授業はテレビを見るように面白くないとチャンネルを替えられる、エンターテイメントとしての授業をものすごく要求されている
全国有数の名門といわれる私立中学校の家庭科の女性教師。赴任して五年目。担任は受け持ったことはないが、女の子たちの話し相手になっている。「親しみやすい、上品なお姉さん」という印象だ。その教師にインタビューした。
うちの学校は教師一人ひとりに専門性を強く求めていますから、授業も自由にできるんですよ。「わたしはこれについては誰にも負けません、だからこういう授業をやります」とアピールして、教務主任か校長がOK出せばできます。
その一方で、教師どうし、お互いにアドバイスも何も言わない。「はい、今日からお願いね」という感じでしたから。「自由にやってみて」と、聞いても教えてくれない。
もうパニックでしたよ。他校の先生を訪ねて、資料を借りたり、テスト問題の作り方も指導してもらってました。
今の学校に赴任するとき「他の学校の子よりも、礼儀正しくて、聞き分けがいいんじゃないか、大人みたいな感じなのかなあって」。だけど、そんなことなかったですね。
いま、1,2年生のクラスの女子20人ぐらいを相手に授業をやってますけど、年々幼児化っていうんですか、進んできていますね。
教室に行ったら、クラス全員がベランダの陰に隠れてたこともありましたよ。反抗しているわけじゃなくて、遊んでほしいんですね。無邪気ないたずらなんですよ。授業やりたくないから、五分でも10分でも、そうやって時間を短くしたいという気持ちがあるんでしょうけど。
まあ、いちがいには言えませんけど、甘えてくる子の多くは、家が厳しいですね。「この学校に入れるには、受験準備をして、厳しくしつけておかないと」という親の思惑があるのか、家でのしつけが厳しい分、その反動が学校で出てきてる気がします。
でも、中学校に入ってから、いわゆる落ちこぼれる子もいるんですよ。算数が数学に変わって、むずかしくなって、できなくなる場合もあるし、中学に入ったとたん、努力しなくなる子もいます。
テストはできても、授業中に教師の話を聞かない子が年々増えているみたいです。そういう子は、塾に行ったり、家庭教師をつけてるんですよ。授業は聞かなくても、あとで教えてもらえばいいやという感じですね。
いちばんしゃべりたい年頃ですから、授業中にしゃべるのは、しょうがないんでしょうけどね。でも、それを
「いつもあんたたち、騒いでる!」なんて言おうものなら、もう、大変。ふてくされちゃって、シラーッとしちゃいますからね。
何で騒いでいるのか、把握してから注意しないといけない。
「前の授業が大変だったかもしれないけど、そろそろ気分を切り換えたら?」
「45分、じっと話を聞いているのは、大変だと思うけど」
とか言ってあげると、「○○先生の授業は聞こう」となる。
授業自体だって、テレビを見ているような感覚で聞いていますからね。おもしろくなければ「チャンネル替えちゃえ」みたいな、エンターテイメントとしての授業をものすごく要求されるわけですよ。
たとえば、授業でビデオを見るとき「今日のは、ちょっとホラービデオになってるよ」と言うと「なんだろう、なんだろう」って、子どもは興味を示したけど、実際見たのは、食品添加物の安全性を考えるビデオ。
教科書や参考書に書いてあることだけでなく、子どもたちが好きそうな言葉を使ってあげたり、最近話題のテレビの話を織りまぜないと、ついてこない。
教材研究はもっぱらテレビでやっています。ドラマでも、クイズでも、お笑い番組でも、よく見るようになりました。
いま、テレビではどういう情報が流れているのか。家庭ではどんなことが話題になっているのか。それを全部想像して、授業でしか教えられないことはいったい何だろうって考えるんです。
たしかに時間も手間もかかるけど、わたし自身、そのほうがおもしろい。
(森口秀志:1966年東京都生まれ、フリーライター、エディター。大学在学中から教育・音楽・若者文化等をテーマにルポを発表)
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