素直な心で懸命に仕事に取り組み反省を重ねると経営のコツが得られる
素直な心で懸命に仕事に取り組み反省を重ねると経営のコツが得られるでしょう。
いかに学問、知識にすぐれ、人格的に非のうちどころのない人であっても、経営者として成功するかといいますと、必ずしもそうとはかぎりません。
成功するためには、それに加うるに経営のコツというものをつかんでいなければならないと思います。
ある繁華街に、レストランが二軒あるとします。同じ料理のレストランをやっているのですから、同じように繁盛していいはずなのが、一方はいつも満員、もう一方は客がはいらないというようなことがよくあります。
それも結局は、一方の店の経営者が経営のコツをつかんでいるが、もう一方はそうでない、というところから生じてくる、ちがいといえましょう。
そのように経営者が経営のコツをつかんでいるかどうかによって、商売にしても企業経営にしても、発展に天地のちがいが出てくることになると思うのです。
それでは、経営のコツとはどういうところにあるのか、どうすればつかめるのか、ということになりますが、これがまさにいわくいいがたし、教えるに教えられないものだと思います。
経営学は学べますが、生きた経営のコツは、教えてもらって「わかった」というものではない。いわば一種の悟りともいえるのではないかと思います。
お釈迦さまは、山にこもって修業されましたが、それでも悟れなかった。山を下って菩提樹の木のもとで乙女の差し出す山羊の乳を飲んで、ホッと悟られたといいます。フッと気がつかれたわけです。
私は経営のコツをつかむのも、そんなものではないかと思うのです。つまり、日々、経営者としての生活の中で、一つ一つの仕事に一生懸命とり組みつつ、その都度、これは成功であったな、とか、ここのところは完全ではなかったな、という具合に反省を重ねていく。
そしてそれが、やがて意識しないでも考えられるというか、反省できるようになることが必要だと思います。
そういうことを刻々にくりかえしていると、だんだんまちがいをしないようになる。ということは、経営のコツがわかってきた、ということになるのではないかと思うのです。
そして、さらにいえば、一つの心がまえとして、やはり素直な心にならなければいけないと思います。自分の利害や感情、欲望といったものにとらわれない素直な心にいつもなるということです。そうすれば、人から意見を聞いたような場合でも「そうですか。じゃあ一つやってみましょう」ということが、ごく自然にいえます。
ところが、なまじ学問をして知識や技術を知っていますと、それにとらわれて、人のいうことでもなかなか素直に聞けない。そのために経営のコツを悟るのにも時間がかかる。そういった姿が少なくないのではないでしょうか。
つねに素直な心になることができれば、人間というものは、物事のほんとうの姿、実相を見ることができるようになって、あたかも神のようにといってよいほど、強く正しく聡明になることができると思います。
そうなれば、商売や経営において何が大切かといったことも的確につかむことができましょうし、人を生かしていくにはどうすればよいかというようなことも、その時どきに応じて正しく判断できるようになるでしょう。それは経営のコツを会得した姿にほかならないと思います。
その意味では、素直な心になるところにこそ経営のコツを得るコツがあるといっても決して過言ではない気がしています。
(松下幸之助:1894~1989年 パナソニック創業者、経営の神様と呼ばれ、日本を代表する経営者)
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