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保護者とどのように接すれば、クレームを生まず、信頼関係が深まるのでしょうか

 いま、保護者への対応に苦慮する教師が増えています。時代が変わっても、保護者はわが子を心配し成長を願っています。教師は「自分がこの子の親だったら、どう思うだろう」とその親の気持ちをしっかり受けとめる必要があります。
 日ごろから、保護者とどのように接すれば、クレームを生まず、信頼関係が深まるのでしょうか。それには
(1)
すばやく対応する
 すばやい対応は、教師の情熱が保護者に伝わり、保護者の信頼を深めるきっかけになります。「先生は真剣に考え、動いてくれた」となるのです。
 教師は、問題を把握した瞬間から解決に向けて行動を始めなくてはなりません。機を逸してはすべて無になります。対応の遅れは、保護者の教師への不信を増長させる原因になります。
 教師は保護者から苦情や相談を受けた後は、対策を立ててすぐに行動に移ります。保護者に「このようにしました」と連絡することが大切です。
 その成果は、子どもの変化に現われます。例えば「あれから、友だちと仲良くしています」と伝えましょう。子どもの変容という事実こそが、保護者の信頼を得る最大の方法なのです。
(2)
気になる子どもは、すぐ連絡を
 友だち同士のトラブルや教師の指導については、必ず子どもに納得させて帰らすのが基本です。たとえ完全に納得しなくても、下校前には、その子に目をかけて丁寧に接してあげましょう。「先生に心配してもらった」と感じれば、保護者も悪い気がしないはずです。
 子どもがスッキリしない顔で下校し「これは納得していないな」と感じたら、必ず保護者に連絡を入れるようにします。そうすれば、事情を正確に保護者に伝えることができます。手間を惜しまず連絡することが大切です。
 保護者に事実を正確に伝えるためには、当人だけでなく、周りで見ていた子どもたちからも情報を集め、原因や経緯を正確に把握する必要があります。必ずメモを取りながら行います。
(3)
保護者が来校するときは、笑顔で迎える
 苦情などで保護者が来校することがあります。そんなとき、保護者は、不満そうな顔で何か言おうという雰囲気が漂っています。それを見て、教師が緊張して身構える姿勢を見せれば保護者をさらに興奮させます。
 保護者が来校するときは、笑顔で対応し冷静になってもらうことが必要です。不思議なもので、笑顔で対応されると、それまで苦情を言おうと燃え上がっていた気持ちも、調子がくるい、少しは冷静になるでしょう。
 子どものケガや病気など特別な場合を除いて、「忙しいのに、子どものために、ようこそ」と、笑顔で保護者を迎えましょう。
(2)
保護者の勝手な言い分も、余裕を持って、共感しながら聞きましょう
 保護者の話を否定的に聞くと「自分の気持ちがわかっていない」と、保護者ますます教師を責める危険があります。
 保護者は自分勝手でわがままなことを言ってくることもあります。しかし「その気持ちわかります」という教師のひと言が、保護者の気持ちを和らげ、保護者との距離を縮め、話し合いを円滑に進めることにつながります。そのためには、余裕を持って保護者に対応する必要があります。
(4)
保護者が感情的になっても、冷静さを保つ
 保護者が感情をあらわにし、威圧的な態度を取ると、教師は慌ててパニック状態になることもあります。
 感情をぶつけてきた保護者に対しては「相手のペースにのらない」ことを心がけて対応します。相手の言葉をまに受けてカッとなったり、慌ててパニックを起こしたりしないようにします。
 教師は、自分が保護者の話し相手ではなく「誰かに話をしている」と考えるようにします。保護者の感情が「おさまるまで待とう」というくらいの気持ちで、心を落ち着かせることを第一に考えましょう。
 感情的になっている保護者の気持ちを分析しながら相手にしていると、冷静さも保てますし、後の対応にとても役立ちます。こちらが、冷静に対応していると、相手も冷静さを取り戻すようになります。話し合いはそれからでも十分にできます。
(3)
一人だけで対応しない
 一人で対応すると、後で思い違いが生じたとき「言った、言わない」と水掛け論になり、さらに大きなトラブルになる恐れがあります。特に経験の少ない教師は、複数の教師で対応するようにしましょう。
 話し合いに参加してもらう教師は、記録を取ってもらい、話し合いが一通り終わったら、話し合った内容を「ということで間違いありませんね」「これからは、この方向で指導することになりますね」などと、再確認してもらいましょう。
(4)
記録を残す
 後日、話し合いの経過や結果の確認が必要になることがあります。記録を残すことで、正確な事実確認をすることが可能になります。
 保護者が気分を害さないよう、話し合いをする前に「大事なことを忘れないように、メモを取っておきます」と、ひと言ことわっておきます。
 ずっと下を向いてメモを取っていては失礼です。「これは大切だ」という言葉やポイントをサッとすばやくメモするように心がけましょう。電話での対応も記録をします。
(5)
保護者への返事は慎重に
 保護者からの相談や苦情についての対応は、必ず学年主任や管理職に報告します。
 話の内容によって、その場で即答できるものもあれば、学年主任や管理職の指示を仰がなくてはならないものがあります。慎重さを欠いた安請け合い的な返事は、後で大きなトラブルのもとになります。
 学校のきまりはどうなっているのか。学年全体として考えずに、一人の担任の立場で返事(約束)をして良いのか。その場の雰囲気に流されていないか。早くその場から逃れたい気持ちがないか。など、気になることが出てきます。
 迷ったら即答しないのが鉄則です。回答を待ってもらい。主任や管理職に相談したうえで、回答しなくてはなりません。
(6)
保護者と一緒に考える
 保護者から子育ての悩みを相談されることがあります。親と教師は共に子どもの成長を考える協力者として対応しなくてはなりません。
 保護者から相談があった場合、保護者と一緒に考える姿勢を示すことも大切です。「どうすれば良いか」を保護者と一緒に真剣に考えるのです。
 教師が大まかな方針を提案し、具体的な方法を一緒に考えるようにします。例えば、わが子が「勉強がわからないと言っている」というものであれば、
「集中力が身に付けば成績も上がると思うので、良い方法を考えましょう」といった具合です。
 ズバッと解決策を示すよりも、一緒に考えながら導いてあげるほうが、保護者には心強く感じられ、後々頼りにもされるようになります。
(
中嶋郁雄:1965年鳥取県生まれ、奈良市立公立小学校教頭。「子どもを伸ばすためには、叱り方が大切」という主張のもと、「叱り方」研究会を立ち上げる。講演会や専門誌での発表活動を行っている)


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