃない」胸に響く言葉だと思います。
教師は余裕たっぷりに冗談などを織り交ぜながら、笑いの中から集中力を高める。そんな授業を子どもたちはきっと心待ちにしています。
子どもたちの意欲や集中力が高まるのは、教師の余裕の表れからの、遊び心や授業への万全な準備があって初めて可能となります。
「授業が楽しい、うれしい、気持ちいい」と子どもに感じさせられるようになれば、学級崩壊の危機に怯えることはなくなるでしょう。
授業が不成立となるのは、教師の子ども掌握技術が貧弱であること。教材研究が不十分なことに起因するものであることは明白です。
どんな腕利きの寿司職人であってもネタが悪ければ、うまい寿司にはなりません。教材研究はどのようにすればよいのでしょうか。
1 一教科15分間の教材研究を実践しよう
毎日、寝る前の一時間程度に、翌日の教材研究を行うものです。一教科15分と時間を決める。
(1)学習の中身(既習事項や関連教材・学年の系統性についても)をつかむ(約3分)
(2)学習のねらいを整理し、めあて(学習問題)を設定する(約2分)
(3)主発問を吟味し、誘導発問を精選する(約3分)
(4)板書計画をたてる(約2分)
(5)子どもたちの反応を予想し、指名・巡視計画をたてる(約2分)
(6)インパクトのある導入方法について検討する(約3分)
なかでも、(5)と(6)に時間をかけられるようになってくれば、自分でも驚くほど、授業はよどみなく流れるようになります。短時間でも毎日継続することで本当に必要な教材研究の中身がみえてきます。
2 こだわりの教科の教材研究を
力量を磨くためには、こだわりの教科をつくることです。長期休業や休日までも利用してたっぷりと教材研究したいものです。
時間を忘れて教材開発をし、授業で子どもたちの目が輝いた瞬間、それまでの苦労はいっぺんに飛んでいきました。
こだわりの教科を持つことができれば、子どもは授業を心待ちにするようになります。たとえ一教科でも、子どもたちが学習の中で自己実現を図れれば、学級崩壊の危機は未然に防ぐことができるでしょう。
私は、自分の授業を録音・録画して授業改善に役立てることができました。自分では感じていなくても、ダラダラと同じ話を繰り返していたり、耳障りな悪い口癖を連発していました。
若い教師は授業のチェックを試みてはいかがでしょうか。
(1)しゃべり過ぎていませんか
(2)同じことを何度もくり返して言っていませんか
(3)耳障りな口癖はありませんか
(4)声のボリュムや抑揚にめりはりはありますか
(5)表情や動作は豊かでしたか
(6)視線は特定の子どもなどに偏りはありませんか
(7)発問は的確でタイミングをとらえていましたか
(8)指名は特定の子どもに偏りはありませんか
(9)ほめ言葉は何度使いましたか
教師ほど人前で話をすることの多い職業はないでしょう。私は落語や漫才の話術の魅力にとりつかれ寄席のリピーターとして何度も足を運んだものです。
卓越した話芸に触れることで、しゃべることを生業とする教師は、もっと話術を磨かなければならないと強く感じさせられたものです。
子どもたちが教師の話にのめり込み、集中して学習することができれば、おのずと授業改善は図られるのですから。彼らの達人芸を見習うことも私たち教師には必要なことではないでしょうか。
(小谷川元一:1959年千葉県生まれ、千葉県松戸市公立小学校教師、松戸市指導主事等を経て東京福祉大学准教授。子育て・教育支援スペース「こたにがわ学園」理事長)
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