話しの通じにくい保護者には、どう対応すればよいのでしょうか
話しの通じにくい保護者に、多くの教師が苦労していることを私は知っています。信じられないような話も、全国各地で聞きました。
例えば、子どもが学校でケガをしたので家へ電話したところ、それほどのケガではないのに母親が救急車を呼び、教師たちが唖然としたという話があります。こうした事例は枚挙にいとまがありません。
大人たちのモラルや良識の崩れは、子どもの荒れどころではないとさえ思います。もちろんこうした保護者とのつきあいは、容易なことではありません。
電話などでは無理でしょう。つごうをやりくりして、家庭訪問して、直接話し合うのがよいと思います。若い教師は一人ではなく、ベテランの教師に同行してもらうのも必要なことです。
子どもや保護者に信頼される学校づくりを強く意識して取り組まないと、保護者との深いつきあいをつくりあげることはむずかしいと思います。
教師が保護者に気づかうべきことを具体的にあげると
1 話の通じにくい保護者には
(1)話の通じにくい保護者ほど正確な情報がつかみにくい環境にあったり、保護者の生育過程が苦難の多かった場合が多い。したがって、時間をかけ、あきらめずに合意づくりを続けるようにする。
(2)電話や家庭訪問がむずかしい場合は、手紙がよい。とりわけ厳しい生活状況下にある保護者には、励ます手紙が必要といえる。
手紙で成果を生んだたくさんの実例があります。例えば、わが子に暴力をふるう父親が、女性教師の幾度となく出した手紙によって改心してくれたという話。
ツッパリの子を放置していた両親が、教師の手紙によってわが子に目を向けるようになったという話など、明るい話があります。
(3)教師だけで話が通じない場合は、他の人の仲介で合意づくりをするのもひとつの方法です。間接的に他の人がかかわってくれたことにより、教師の願いが実現した例もあるからです。
(4)話の通じにくい保護者でも、わけへだてなく対応することが重要。「いつかわかってもらえる」ことを期待しながら。
(5)子どもへの虐待のおそれがある場合や、保護能力に欠ける保護者には、当然のことながら児童相談所、人権擁護委員会などとの協議が必要です。児童福祉施設での保護も必要となってきます。
自分だけで判断し対応するのは、決して好ましいことではありません。一刻も早くその子を苛酷な状況から救出するために、全教職員で話し合い、全校的な問題として考え合うことが大切です。
2 日常的な保護者とのつきあい
(1)子どもに何か問題があったときだけ電話などで連絡するのではなく、進歩したこと、成長したことも伝えるとよい。
(2)病気などで欠席した場合、すばやく電話してようすを聞くことが大切。保護者とのつきあいの大事なチャンスにもなる。
(3)連絡帳・学級通信・学年便りなどは、事務的な連絡だけでなく、子どもの姿を記し、教師の思いや心が伝わる工夫をするとよい。
(4)大事なことについては、電話でなく、必ず訪ねて対話する。
3 学級懇談
(1)保護者が話しやすいように、日常の班・グループを活用した座席にすると効果的。
(2)懇談のはじめは子どもたちの進歩してきた事実を伝え、家庭での進歩のようすも聞いてみる。そして、欠点や課題については、後半で話し合う方が充実する。
(3)勉強について話題にするときは、具体的な資料を用意し、保護者に「よい点・悪い点」がよくわかるようにする。また保護者が何をすればよいかが理解できるように、具体的に提案する必要がある。
(4)話すことに抵抗のある保護者が多い場合、小さな用紙を配布して「話したいこと・聞きたいこと」を書いてもらい、それにもとづいて懇談するもの工夫のひとつ。
(5)学級の行事(お誕生会・レクレーション・体験学習など)には保護者の参加を求め、共同してすすめるよう工夫する。
(坂本光男:1929-2010年、埼玉県生まれ、元小学校・中学校・高校の教師。教育評論家。日本生活指導研究所所長・全国生活指導研究協議会会員)
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