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子どもの学ぶ意欲を保護者と教師が共同して育てるにはどのようにすればよいのでしょうか

 わが子の学ぶ意欲に関心のない親は一人もないといってよいでしょう。どこの懇談会でも話題になります。
 懇談会で 「うちの子はできが悪くてね。親が親だからしかたがないのかねェ」と言う親に懇談の場面で私は何度も出会いました。間違った情報が流れているのです。
 そういう親は、能力の低い親からは能力の低い子どもしか生まれないと思っているのです。私はそうしたとき、懇談している親にきっぱりと「能力は遺伝ではありませんよ。学力は伸ばせますよ」と。
 そして懇談では、つぎのことを必ず話題にしなければならないと思ったのです。
 私が教師をしてきた50(小学校、中学校、高校、大学)の体験から、遺伝どころか親を越えて力を伸ばした子は数えきれないほどいます。
 決して遺伝がどうこういう問題ではありませんでした。親子であっても、それぞれ違う人格なのですから、ちがう可能性があるのは当然のことなのです。また塾へ行かず、自学自習で目的を遂げた子どももたくさんいます。
 では、何が大切だったかと考えてみると、二つありました。 
 一つは、子どものもっている取り柄に気づかせ、そのことを自信にして学習意欲に結びつけていくこと。
 もう一つは、学習するとき「質問とくり返し」を大事にすることを教え、支援してあげるということです。
 つまり、自信をどう育てるかに眼を向けることが何よりも必要です。そのためには
「勉強以外のことで自信をもたせ、それをバネにして学習意欲に結びつけていくといいのですよ」と。
 たとえば「友だちが多い」「持久走が得意」「後かたづけができる」というようなことです。これを子どもに意識化させ「できるぞ、やれそうだ」と自信になるように励ましていくのです。
 でも、これたけでは、すぐに学習の意欲には結びつきません。さらに示唆を与えるのです。
「友だちが多いんだから、わからないことは質問したり、教え合ったりするといいよ」 
「持久走が得意でねばり強いんだから、学んだことをくり返し覚えていくといいよ」
「後かたずけができるんだから、きちんとした計画を作って学習すると力が伸びるよ」
というようにです。
 すると、子どもは勉強以外のことが学習に結びつくことに気づき、しだいに「やる気」をだしていくようになるのです。
 また、このことは、ほんとうの学力を身につけるうえでも重要な意味があります。というのも、本当の学力は成績のことをいうのではありません。自分で疑問を持ちながら真理・真実を解き明かしていくことの力のことをいいます。
 また、他の人と学び合いながら、そこで体得する認識・行動・感性の総合的なものをいうのです。
 したがって、子どもが自分の生活と行動に自信を持って認識の獲得に挑むようになることは、ほんとうの学力に迫る土台となります。それは、子どもの将来にわたって、学ぶ意欲を持続させる土台ともなるのです。
 親に「学習の方法がわからないので、つまずいているみたいです。どうしたらよいでしょう」と、相談されることがあります。
 大人たちが少し考え合ってみれば、子ども自分でやれることが二つ見つかります。それは
(1)
わからない点を友だちや先生に質問すること
 質問は、わからないことを見つけだして他の人に聞くことです。ですから「わかるため」というだけでなく、その子の自発性を培うのに大きな意味をもっています。
 また、疑問が解けて知的要求が満たされれば、自分の努力の成果ですから感激も大きいのです。
 
そして、友だち同士でやれば友情も深まりますし、先生に教えてもらえば多面にわたって見識を身につけることができるでしょう。まさに一石二鳥いや四鳥にもなるわけです。
(2)
学んだことをくり返しながら身につけること
 人間は何もかも覚えている人などいないでしょう。ですから大事なことは、くり返して覚えなければどんどん忘れてしまいます。一度学んだだけですぐ身につくということはありません。
 そこで、くり返し覚えるのですが、その過程で新しい発見をしたり珍しいことに出会ったりすることもたくさんあります。たとえば「保険」という漢字をくり返し覚えているうちに「検査」「倹約」のけんという字は「へん」がちがうことに気づいたという子どもがたくさんいます。
 ですから「くり返し」は記憶を確かにするだけでなく、想像・創意を豊かにする役割ももっているということができるのです。
 今の子どもが「くり返し」ができないのは「速くて便利な方法」を追求してきた社会が「やればできるはず」の子どもの力を封じ込めてしまっているのです。大人たちこそ反省しなければならないことなのです。
 懇談で親たちは「言われてみれば、そのとおりですねェ」と、うなずいてくれました。私は「今からでも決して遅くはない」ということを強調したいのです。
 それには教師が授業で「質問」を大事に扱い、それを「子ども同士の学び合い」で解決できるように指導することが大事です。
 また、親は「質問とくり返し」の大切さをわが子に話してあげ、時間と手間をかけて実行できるように励まし援助してあげるとよいでしょう。
 親と教師が共同して、その努力をすれば、必ず子どもの力を呼び起こすことができます。それが実行できてくると、生きる力となる学力が子どものものになっていくと思います。
(
坂本光男:19292010年、埼玉県生まれ、元小学校・中学校・高校の教師。教育評論家。日本生活指導研究所所長・全国生活指導研究協議会会員)

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