いじめ問題が起きたとき、保護者にどう伝え、かかわればよいのでしょうか
いじめであるかもしれないことがわかったとき、保護者にどう伝えればよいかは難しい問題です。
対応が遅れるほど、取り返しのつかない結果になったり、不登校につながる可能性が高くなります。だから、いじめを学校だけの問題にせず、保護者とも連携をとっていく必要があるのです。
いじめられている子どもの保護者に伝えるときは、電話ではなく、直接会って話し合うのがよい。このときに大切なのは、いじめの事実を伝えるだけでなく、学校がいじめられている子どもを、どれだけ守り、解決する姿勢でいるのかを強調することです。
また、保護者に伝えるときには「わが子どもが悪い」と受け取られないようにすることも大切です。保護者が「もっとこうすれば、こんなこと言われないのよ」という言葉は、子どもの心を閉ざし、さらに傷を大きくしてしまいます。
いじめられると、子どもは深刻な心的外傷後ストレス障害を引き起こします。いじめの残酷な行為は、受けた子どもにとって大きな心の傷になり、後々の発達にも影響を与えます。
学校にスクール・カウンセラーなどの専門家がいる場合には、その子のトラウマ(外傷体験)をきちんと処理をしてもらうように依頼する必要があるかも知れません。いない場合は、地域の専門機関に依頼して心の傷を癒してもらう必要があるでしょう。
いじめている子どもの援助も必要です。何らかの悩みや問題、そうせざるを得ない事情を抱かえている場合が多いからです。
いじめはしてはならないことで、厳しく言う必要があります。しかし、その子の人格を否定してはいけません。そうせざるを得ない気持ちに寄り添い、とことん聴くようにします。
その結果、家庭での寂しさや、家族の厳しさなど日常生活上の大変さが浮き彫りになるかもしれません。だれにも言えず、いじめのような行為に出ることも多いのです。
難しいのは、いじめている子どもの保護者に事実を伝えても「うちの子に限って、そのようなことはない」と、わが子をかばう保護者もいます。
また、事実を受けとめても、わが子に厳しい保護者はますます厳しく接するようになる可能性もあります。
いじめている子どもの保護者に伝えるときも、子どもの場合と同様です。いじめをせざるを得なかった子どもの気持ちを、子どもの了解を得たうえで伝えます。保護者と一緒にどのような援助をしていくことが、その子どもに必要であるのかを話題の中心にすえるのです。
その上で、保護者の気持ちも十分に聴きます。保護者自身も、辛く大変な状況であることが多いのです。その状況のままで「わが子がいじめをした」という話を受けとめるのは、困難な場合もあるのです。
ですから、保護者自身の抱いている気持ちを丁寧に聴くことで、保護者が誰にも言えなかった気持ちを出せるようになります。そうすることで、ようやく、わが子の苦しみに向き合う姿勢が生まれてくるのです。
(青山洋子:東京都港区立教育センター教育相談員、筑波大学学校教育部技官を経て、駿河台大学講師。専門は臨床心理学・学校心理学)
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